34.出立の時
夢主名前設定
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「そうか、それはありがたい事だな。だがな」
斎藤は真剣な眼差しで夢主を見つめている。
伝えておきたい話があると、訴えかける眼差しだ。
「何が起こるか、分からんだろう。お前もそう考えはしまいか。もし俺達が、俺が戻らなかったら。その時はこの金で好きな所へ行くがいい」
「そんな……」
「もし、行きたい場所があるなら……行っても構わん」
例え俺が戻ろうとも、俺がいない間ならばこの金で好きな所へ。
ずっと新選組の屯所に縛り付けているお前を、お前が望むのならば解放してやりたい。斎藤はそう考えていた。
「そんな……そんな事……言わないで下さぃ……」
夢主は泣き出しそうな声で訴えた。
思いも寄らぬ斎藤の言葉に胸が締め付けられ、手は震えていた。
「ちゃんと、帰ってきて下さい……」
健気な訴えに斎藤はフッと口元を緩めた。
優しい瞳で、夢主の震える声に耳を傾けている。
「私……行きたい所なんて……ありませんっ……ちゃんと、帰ってきて下さいっ……」
ほろりと一滴の涙が落ちた。
夢主は斎藤に見せまいと咄嗟に下を向いた。これ以上涙を流すまいと必死に感情を抑えている。
「そんなこと言うなんて……酷いですっ……」
「そうか、すまんな。良かれと思ったんだが」
……俺には全く女心が分からんようだ……泣かせてしまうとは情け無い……
斎藤は心の中で自分を笑った。
俯いて頭しか見せない夢主。小さな頭、こんな時でも美しい髪に目を惹かれてしまう。
小さな頭も華奢な体も見慣れた男共とは比べ物にならない脆さ、自分達とは全く違う存在。
「正直、お前を初めて見た時、何かが出来る女だとは思わなかったさ。だがどうだ、お前は学もあり、考えもしっかりある自立した女だ。きっと俺達に見せていない知識や技術もまだ数多く持っているのだろう」
夢主は斎藤の言葉に顔を上げ、涙を溜めたまま静かに見つめ返した。
「お前を知る程に、お前はこんな所で納まっていて良いのかと、俺自身悩んだのさ」
「斎藤さん……私は、ここで新選組のみなさんを見ていたいです。おこがましいですが、みなさんを見守りたいんです。……沖田さんを、お助けしたくて……それから斎藤さんの……」
……斎藤さんの傍にいたいんです……
一番の望みを伝える言葉を胸に抱いて、夢主は目を閉じた。
居候の身で図々しいことを望んではいけない。そう思っているのに、斎藤さんが私に与えてくれた選択肢。
でも別離を示されるのは辛くて、戻らない覚悟で斎藤さんが行ってしまうのも悲しくて。
やっぱり傍にいたい、おこがましくても近くで皆を、斎藤さんを見ていたい。
「夢主……」
「私、斎藤さんが本当に不死身なのか見届けたいんですっ」
悪戯に言うと、夢主は涙の溜まった瞳で斎藤に微笑みかけた。
斎藤は真剣な眼差しで夢主を見つめている。
伝えておきたい話があると、訴えかける眼差しだ。
「何が起こるか、分からんだろう。お前もそう考えはしまいか。もし俺達が、俺が戻らなかったら。その時はこの金で好きな所へ行くがいい」
「そんな……」
「もし、行きたい場所があるなら……行っても構わん」
例え俺が戻ろうとも、俺がいない間ならばこの金で好きな所へ。
ずっと新選組の屯所に縛り付けているお前を、お前が望むのならば解放してやりたい。斎藤はそう考えていた。
「そんな……そんな事……言わないで下さぃ……」
夢主は泣き出しそうな声で訴えた。
思いも寄らぬ斎藤の言葉に胸が締め付けられ、手は震えていた。
「ちゃんと、帰ってきて下さい……」
健気な訴えに斎藤はフッと口元を緩めた。
優しい瞳で、夢主の震える声に耳を傾けている。
「私……行きたい所なんて……ありませんっ……ちゃんと、帰ってきて下さいっ……」
ほろりと一滴の涙が落ちた。
夢主は斎藤に見せまいと咄嗟に下を向いた。これ以上涙を流すまいと必死に感情を抑えている。
「そんなこと言うなんて……酷いですっ……」
「そうか、すまんな。良かれと思ったんだが」
……俺には全く女心が分からんようだ……泣かせてしまうとは情け無い……
斎藤は心の中で自分を笑った。
俯いて頭しか見せない夢主。小さな頭、こんな時でも美しい髪に目を惹かれてしまう。
小さな頭も華奢な体も見慣れた男共とは比べ物にならない脆さ、自分達とは全く違う存在。
「正直、お前を初めて見た時、何かが出来る女だとは思わなかったさ。だがどうだ、お前は学もあり、考えもしっかりある自立した女だ。きっと俺達に見せていない知識や技術もまだ数多く持っているのだろう」
夢主は斎藤の言葉に顔を上げ、涙を溜めたまま静かに見つめ返した。
「お前を知る程に、お前はこんな所で納まっていて良いのかと、俺自身悩んだのさ」
「斎藤さん……私は、ここで新選組のみなさんを見ていたいです。おこがましいですが、みなさんを見守りたいんです。……沖田さんを、お助けしたくて……それから斎藤さんの……」
……斎藤さんの傍にいたいんです……
一番の望みを伝える言葉を胸に抱いて、夢主は目を閉じた。
居候の身で図々しいことを望んではいけない。そう思っているのに、斎藤さんが私に与えてくれた選択肢。
でも別離を示されるのは辛くて、戻らない覚悟で斎藤さんが行ってしまうのも悲しくて。
やっぱり傍にいたい、おこがましくても近くで皆を、斎藤さんを見ていたい。
「夢主……」
「私、斎藤さんが本当に不死身なのか見届けたいんですっ」
悪戯に言うと、夢主は涙の溜まった瞳で斎藤に微笑みかけた。