43.いけない事
夢主名前設定
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土方の部屋に着くと、僅かだが何やら物音がする。筆でも取っているのか、在室だと分かる。
夢主は声を掛けようとするが、忙しく仕事をしているなら迷惑ではと、座り込んでしまった。
するとすぐに気付いた土方が手を止めて外にいる者に声をかけた。
「どうした、用があるなら座っていないで、さっさと入れ」
「はっ……はぃ」
入れずにいた事を見透かされた夢主は恥じらいながら障子を開けた。
「お忙しいのにすみません……」
「おっ」
障子が開くなり、梅の花に気付いた土方は声を漏らした。
夢主が座る前から土方は既に梅の小枝に気を取られ、嬉しそうに眺めている。
「もう咲いてるのか……」
「は、はぃ……お花が付いているのに落ちていて可哀想だったので……」
そう言いながら夢主は梅の小枝を差し出した。
土方はそっと受け取ると顔を近付け、梅の香りを確認するように目を細めた。
顔を離すと梅の花に向かい、ふっと息を漏らして微笑んだ。
錦絵のように美しい光景だ。
「梅のお花、お好きかと思って……」
「あぁ、確かに好きだぜ」
そう言うともう一度目を閉じて顔を近づけた。
梅の花に故郷を思い出しているのか、とても穏やかな様子だ。
「梅は百花の魁(さきがけ)と言ってな、年の頭にどんな花よりも早く先陣切って咲き誇る……格好いいじゃねぇか」
土方は梅の花越しに夢主を見て口角を上げた。
「それに、枝を手折られても負けずに立派な新しい枝を出す……可憐に見えて強いんだぜ」
土方は嬉しそうに梅の花について語った。
「この梅は……きっと土方さんに愛でて欲しくて落ちてきたんですよ」
「ははっ、そうか」
夢主の可愛い冗談を楽しげに笑うと、そのまま夢主の目を見て意味ありげに口元を緩めた。
……ふっ……お前みたいじゃねぇか……
土方は心の中で自分の戯れ言を笑っていた。
「いけねぇなぁ」
「お、折ったわけじゃありませんよ、落ちてたんです」
土方が突然窘めるように呟いたので、夢主は慌てて否定した。
「あぁ分かってるさ。俺にこんな優しくしちゃぁいけねぇって言ったのさ」
「えっ」
優しいけれど意味有りげな怪しい瞳で土方は夢主を揶揄った。
「俺はなぁ、総司と斎藤にお前を任せたんだよ。だから俺にこんな綺麗なもんを……」
「すみません、仰っている意味が分かりません……」
静かに話す土方の言葉の真意が分からず、夢主は首を傾げた。
すると土方は目を閉じて小さな声で言葉を続けた。
「梅は花も実もある……お前みたいだな」
「どういう……事ですか」
「ふっ、分からなくていいさ。この梅はせっかく綺麗に咲いてるのに可哀想だからな、部屋に貰っておくぜ。もうすんなよ」
困った顔付きで小首を傾げる夢主に土方は静かに語りかけ、フッと微笑んで終わらせた。
「……はぃ……」
土方の本音は掴めないが、何かを咎められた。夢主は小さく返事をした。
そんな夢主を土方は梅の花を愛でるのと同じ眼差しで、眺めるように見つめていた。
夢主は声を掛けようとするが、忙しく仕事をしているなら迷惑ではと、座り込んでしまった。
するとすぐに気付いた土方が手を止めて外にいる者に声をかけた。
「どうした、用があるなら座っていないで、さっさと入れ」
「はっ……はぃ」
入れずにいた事を見透かされた夢主は恥じらいながら障子を開けた。
「お忙しいのにすみません……」
「おっ」
障子が開くなり、梅の花に気付いた土方は声を漏らした。
夢主が座る前から土方は既に梅の小枝に気を取られ、嬉しそうに眺めている。
「もう咲いてるのか……」
「は、はぃ……お花が付いているのに落ちていて可哀想だったので……」
そう言いながら夢主は梅の小枝を差し出した。
土方はそっと受け取ると顔を近付け、梅の香りを確認するように目を細めた。
顔を離すと梅の花に向かい、ふっと息を漏らして微笑んだ。
錦絵のように美しい光景だ。
「梅のお花、お好きかと思って……」
「あぁ、確かに好きだぜ」
そう言うともう一度目を閉じて顔を近づけた。
梅の花に故郷を思い出しているのか、とても穏やかな様子だ。
「梅は百花の魁(さきがけ)と言ってな、年の頭にどんな花よりも早く先陣切って咲き誇る……格好いいじゃねぇか」
土方は梅の花越しに夢主を見て口角を上げた。
「それに、枝を手折られても負けずに立派な新しい枝を出す……可憐に見えて強いんだぜ」
土方は嬉しそうに梅の花について語った。
「この梅は……きっと土方さんに愛でて欲しくて落ちてきたんですよ」
「ははっ、そうか」
夢主の可愛い冗談を楽しげに笑うと、そのまま夢主の目を見て意味ありげに口元を緩めた。
……ふっ……お前みたいじゃねぇか……
土方は心の中で自分の戯れ言を笑っていた。
「いけねぇなぁ」
「お、折ったわけじゃありませんよ、落ちてたんです」
土方が突然窘めるように呟いたので、夢主は慌てて否定した。
「あぁ分かってるさ。俺にこんな優しくしちゃぁいけねぇって言ったのさ」
「えっ」
優しいけれど意味有りげな怪しい瞳で土方は夢主を揶揄った。
「俺はなぁ、総司と斎藤にお前を任せたんだよ。だから俺にこんな綺麗なもんを……」
「すみません、仰っている意味が分かりません……」
静かに話す土方の言葉の真意が分からず、夢主は首を傾げた。
すると土方は目を閉じて小さな声で言葉を続けた。
「梅は花も実もある……お前みたいだな」
「どういう……事ですか」
「ふっ、分からなくていいさ。この梅はせっかく綺麗に咲いてるのに可哀想だからな、部屋に貰っておくぜ。もうすんなよ」
困った顔付きで小首を傾げる夢主に土方は静かに語りかけ、フッと微笑んで終わらせた。
「……はぃ……」
土方の本音は掴めないが、何かを咎められた。夢主は小さく返事をした。
そんな夢主を土方は梅の花を愛でるのと同じ眼差しで、眺めるように見つめていた。