41.嫉妬
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翌朝、食事の席で夢主は沖田に礼を述べた。
「昨日はずっと居てくださったみたいで……ありがとうございました」
「いえいえっ、待つ時間というのも楽しいものです。起きてくれなかったのは少し淋しかったですけど」
会話が始まった二人の隣で斎藤は耳を澄まし、黙々と食事を進めていた。
話し始めて箸が止まった夢主の手元をちらりと横目で見ている。
「すみませんでした……すっかり寝込んでしまって」
「ははっ、気にしてないよ。……でも本当はちょっと抱きついちゃおうって待ってたから、残念だったなぁ~」
「えぇっ!本気だったんですか!」
「あははっ、冗談ですよあれは」
沖田は斎藤との会話で見せた本音を隠し、いつも通りの朗らかな笑顔で答えた。
視線を膳に落として苦手な野菜もしっかり口に運ぶ。
一つ、二つ、苦手な野菜を無意識に数えながら、意識は夢主に向いている。
「もぅ、沖田さんはそんな事しないんですから、揶揄わないで下さい……」
「……ふぅん……」
沖田は意味深に一声漏らし、特に大嫌いな野菜に箸を伸ばした。
それを見た夢主は思わず喜んで呟いた。
「沖田さん……頑張ってますね」
あんなに嫌がっていた壬生菜も今では文句を言わずに食べている。
体の為、心配してくれる夢主の為にも好き嫌いを言っていられない、沖田は自らを戒めていた。
「それくらい当然だろう」
ずっと黙っていた斎藤が横からぼそりと口を挟んだ。
食事が早い斎藤の膳はどの器も殆ど空だ。
「そ、そうかもしれないですけど……沖田さん頑張ってるんです、褒めてあげてくださいよ」
「フン」
気に入らなさそうに鼻で笑うと斎藤は残りも口に運び、食事を終えて早々に席を立った。
「斎藤さん、いつも早いですね……」
夢主の視線は斎藤の背中を追いかけた。
いつも振り返ることなく颯爽と去って行く。今日も少しも振り返らずに出て行った。
「あの人もそれなりに忙しいですからね」
「そうなんですか……」
確かに幹部としての仕事も、それ以外の仕事も様々抱えているはず。
夢主は納得して頷いた。
「ねぇ夢主ちゃん、斎藤さんは夢主ちゃんに抱きついた事ってあるんですか」
「ぇえぇっ!!な、なんですかどうして急にっ……そ、そんな事はっ……」
咄嗟に否定しようとしたが、思えば幾度かそんな事があった。声が上ずってしまう。
どうして突然そんな事を訊くのか、何か聞きつけたのか。
戸惑う夢主は自分を見つめる顔を見つめ返せず、目を泳がせた。
沖田は抱きつくのはどうなんだと苦い顔で自分を咎めた斎藤自身はどうなのか、知りたくなったのだ。
「その反応は、あるんですか」
沖田は大して驚いていない。
淡々として、むしろいつもより落ち着いて見える。
しかし誤魔化しは効かないですよと、真っ直ぐ瞳を向けていた。
「ぁの……弾みというか事故というか……」
「やっぱりあるんですね。ふぅん」
沖田は少し意地悪い笑顔で夢主から目を逸らし、最後の一口を箸で運んだ。
「あ、あの、沖田さんが考えるような事じゃありませんよ!」
実際はその時何かが起きそうな男と女の空気が漂っていたが、夢主は誤魔化した。
最も、火照った顔で狼狽える姿に説得力は無い。
「ははっ、分かりましたよ、心配しないで」
沖田は一笑いすると去って行った。
「もぉ……どうしたんだろう急に……」
夢主は両隣が空いて淋しくなった空間で、止まっていた箸をゆっくり動かし始めた。
この日は日中、所用の為か誰かに呼ばれたのか、斎藤も沖田も屯所を空けていた。
戻ったのは夕餉時。
食事を済ませれば夜の巡察の準備が待っている。
日が暮れるのが早いこの季節、辺りは既に暗くなり、空には月が浮かんでいた。
「昨日はずっと居てくださったみたいで……ありがとうございました」
「いえいえっ、待つ時間というのも楽しいものです。起きてくれなかったのは少し淋しかったですけど」
会話が始まった二人の隣で斎藤は耳を澄まし、黙々と食事を進めていた。
話し始めて箸が止まった夢主の手元をちらりと横目で見ている。
「すみませんでした……すっかり寝込んでしまって」
「ははっ、気にしてないよ。……でも本当はちょっと抱きついちゃおうって待ってたから、残念だったなぁ~」
「えぇっ!本気だったんですか!」
「あははっ、冗談ですよあれは」
沖田は斎藤との会話で見せた本音を隠し、いつも通りの朗らかな笑顔で答えた。
視線を膳に落として苦手な野菜もしっかり口に運ぶ。
一つ、二つ、苦手な野菜を無意識に数えながら、意識は夢主に向いている。
「もぅ、沖田さんはそんな事しないんですから、揶揄わないで下さい……」
「……ふぅん……」
沖田は意味深に一声漏らし、特に大嫌いな野菜に箸を伸ばした。
それを見た夢主は思わず喜んで呟いた。
「沖田さん……頑張ってますね」
あんなに嫌がっていた壬生菜も今では文句を言わずに食べている。
体の為、心配してくれる夢主の為にも好き嫌いを言っていられない、沖田は自らを戒めていた。
「それくらい当然だろう」
ずっと黙っていた斎藤が横からぼそりと口を挟んだ。
食事が早い斎藤の膳はどの器も殆ど空だ。
「そ、そうかもしれないですけど……沖田さん頑張ってるんです、褒めてあげてくださいよ」
「フン」
気に入らなさそうに鼻で笑うと斎藤は残りも口に運び、食事を終えて早々に席を立った。
「斎藤さん、いつも早いですね……」
夢主の視線は斎藤の背中を追いかけた。
いつも振り返ることなく颯爽と去って行く。今日も少しも振り返らずに出て行った。
「あの人もそれなりに忙しいですからね」
「そうなんですか……」
確かに幹部としての仕事も、それ以外の仕事も様々抱えているはず。
夢主は納得して頷いた。
「ねぇ夢主ちゃん、斎藤さんは夢主ちゃんに抱きついた事ってあるんですか」
「ぇえぇっ!!な、なんですかどうして急にっ……そ、そんな事はっ……」
咄嗟に否定しようとしたが、思えば幾度かそんな事があった。声が上ずってしまう。
どうして突然そんな事を訊くのか、何か聞きつけたのか。
戸惑う夢主は自分を見つめる顔を見つめ返せず、目を泳がせた。
沖田は抱きつくのはどうなんだと苦い顔で自分を咎めた斎藤自身はどうなのか、知りたくなったのだ。
「その反応は、あるんですか」
沖田は大して驚いていない。
淡々として、むしろいつもより落ち着いて見える。
しかし誤魔化しは効かないですよと、真っ直ぐ瞳を向けていた。
「ぁの……弾みというか事故というか……」
「やっぱりあるんですね。ふぅん」
沖田は少し意地悪い笑顔で夢主から目を逸らし、最後の一口を箸で運んだ。
「あ、あの、沖田さんが考えるような事じゃありませんよ!」
実際はその時何かが起きそうな男と女の空気が漂っていたが、夢主は誤魔化した。
最も、火照った顔で狼狽える姿に説得力は無い。
「ははっ、分かりましたよ、心配しないで」
沖田は一笑いすると去って行った。
「もぉ……どうしたんだろう急に……」
夢主は両隣が空いて淋しくなった空間で、止まっていた箸をゆっくり動かし始めた。
この日は日中、所用の為か誰かに呼ばれたのか、斎藤も沖田も屯所を空けていた。
戻ったのは夕餉時。
食事を済ませれば夜の巡察の準備が待っている。
日が暮れるのが早いこの季節、辺りは既に暗くなり、空には月が浮かんでいた。