34.出立の時
夢主名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
屯所から出発した新選組の男達は隊列を成し歩いていた。
「斎藤さーん、やけに沈んだ顔していますね!そんなに淋しいんですか、そりゃあ僕だって淋しいですけど、斎藤さんがそんなに顔に出すとは意外ですね。珍しいと言うか、大丈夫ですか?」
斎藤の傍に寄る沖田は、揶揄いながらも心配していた。
「構うな、大丈夫だ。ちょうど良かったのかも知れん」
斎藤は前を見据えて歩きながら呟いた。
「えっ……何がですか」
「……いや、何でもない」
斎藤は少し間を空けて答えた。
「何でもないって、斎藤さん、嘘吐くのが下手過ぎますよ……。どうせ夢主ちゃんの事でしょう、嫌でも分かりますよ」
今度は沖田が拗ねるように言った。
斎藤は表情を変えずただ前だけを見て歩いている。
「あいつとずっと共にいて……少し離れるのにちょうど良いと思ったんだよ」
「何て事を言うんですか。何かあったんですか」
思わぬ言葉に沖田は吃驚して斎藤を覗き込んだ。
ちらと沖田を一瞥する斎藤、深い窪みの奥で動く瞳はいつもの強い光を湛えていない。
「何も無い。何も無かったから、良かったと言ったんだ」
「もしかして……斎藤さん溜まってるんじゃ……」
沖田は眉をひそめて斎藤を見た。
そしてわざと軽々しい声で助言した。
「斎藤さん、大坂で久しぶりに遊んで来たらいいんじゃないですかぁー」
「何を言うか。遊びに行くんじゃないんだぞ」
生真面目に応じて斎藤は眉間に皺を寄せた。
「でも流石に全く時間が無い訳じゃないでしょう、いいですよ、僕は夢主ちゃんに言ったりしませんから。それより斎藤さんの抑えが効かなくなって、夢主ちゃんを傷つけないかとそちらの方が心配です!」
「フン」
斎藤は下らんと鼻をならしたが、己に問いかけると沖田の言う事は正しいかもしれないと迷いが生じた。
いや、断じてそんなことは無い、斎藤の心は改めて沖田の助言を否定した。
「俺は自分が抑えられんほど愚かではない」
「そーですかぁ~~っ」
沖田はハイハイと言わんばかりに、両手を頭の後ろに組んで適当に調子を合わせた。
「いいんですよ、僕みたいに女の人が欲しくならない男が珍しいの、分かってますから。本当に辛いなら……無理しないで下さいね」
女遊びを嫌う沖田だが、斎藤が半年もの間、全く女と関わっていないのを見て気になっていた。
以前はお気に入りの天神に会いに行っては床を共にしていた。
沖田が斎藤をむっつりと揶揄うのは冗談ではない。
溜め込んで夢主相手に爆発させないでくれと沖田なりの気持ちの伝え方だった。
「斎藤さーん、やけに沈んだ顔していますね!そんなに淋しいんですか、そりゃあ僕だって淋しいですけど、斎藤さんがそんなに顔に出すとは意外ですね。珍しいと言うか、大丈夫ですか?」
斎藤の傍に寄る沖田は、揶揄いながらも心配していた。
「構うな、大丈夫だ。ちょうど良かったのかも知れん」
斎藤は前を見据えて歩きながら呟いた。
「えっ……何がですか」
「……いや、何でもない」
斎藤は少し間を空けて答えた。
「何でもないって、斎藤さん、嘘吐くのが下手過ぎますよ……。どうせ夢主ちゃんの事でしょう、嫌でも分かりますよ」
今度は沖田が拗ねるように言った。
斎藤は表情を変えずただ前だけを見て歩いている。
「あいつとずっと共にいて……少し離れるのにちょうど良いと思ったんだよ」
「何て事を言うんですか。何かあったんですか」
思わぬ言葉に沖田は吃驚して斎藤を覗き込んだ。
ちらと沖田を一瞥する斎藤、深い窪みの奥で動く瞳はいつもの強い光を湛えていない。
「何も無い。何も無かったから、良かったと言ったんだ」
「もしかして……斎藤さん溜まってるんじゃ……」
沖田は眉をひそめて斎藤を見た。
そしてわざと軽々しい声で助言した。
「斎藤さん、大坂で久しぶりに遊んで来たらいいんじゃないですかぁー」
「何を言うか。遊びに行くんじゃないんだぞ」
生真面目に応じて斎藤は眉間に皺を寄せた。
「でも流石に全く時間が無い訳じゃないでしょう、いいですよ、僕は夢主ちゃんに言ったりしませんから。それより斎藤さんの抑えが効かなくなって、夢主ちゃんを傷つけないかとそちらの方が心配です!」
「フン」
斎藤は下らんと鼻をならしたが、己に問いかけると沖田の言う事は正しいかもしれないと迷いが生じた。
いや、断じてそんなことは無い、斎藤の心は改めて沖田の助言を否定した。
「俺は自分が抑えられんほど愚かではない」
「そーですかぁ~~っ」
沖田はハイハイと言わんばかりに、両手を頭の後ろに組んで適当に調子を合わせた。
「いいんですよ、僕みたいに女の人が欲しくならない男が珍しいの、分かってますから。本当に辛いなら……無理しないで下さいね」
女遊びを嫌う沖田だが、斎藤が半年もの間、全く女と関わっていないのを見て気になっていた。
以前はお気に入りの天神に会いに行っては床を共にしていた。
沖田が斎藤をむっつりと揶揄うのは冗談ではない。
溜め込んで夢主相手に爆発させないでくれと沖田なりの気持ちの伝え方だった。