42.夢の続き
夢主名前設定
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「ぁ、お……沖田さ……」
黙って抱きしめる沖田は、顔を埋めるように夢主に寄せた。
夢主は驚きと恥ずかしさで固まっていた。心臓が激しく脈打ち体中に響いている。
急にこんな事をするなんて、どうしたんだろう……
戸惑って理由を考えていると、沖田が口を開いた。
「頑張ったね……頑張ってよく戻って来たね」
耳元で聞こえた声は静かな落ち着いた声で、いつもの明るい彼のものとは違い、低く夢主の体に響いた。
冗談で抱きついている訳ではなさそうだった。
囁いた沖田は夢主の体を離して、短く笑んだ。
「ふふっ」
そしてそのまま去って行った。
「沖田……さん」
夢主は顔を火照らせて、激しい脈もおさまらぬまま立ち竦んでいた。
いつものお道化た顔ではなく、優しいけれど鋭く男らしい眼差しは強い熱を帯びていた。
夢主は沖田の中の男を見てしまった気がした。
その時、ふと横を見慣れた男物の着物が通り過ぎた。
「ぁっ、さっ……」
夢主は咄嗟に通り過ぎた着物の袖を掴んだ。
「斎藤さん……」
「どうした。顔が赤いぞ」
袖を掴まれて振り返った斎藤、その理由は分かっていた。
何やら近付いて話す二人の姿が見え、沖田と目が合った。
途端に夢主に何かを催促し、間もなく突然抱きついたのだ。
驚きの余り固まる夢主もしっかりと見えていた。
「あの……」
夢主は困惑の顔で斎藤を見ていた。
沖田が冗談や心配で手を握ってくる事はあったけれど、あんな風にきつく抱きしめられるのは初めてだった。
ずっと兄弟か女友達のように心を許して仲良く過ごしていた沖田が、急に男に変わってしまったみたいで、大切なものを失ったような悲しさを感じていた。
さっきまでの楽しい気持ちはすっかり失われていた。
「沖田君は失敗したようだな」
「えっ」
「何でも無い。何も無いなら俺は行くぞ。ちょっと呼ばれているのでな」
「あ、すみません……」
夢主は慌てて袖から手を離した。
斎藤は夢主の頭にぽんと手を置いて、体の向きを変えた。
「今のあいつには、あれで充分なんだろう」
夢主を置き去り、斎藤は呟いた。
頭に手を置かれた途端、強張った表情が解れていくのが見えた。
過ぎた慰めは今は緊張を与えるだけ、心を縛ってしまうのだろう。
背中に視線を感じながら、斎藤は歩いて行った。
黙って抱きしめる沖田は、顔を埋めるように夢主に寄せた。
夢主は驚きと恥ずかしさで固まっていた。心臓が激しく脈打ち体中に響いている。
急にこんな事をするなんて、どうしたんだろう……
戸惑って理由を考えていると、沖田が口を開いた。
「頑張ったね……頑張ってよく戻って来たね」
耳元で聞こえた声は静かな落ち着いた声で、いつもの明るい彼のものとは違い、低く夢主の体に響いた。
冗談で抱きついている訳ではなさそうだった。
囁いた沖田は夢主の体を離して、短く笑んだ。
「ふふっ」
そしてそのまま去って行った。
「沖田……さん」
夢主は顔を火照らせて、激しい脈もおさまらぬまま立ち竦んでいた。
いつものお道化た顔ではなく、優しいけれど鋭く男らしい眼差しは強い熱を帯びていた。
夢主は沖田の中の男を見てしまった気がした。
その時、ふと横を見慣れた男物の着物が通り過ぎた。
「ぁっ、さっ……」
夢主は咄嗟に通り過ぎた着物の袖を掴んだ。
「斎藤さん……」
「どうした。顔が赤いぞ」
袖を掴まれて振り返った斎藤、その理由は分かっていた。
何やら近付いて話す二人の姿が見え、沖田と目が合った。
途端に夢主に何かを催促し、間もなく突然抱きついたのだ。
驚きの余り固まる夢主もしっかりと見えていた。
「あの……」
夢主は困惑の顔で斎藤を見ていた。
沖田が冗談や心配で手を握ってくる事はあったけれど、あんな風にきつく抱きしめられるのは初めてだった。
ずっと兄弟か女友達のように心を許して仲良く過ごしていた沖田が、急に男に変わってしまったみたいで、大切なものを失ったような悲しさを感じていた。
さっきまでの楽しい気持ちはすっかり失われていた。
「沖田君は失敗したようだな」
「えっ」
「何でも無い。何も無いなら俺は行くぞ。ちょっと呼ばれているのでな」
「あ、すみません……」
夢主は慌てて袖から手を離した。
斎藤は夢主の頭にぽんと手を置いて、体の向きを変えた。
「今のあいつには、あれで充分なんだろう」
夢主を置き去り、斎藤は呟いた。
頭に手を置かれた途端、強張った表情が解れていくのが見えた。
過ぎた慰めは今は緊張を与えるだけ、心を縛ってしまうのだろう。
背中に視線を感じながら、斎藤は歩いて行った。