37.手土産
夢主名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
この夜の旅館小萩屋では、窓辺で緋村が静かに座っていた。
外を眺めているのか冷たい空気に触れたかったのか、ただ静かに刀を抱えて座っている。
「おい緋村、入るぜ」
部屋の外から声が聞こえ、返事を待たずに扉が開いた。
「おい、ちょっと一晩二晩こいつを預かってくれ」
そう言うと飯塚は抱えていた女を部屋の中に転がした。
意識が無いのか投げられるままに女は転がった。
「ちょっと飯塚さん、俺はこういうのは……」
言いかけた緋村だが女の顔に見覚えがあり、言葉を止めて女の顔を見つめた。
「この女は……」
「そうだ、覚えてるか。新選組の女だ」
飯塚は顔を歪めて笑っている。いい物を手に入れたと嬉しそうだ。
「桂さんは知っているんですか、飯塚さんあなた、」
桂は人質を取るなど卑怯な手段を嫌う人間だ。それは緋村も同じだった。
飯塚はちっと舌打ちするが、緋村の言葉を遮るように慌てて言い訳をした。
「こいつは俺の仕事さ、桂さんにはこれから話す。だからそれまで少しの間こいつを見てろ。いいな」
「それにしても随分と濡れている……」
「あぁ?女が濡れてるたぁ、お前も随分厭らしいこと言うようになったもんだな」
「何がですかっ」
わざと聞き間違えた飯塚の言葉にむっとした緋村は、刀をスラリと抜きかけ、刃を光らせて見せた。
「おぉおいっ、冗談だよ冗談!風呂上りにでも連れてきたんだろう!少し熱っぽいから介抱してやれ!」
飯塚はよろけるように緋村から遠ざかり、両手を向けて反省する素振りをした。
「着替えは宿の女将さんに貰え。意識が戻ったら着替えさせてやれ」
「ちょっと飯塚さん!!」
「じゃぁな!引き取り先が見つけるまでだから頼んだぞ!」
飯塚は逃げるように部屋から出て行った。
「まったく……」
厄介な仕事を押し付けてと、緋村は渋々転がる女を視界に入れた。
後ろ手に縛り上げ、目隠しと猿轡、こんな女相手に流石にやり過ぎではないか。
「こいつ……」
緋村は近付いて顔を覗き込んだ。
「分かるか」
「……」
夢主は小さく頷いた。
それを見て緋村は夢主の体に触れた。熱い。何かを迷う余地が無いほど大熱だった。
「意識を失ってるんじゃない、ちょっとどころか凄い熱だ……熱で意識が朦朧としているのか……」
緋村は女の猿轡と目隠しを外してやった。
「……はぁ……はぁ……」
呼吸がとても苦しそうだ。大した話はしていないが、先程の会話も聞かれたかもしれない。
厄介だ。
「着替えを貰ってくる。逃げるな……と言っても動けないだろうがな」
そう言うと緋村は部屋を出て行った。
外を眺めているのか冷たい空気に触れたかったのか、ただ静かに刀を抱えて座っている。
「おい緋村、入るぜ」
部屋の外から声が聞こえ、返事を待たずに扉が開いた。
「おい、ちょっと一晩二晩こいつを預かってくれ」
そう言うと飯塚は抱えていた女を部屋の中に転がした。
意識が無いのか投げられるままに女は転がった。
「ちょっと飯塚さん、俺はこういうのは……」
言いかけた緋村だが女の顔に見覚えがあり、言葉を止めて女の顔を見つめた。
「この女は……」
「そうだ、覚えてるか。新選組の女だ」
飯塚は顔を歪めて笑っている。いい物を手に入れたと嬉しそうだ。
「桂さんは知っているんですか、飯塚さんあなた、」
桂は人質を取るなど卑怯な手段を嫌う人間だ。それは緋村も同じだった。
飯塚はちっと舌打ちするが、緋村の言葉を遮るように慌てて言い訳をした。
「こいつは俺の仕事さ、桂さんにはこれから話す。だからそれまで少しの間こいつを見てろ。いいな」
「それにしても随分と濡れている……」
「あぁ?女が濡れてるたぁ、お前も随分厭らしいこと言うようになったもんだな」
「何がですかっ」
わざと聞き間違えた飯塚の言葉にむっとした緋村は、刀をスラリと抜きかけ、刃を光らせて見せた。
「おぉおいっ、冗談だよ冗談!風呂上りにでも連れてきたんだろう!少し熱っぽいから介抱してやれ!」
飯塚はよろけるように緋村から遠ざかり、両手を向けて反省する素振りをした。
「着替えは宿の女将さんに貰え。意識が戻ったら着替えさせてやれ」
「ちょっと飯塚さん!!」
「じゃぁな!引き取り先が見つけるまでだから頼んだぞ!」
飯塚は逃げるように部屋から出て行った。
「まったく……」
厄介な仕事を押し付けてと、緋村は渋々転がる女を視界に入れた。
後ろ手に縛り上げ、目隠しと猿轡、こんな女相手に流石にやり過ぎではないか。
「こいつ……」
緋村は近付いて顔を覗き込んだ。
「分かるか」
「……」
夢主は小さく頷いた。
それを見て緋村は夢主の体に触れた。熱い。何かを迷う余地が無いほど大熱だった。
「意識を失ってるんじゃない、ちょっとどころか凄い熱だ……熱で意識が朦朧としているのか……」
緋村は女の猿轡と目隠しを外してやった。
「……はぁ……はぁ……」
呼吸がとても苦しそうだ。大した話はしていないが、先程の会話も聞かれたかもしれない。
厄介だ。
「着替えを貰ってくる。逃げるな……と言っても動けないだろうがな」
そう言うと緋村は部屋を出て行った。