39.眠ったままに
夢主名前設定
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「こっちだよ!!」
間もなく中から子供の声と、何だ何だと連れて来られた大人達の声が聞こえてきた。
「ほら、お姉ちゃん!!」
「まぁ!!お嬢さん、ちょいと!!」
連れて来られた大人達は慌てて意識の無い夢主を確認した。
顔色を見て脈を確かめる。
「大丈夫や、中に運び入れるで!」
一緒にいた男の使用人が夢主を抱えて中へ入っていった。
「もう大丈夫だな」
緋村は「ふぅ」と一息吐いた。
面倒な仕事はこれで終わりだ。もう関わることもあるまい。飯塚さんは怒るだろうが構うものか。
緋村は裏道を早足で去っていった。
屋敷では夢主を布団に寝かせ、手の縄を取り介抱が始まった。
一方、屯所の門からは慌てて男が飛び出して行った。土方達に連絡する為だ。
夢主の報せは即座に伏見へ届いた。
入京に向け控えていた新選組のもとに、伝言を受けた使いの者が早籠でやって来た。
一斉に幹部の皆が振り向く。
男が土方の前に跪くと、低い位置から懸命に何かを伝えている。周囲に声は届かず、皆が必死に聞き耳を立てた。
仕事を終えた男が立ち去る許可を得て場を離れると、土方が幹部の顔を見回した。
着いて来い、平隊士から離れて話を。目で誘い、幹部達は土方の後を追い移動した。
「土方さん、何の伝令ですか……」
沖田が緊張した声で訊ねた。
「夢主の事だ。安心しろ、屯所に戻ったそうだ……」
安心しろと言いながらも、土方の声は冴えない。
ほぉっと安堵の息を吐いた幹部達も、まだ何かあると続きを待った。
「ただ……拐かされていたのは当たりだ。今朝、屯所の前で倒れていた……正しくは開放された……ようだ」
ゆっくりと事実を確認するように土方は話した。
何故……誰が……どうして……。居合わせる全員が同じ疑問を抱いた。
「それで夢主は大事ありませんか。無事なのですか」
土方はどこまで伝令を受けたのか。
斎藤は皆が一番知りたがっている問いをぶつけた。
「大丈夫だ。気を失っているが体に傷なんかは無いそうだ」
皆を安心させようと土方は力強く頷きながら伝えた。
「土方さん、様子を見に……先に戻っちゃ駄目ですか。本陣も間もなく動くのでしょう、無事なのは分かりましたが、早くこの目で確かめたいです」
沖田はずっと落ち着かない気分でこの二日間を過ごした。
それは周りの皆も同じだが、沖田が突出して不安定だったのは誰もが承知していた。
「総司ぃ……」
「先に……行かせて下さい」
我が儘なこども染みた申し出、土方はいつも通り新選組の副長として不同意を告げようとした。
顔を見返せば、見上げる沖田の目は焦燥の色を持ち、母とはぐれた幼い迷い子のように揺れていた。
もう一刻もしないうちに出立だ。
京に入ればあっという間に合流。先に行かせるも、一緒に向かえと留めるのも、どちらも道理に適っている気がする。
どちらに決めるか、土方の判断次第だ。
間もなく中から子供の声と、何だ何だと連れて来られた大人達の声が聞こえてきた。
「ほら、お姉ちゃん!!」
「まぁ!!お嬢さん、ちょいと!!」
連れて来られた大人達は慌てて意識の無い夢主を確認した。
顔色を見て脈を確かめる。
「大丈夫や、中に運び入れるで!」
一緒にいた男の使用人が夢主を抱えて中へ入っていった。
「もう大丈夫だな」
緋村は「ふぅ」と一息吐いた。
面倒な仕事はこれで終わりだ。もう関わることもあるまい。飯塚さんは怒るだろうが構うものか。
緋村は裏道を早足で去っていった。
屋敷では夢主を布団に寝かせ、手の縄を取り介抱が始まった。
一方、屯所の門からは慌てて男が飛び出して行った。土方達に連絡する為だ。
夢主の報せは即座に伏見へ届いた。
入京に向け控えていた新選組のもとに、伝言を受けた使いの者が早籠でやって来た。
一斉に幹部の皆が振り向く。
男が土方の前に跪くと、低い位置から懸命に何かを伝えている。周囲に声は届かず、皆が必死に聞き耳を立てた。
仕事を終えた男が立ち去る許可を得て場を離れると、土方が幹部の顔を見回した。
着いて来い、平隊士から離れて話を。目で誘い、幹部達は土方の後を追い移動した。
「土方さん、何の伝令ですか……」
沖田が緊張した声で訊ねた。
「夢主の事だ。安心しろ、屯所に戻ったそうだ……」
安心しろと言いながらも、土方の声は冴えない。
ほぉっと安堵の息を吐いた幹部達も、まだ何かあると続きを待った。
「ただ……拐かされていたのは当たりだ。今朝、屯所の前で倒れていた……正しくは開放された……ようだ」
ゆっくりと事実を確認するように土方は話した。
何故……誰が……どうして……。居合わせる全員が同じ疑問を抱いた。
「それで夢主は大事ありませんか。無事なのですか」
土方はどこまで伝令を受けたのか。
斎藤は皆が一番知りたがっている問いをぶつけた。
「大丈夫だ。気を失っているが体に傷なんかは無いそうだ」
皆を安心させようと土方は力強く頷きながら伝えた。
「土方さん、様子を見に……先に戻っちゃ駄目ですか。本陣も間もなく動くのでしょう、無事なのは分かりましたが、早くこの目で確かめたいです」
沖田はずっと落ち着かない気分でこの二日間を過ごした。
それは周りの皆も同じだが、沖田が突出して不安定だったのは誰もが承知していた。
「総司ぃ……」
「先に……行かせて下さい」
我が儘なこども染みた申し出、土方はいつも通り新選組の副長として不同意を告げようとした。
顔を見返せば、見上げる沖田の目は焦燥の色を持ち、母とはぐれた幼い迷い子のように揺れていた。
もう一刻もしないうちに出立だ。
京に入ればあっという間に合流。先に行かせるも、一緒に向かえと留めるのも、どちらも道理に適っている気がする。
どちらに決めるか、土方の判断次第だ。