43.いけない事
夢主名前設定
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「それはそうとお前、随分と手が荒れているな」
「あっ、これは……仕方ありませんよ、ふふっ」
改めて近くに座ると、膝の上に置かれた指先に目が留まる。
冬場、毎日水に触れていれば指先が傷むのは仕方が無い。
水分を失い切り傷のような痛みを伴う荒れや、かさかさと乾き肌が突っ張る部分など、夢主の指先は水に負けていた。
「そうか。ほら、こんな時こそ俺の薬が役立つだろうよ。打ち身より効くぜ」
以前、芹沢に痛められた肩と手首に施してくれた薬の事だ。
実の所、打ち身薬ではなくただの軟膏だったが、指先の荒れには良く効くだろう。
「いっ、いいですよ、暖かくなればすぐ良くなりますし……」
夢主は顔を引き攣らせて笑い、やんわりと断った。
断わるんじゃないと向けられる視線に対し、本当に結構ですと、手の平を斎藤に向けて断る素振りを続けた。
「いいから手を出せ」
斎藤は既に薬を手にしており、夢主に求めた。
堂々と肌に触れられるのだ、また恥ずかしがる夢主を面白く揶揄ってやろうと考えていた。
「い、いいですから……ぃけませんっ」
夢主は夢主で、既にあの時の感触を思い出し顔を赤らめていた。
「良くないだろう。悪くなるぞ」
「だっ大丈夫ですっ」
「大丈夫じゃあるまい、早くしろ」
「じゃ、じゃぁ自分でやりますから……」
夢主は自らの指先を隠すように斎藤から遠ざけ、赤面しながらも強い視線を送った。
「ちっ、つまらん。男の愉しみを奪うんじゃないよ」
「えっ……?」
ぼそりと聞こえた斎藤の言葉が聞き取れず夢主は聞き返した。
「なんでもない。ほら、使え」
斎藤は少しぶっきらぼうに薬を渡すと、夢主が薬の蓋を開けるのをつまらなさそうに眺めた。
日が昇りきった頃、屯所から出た夢主達三人はのんびりと湯屋へ向かっていた。
「今日は暖かいですね」
「えぇ、お散歩日和ですね、ははっ」
ぽかぽかとのどかな日差しの中を歩きながら夢主が静かに呟くと、暖かい空気に和む笑顔で沖田が応えた。
「斎藤さんも湯屋は久しぶりでしょ、嬉しいんじゃありませんか」
「まぁな。年が明けてから忙しかったからからな」
沖田の問いに、前を行く斎藤が僅かに振り返った。
すると夢主が思いついたように手を打った。
「今日はのんびり入りませんか、斎藤さんも沖田さんも一緒に入ってください。私もゆっくり浸からせて頂きますから……先に上がることはないと思います」
斎藤と沖田はいつも交互に入り、夢主が出る頃には揃って待ってくれている。
湯に浸かる時間も自ずと半分になってしまう。
夢主は斎藤の風呂好きを知っており、たまにはゆっくり湯船に使って欲しいと願った。
「いや、大丈夫だ」
「でも……」
「いいじゃないですか、斎藤さん!たまには僕達ものんびり入りましょうよ!夢主ちゃんのお心遣いを無下にしちゃいけません」
夢主が斎藤を労わり困り顔をしているのを見て、沖田が助け舟を出した。
眉をハの字に下げ自分を見上げる夢主と、にこにこと「いいじゃないですか!」と迫る沖田に、斎藤はやれやれと申し出を受け入れた。
「だが、俺達が先に待っているからな。お前、急ぐんじゃないぞ」
「はぃっ」
ゆっくり湯に浸かれるのは嬉しいが、やはり夢主が気掛かりだ。
斎藤は素直に喜び切れなかった。
「では、後ほど」
夢主はにこりとして言い、頭を下げ女湯へ入って行った。
「僕達も行きましょうか」
同じくにこりと言う沖田に斎藤は一瞥くれると返事もせず勝手に中に入って行った。
着物を脱ぎ先を行く斎藤だが、横についてくる人影に眉をひそめた。
「何故ついてくる。中でまでくっついている必要はないだろうが」
「あははっ、いいじゃないですか、一緒に入るなんて久しぶりでしょう!」
すぐ隣にくっつく沖田はからからと笑いながら体を洗う準備を始めた。
「一緒に入った事などなかろう」
吐き捨てるように言う斎藤は沖田から目線を外し、腰を下ろして自らも体を洗い始めた。
「えーー忘れちゃったんですかぁ!試衛館の皆と、ありましたでしょう」
「一切、記憶に無い」
沖田の冗談なのか斎藤が忘れてしまいたかったのか、当人の記憶に思い当たる節はなかった。
どこでも誰にでも人懐っこいのが沖田の良い所だが、この時ばかりは沖田の人懐っこさが煩わしい。
「あっ、これは……仕方ありませんよ、ふふっ」
改めて近くに座ると、膝の上に置かれた指先に目が留まる。
冬場、毎日水に触れていれば指先が傷むのは仕方が無い。
水分を失い切り傷のような痛みを伴う荒れや、かさかさと乾き肌が突っ張る部分など、夢主の指先は水に負けていた。
「そうか。ほら、こんな時こそ俺の薬が役立つだろうよ。打ち身より効くぜ」
以前、芹沢に痛められた肩と手首に施してくれた薬の事だ。
実の所、打ち身薬ではなくただの軟膏だったが、指先の荒れには良く効くだろう。
「いっ、いいですよ、暖かくなればすぐ良くなりますし……」
夢主は顔を引き攣らせて笑い、やんわりと断った。
断わるんじゃないと向けられる視線に対し、本当に結構ですと、手の平を斎藤に向けて断る素振りを続けた。
「いいから手を出せ」
斎藤は既に薬を手にしており、夢主に求めた。
堂々と肌に触れられるのだ、また恥ずかしがる夢主を面白く揶揄ってやろうと考えていた。
「い、いいですから……ぃけませんっ」
夢主は夢主で、既にあの時の感触を思い出し顔を赤らめていた。
「良くないだろう。悪くなるぞ」
「だっ大丈夫ですっ」
「大丈夫じゃあるまい、早くしろ」
「じゃ、じゃぁ自分でやりますから……」
夢主は自らの指先を隠すように斎藤から遠ざけ、赤面しながらも強い視線を送った。
「ちっ、つまらん。男の愉しみを奪うんじゃないよ」
「えっ……?」
ぼそりと聞こえた斎藤の言葉が聞き取れず夢主は聞き返した。
「なんでもない。ほら、使え」
斎藤は少しぶっきらぼうに薬を渡すと、夢主が薬の蓋を開けるのをつまらなさそうに眺めた。
日が昇りきった頃、屯所から出た夢主達三人はのんびりと湯屋へ向かっていた。
「今日は暖かいですね」
「えぇ、お散歩日和ですね、ははっ」
ぽかぽかとのどかな日差しの中を歩きながら夢主が静かに呟くと、暖かい空気に和む笑顔で沖田が応えた。
「斎藤さんも湯屋は久しぶりでしょ、嬉しいんじゃありませんか」
「まぁな。年が明けてから忙しかったからからな」
沖田の問いに、前を行く斎藤が僅かに振り返った。
すると夢主が思いついたように手を打った。
「今日はのんびり入りませんか、斎藤さんも沖田さんも一緒に入ってください。私もゆっくり浸からせて頂きますから……先に上がることはないと思います」
斎藤と沖田はいつも交互に入り、夢主が出る頃には揃って待ってくれている。
湯に浸かる時間も自ずと半分になってしまう。
夢主は斎藤の風呂好きを知っており、たまにはゆっくり湯船に使って欲しいと願った。
「いや、大丈夫だ」
「でも……」
「いいじゃないですか、斎藤さん!たまには僕達ものんびり入りましょうよ!夢主ちゃんのお心遣いを無下にしちゃいけません」
夢主が斎藤を労わり困り顔をしているのを見て、沖田が助け舟を出した。
眉をハの字に下げ自分を見上げる夢主と、にこにこと「いいじゃないですか!」と迫る沖田に、斎藤はやれやれと申し出を受け入れた。
「だが、俺達が先に待っているからな。お前、急ぐんじゃないぞ」
「はぃっ」
ゆっくり湯に浸かれるのは嬉しいが、やはり夢主が気掛かりだ。
斎藤は素直に喜び切れなかった。
「では、後ほど」
夢主はにこりとして言い、頭を下げ女湯へ入って行った。
「僕達も行きましょうか」
同じくにこりと言う沖田に斎藤は一瞥くれると返事もせず勝手に中に入って行った。
着物を脱ぎ先を行く斎藤だが、横についてくる人影に眉をひそめた。
「何故ついてくる。中でまでくっついている必要はないだろうが」
「あははっ、いいじゃないですか、一緒に入るなんて久しぶりでしょう!」
すぐ隣にくっつく沖田はからからと笑いながら体を洗う準備を始めた。
「一緒に入った事などなかろう」
吐き捨てるように言う斎藤は沖田から目線を外し、腰を下ろして自らも体を洗い始めた。
「えーー忘れちゃったんですかぁ!試衛館の皆と、ありましたでしょう」
「一切、記憶に無い」
沖田の冗談なのか斎藤が忘れてしまいたかったのか、当人の記憶に思い当たる節はなかった。
どこでも誰にでも人懐っこいのが沖田の良い所だが、この時ばかりは沖田の人懐っこさが煩わしい。