38.知らぬままに
夢主名前設定
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山崎は伏見へ直走った。
「土方さんっ!!」
伝令は慣れたものだ。
体力の浪費を抑え、だが疾さを落とさぬよう休まず走り続け、あっという間に新選組の本陣と合流した。
「やられました土方さん、鵜堂です!!」
「何っ!!」
居合わせた全ての幹部が声を荒げた。
平隊士達の視線が集まり、土方は何でもないと周りを諭し、斎藤と沖田を連れて場所を変えた。残りの幹部は隊士達が聞き耳を立てないようその場に留めた。
皆から離れた所で、山崎は事情を伝えた。
「間違いありません、夢主さんは拐かされました。家の方の話からも犯人は鵜堂刃衛で間違いないでしょう。隊士達を確認しましたが、鵜堂の姿だけが確認出来ませんでした。すみません、いつの間に抜け出したのか……気をつけるよう言われていたのに、私の責任です」
山崎は土方に向かい深く頭を下げた。
「いや、お前のせいじゃねぇ……俺達も気が付かなかった。侮れない男だな……すぐ捜させよう。心当たりはあるか」
斎藤も沖田も山崎も首を横に振った。
新選組に於いて自らを一切語らぬ者は珍しくない。鵜堂刃衛の行く当てなど微塵も思い付かなかった。
「普通に考えりゃぁ手土産片手に反勢力、か。夢主はイイ女だからな……考えたくはないが色町か、金を余らせた女好きに売りつけるなんて事も……。俺達が目を掛けてんのは承知だろうが、夢主の秘密は知らないはずだ。ただの人質か、高値の女くらいにしか思ってねぇだろう」
土方は悔しそうに声を沈めた。
可能性を探る程、男達は胸糞が悪いと顔をしかめた。
「でも……こんな事……許せないっ……」
沖田の拳は震えていた。
どんな目に合されているのか考えたくもない。
「色町だとしても京や大坂では俺達の手前、そうそう売れないでしょう。余所で売るにしても、俺には鵜堂が今の京を離れるとは思えません。あいつは血に餓えている筈だ」
斎藤はざわめく気持ちを抑えて冷静に分析した。
土方も沖田も斎藤の意見に同意だった。
「色町の線は消えたな。まずは刃衛を捜す。京の何処かに潜んでいるはずだ。同時に夢主の身柄も捜す。既に敵の手中か女好きの手の内にあるとすれば……。長州藩邸付近、それから……女好きの大物が珍しい女を買ったなら噂も立つだろう、京の町で聞き込みだ」
「人手が要りますね」
斎藤は土方を厳しい目で見た。
動かせる人数は少なくない。判断が必要だ。
「くそぅ……刃衛の追っ手と夢主の捜索、三人と一人だ。どちらも見つかり次第連絡しろ。応援を寄越す。特に刃衛は深追いするな」
土方自身も納得いかないが、現状出来る限りの指示を出した。
他の幹部達へも伝達された。主力を伏見に残す方針は変わらない。
「明日には家茂公の入京に伴って帰営も出来るだろう。そうすれば総出だ。今日を……何とか……」
……堪えてくれ、夢主……
指示を出す土方を筆頭に斎藤や沖田、皆が願っていた。
苛立ちを感じながらも男達は自らの任務を全うしようとしていた。
「土方さんっ!!」
伝令は慣れたものだ。
体力の浪費を抑え、だが疾さを落とさぬよう休まず走り続け、あっという間に新選組の本陣と合流した。
「やられました土方さん、鵜堂です!!」
「何っ!!」
居合わせた全ての幹部が声を荒げた。
平隊士達の視線が集まり、土方は何でもないと周りを諭し、斎藤と沖田を連れて場所を変えた。残りの幹部は隊士達が聞き耳を立てないようその場に留めた。
皆から離れた所で、山崎は事情を伝えた。
「間違いありません、夢主さんは拐かされました。家の方の話からも犯人は鵜堂刃衛で間違いないでしょう。隊士達を確認しましたが、鵜堂の姿だけが確認出来ませんでした。すみません、いつの間に抜け出したのか……気をつけるよう言われていたのに、私の責任です」
山崎は土方に向かい深く頭を下げた。
「いや、お前のせいじゃねぇ……俺達も気が付かなかった。侮れない男だな……すぐ捜させよう。心当たりはあるか」
斎藤も沖田も山崎も首を横に振った。
新選組に於いて自らを一切語らぬ者は珍しくない。鵜堂刃衛の行く当てなど微塵も思い付かなかった。
「普通に考えりゃぁ手土産片手に反勢力、か。夢主はイイ女だからな……考えたくはないが色町か、金を余らせた女好きに売りつけるなんて事も……。俺達が目を掛けてんのは承知だろうが、夢主の秘密は知らないはずだ。ただの人質か、高値の女くらいにしか思ってねぇだろう」
土方は悔しそうに声を沈めた。
可能性を探る程、男達は胸糞が悪いと顔をしかめた。
「でも……こんな事……許せないっ……」
沖田の拳は震えていた。
どんな目に合されているのか考えたくもない。
「色町だとしても京や大坂では俺達の手前、そうそう売れないでしょう。余所で売るにしても、俺には鵜堂が今の京を離れるとは思えません。あいつは血に餓えている筈だ」
斎藤はざわめく気持ちを抑えて冷静に分析した。
土方も沖田も斎藤の意見に同意だった。
「色町の線は消えたな。まずは刃衛を捜す。京の何処かに潜んでいるはずだ。同時に夢主の身柄も捜す。既に敵の手中か女好きの手の内にあるとすれば……。長州藩邸付近、それから……女好きの大物が珍しい女を買ったなら噂も立つだろう、京の町で聞き込みだ」
「人手が要りますね」
斎藤は土方を厳しい目で見た。
動かせる人数は少なくない。判断が必要だ。
「くそぅ……刃衛の追っ手と夢主の捜索、三人と一人だ。どちらも見つかり次第連絡しろ。応援を寄越す。特に刃衛は深追いするな」
土方自身も納得いかないが、現状出来る限りの指示を出した。
他の幹部達へも伝達された。主力を伏見に残す方針は変わらない。
「明日には家茂公の入京に伴って帰営も出来るだろう。そうすれば総出だ。今日を……何とか……」
……堪えてくれ、夢主……
指示を出す土方を筆頭に斎藤や沖田、皆が願っていた。
苛立ちを感じながらも男達は自らの任務を全うしようとしていた。