38.知らぬままに
夢主名前設定
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その頃、大坂の新選組の陣では夢主から文が届かず、ざわついていた。
「おかしい」
「十日以上真面目に送り続けた夢主が急に筆不精になるでしょうか」
「まさか……俺達が戻る頃合を見て屯所を出た……まさかな」
土方と斎藤は顔を見合わせた。
「ある訳がない、あいつは、俺達の傍を……離れないはずだ……」
言いながら土方は根拠の無い自信を確かめるように頷いた。
「明日、俺達は家茂公にお供して伏見城へ向かう。その際、屯所に使いをやって確認する。連絡の行き違いではないと思うが……」
何かの手違いで文が届かない事もあるだろう。だが気掛かりだ。
土方は明日伏見に向かう途中で確認の使いを出す事にした。
「でしたら僕が行きますよ、土方さん!今すぐにでも!」
一緒に話を聞いていた沖田が申し出た。本当に今にも飛び出しそうな口ぶりだ。
「いや、この仕事は山崎にやってもらう。俺達は警護の仕事が優先だ。戦力的に沖田と斎藤、それに永倉は絶対に伏見に入ってもらう、いいな」
「っ……そうですね……」
自分の立場を苦々しく思いながらも沖田は大人しく引き下がった。
「近くまで行くんだ、何かあれば駆けつけられるさ」
「……えぇ」
斎藤も自らを励ますように声掛けた。
肩を落とす沖田を見ながら、やきもきさせられる己を感じていた。
「あいつ、何をしている……」
翌日、伏見に入った新選組の面々。
事情を知る数名の幹部は落ち着かない。
平隊士達に異変を悟られまいと平静を装うが、互いに顔を見合わせては逸らすを繰り返した。
「落ち着け、直に山崎から連絡が来る」
「はい……心配です、夢主ちゃん……」
「あぁ」
斎藤も珍しく不安げだった。
馬を飛ばせば僅かな距離、街道のその先にある壬生を見ていた。
山崎は一人、夢主の所在を確認すべく壬生へ戻った。
屯所に着くなり真っ先に斎藤の部屋へ向かう。
「扉が……開いている」
少し離れた廊下から開いた障子が確認できた。
「夢主さん」
名前を呼んで中を覗くが夢主の姿は無かった。
無人の部屋に踏み入り、入り口に落ちている手拭いを見つけて拾い上げる。落とし主は斎藤か夢主か。
続いて山崎は斎藤に言われた室内の数箇所を確認した。
「葛籠には……紫の包み、鏡の引き出しには……櫛と紅。確かにある。持ち出していないんだ」
もし夢主が屯所を出て行くなら無くなっているはずだと斎藤が指摘した物は全て残されていた。
山崎は部屋に異常が無いのを確かめ、屯所内の他の場所を調べに向かった。
「おかしい」
「十日以上真面目に送り続けた夢主が急に筆不精になるでしょうか」
「まさか……俺達が戻る頃合を見て屯所を出た……まさかな」
土方と斎藤は顔を見合わせた。
「ある訳がない、あいつは、俺達の傍を……離れないはずだ……」
言いながら土方は根拠の無い自信を確かめるように頷いた。
「明日、俺達は家茂公にお供して伏見城へ向かう。その際、屯所に使いをやって確認する。連絡の行き違いではないと思うが……」
何かの手違いで文が届かない事もあるだろう。だが気掛かりだ。
土方は明日伏見に向かう途中で確認の使いを出す事にした。
「でしたら僕が行きますよ、土方さん!今すぐにでも!」
一緒に話を聞いていた沖田が申し出た。本当に今にも飛び出しそうな口ぶりだ。
「いや、この仕事は山崎にやってもらう。俺達は警護の仕事が優先だ。戦力的に沖田と斎藤、それに永倉は絶対に伏見に入ってもらう、いいな」
「っ……そうですね……」
自分の立場を苦々しく思いながらも沖田は大人しく引き下がった。
「近くまで行くんだ、何かあれば駆けつけられるさ」
「……えぇ」
斎藤も自らを励ますように声掛けた。
肩を落とす沖田を見ながら、やきもきさせられる己を感じていた。
「あいつ、何をしている……」
翌日、伏見に入った新選組の面々。
事情を知る数名の幹部は落ち着かない。
平隊士達に異変を悟られまいと平静を装うが、互いに顔を見合わせては逸らすを繰り返した。
「落ち着け、直に山崎から連絡が来る」
「はい……心配です、夢主ちゃん……」
「あぁ」
斎藤も珍しく不安げだった。
馬を飛ばせば僅かな距離、街道のその先にある壬生を見ていた。
山崎は一人、夢主の所在を確認すべく壬生へ戻った。
屯所に着くなり真っ先に斎藤の部屋へ向かう。
「扉が……開いている」
少し離れた廊下から開いた障子が確認できた。
「夢主さん」
名前を呼んで中を覗くが夢主の姿は無かった。
無人の部屋に踏み入り、入り口に落ちている手拭いを見つけて拾い上げる。落とし主は斎藤か夢主か。
続いて山崎は斎藤に言われた室内の数箇所を確認した。
「葛籠には……紫の包み、鏡の引き出しには……櫛と紅。確かにある。持ち出していないんだ」
もし夢主が屯所を出て行くなら無くなっているはずだと斎藤が指摘した物は全て残されていた。
山崎は部屋に異常が無いのを確かめ、屯所内の他の場所を調べに向かった。