33.おめでとう
夢主名前設定
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「成る程な、そうか。それでか」
……それでは子供と言われても致し方無しか、ククッ……
合点がいったと自嘲した。
十九で子供と扱われた事より、我ながら下らない事に腹を立てたものだと笑っていた。
「俺もまだまだだな」
「えっ」
「いや、何でもない。お前や沖田君と同じ歳とは納得いかんが、まぁ致し方あるまい。これからも宜しく頼むぜ」
「ふふふっ、それは私も同じですっ。斎藤さんと一緒だなんて……ふふっ。こちらこそ、宜しくお願いします」
夢主は満面の笑みで斎藤を見つめ返すと、肩をすぼめて少しだけ首を傾げ、おどけて見せた。
斎藤が湯呑みを手にするのを確認し、夢主も湯呑みを手に取った。
手の平から体全体が温まっていくようだ。夢主は、ほかほかと温まっていく熱に幸せを重ねた。
僅かなものから生まれ、やがて全てを覆い広がって温めてくれる。安らいだ気持ちと例えようのない温もり。
目を閉じて湯呑みの熱を両手で感じていた。
斎藤はその様子を本当に体が冷えていたのだなと捉えていた。
「外は冷えたな。お前、大丈夫か」
思いがけない気遣いに夢主は目を開き、心配させまいと笑顔を見せた。
「はいっ、大丈夫ですよっ。お茶も温かいし、斎藤さんと一緒にいるとぽかぽかあったかいです……っ」
余計な一言に気が付いて、夢主は顔を真っ赤にして俯いた。
わざと音を立ててお茶を一口啜る。
「フッ」
斎藤は何も言わず、聞こえなかった振りをして茶を啜った。
気付けば鐘の音も止んでいる。
「この時代って時間の感覚がいまいち分からないんです……半年経っても慣れなくて……」
「時折、時を告げる鐘が鳴るだろう。あれがおおよその目安だな。それから後は日の出と日の入りに」
教え聞かせる斎藤が夢主を見て言葉を止めた。
話を聞く夢主の瞼が重そうに上下を繰り返している。
「ふっ、お前眠たいのか」
「ぁあっ、そんな事はっ……」
冷えた体が急に温まり一気に眠気が湧いていた。
体がふわふわ、舟を漕いでいる。
「無理するな。祝いの握り飯か、礼を言う」
「はっ……はい、喜んでいただけて……何よりです……」
夢主は既に微睡んでいるような細い目だ。
斎藤に答えるのが精一杯だが、幸せそうに笑顔を湛えていた。
「あとは俺がやっておく」
そう言うと斎藤は湯呑みを戻し、夢主に布団へ行けと促した。
「いつもすみません……何だか甘えてばかり……」
……こんな時代の男の人なのに、新選組の幹部なのに、なんでこんなに偉ぶらないんだろう……
夢主は斎藤の好意に素直に甘えた。
眠そうに布団に移動する姿を斎藤は口元を緩めて見つめた。
「いい子だ」
「ふふっ、斎藤さん可笑しいですっ」
「そうか」
「痛っ!」
照れ隠しだ。
斎藤はニッと笑うと夢主のおでこをコツンと小さく弾いた。
「ゆっくり眠れよ」
「はぃ……」
ニヤリと立ち上がった斎藤に、夢主は少し不貞腐れて返事をした。
だがすぐに笑いが込み上げてきた。
「ふふ……おやすみなさい」
夢主はそう言うと、盆を持って行く斎藤の姿を見届けてから布団に横たわった。
見知らぬ者に囲まれ怯えたあの日から始まり、訳の分からぬ時代の中を過ごしてきた。
けれど今はこうしてこんなに温かい気持ちで過ごしている。
夢主は穏やかな今に感謝しながら眠りについた。
おでこに残るジンジンとした疼きさえも心地良かった。
……それでは子供と言われても致し方無しか、ククッ……
合点がいったと自嘲した。
十九で子供と扱われた事より、我ながら下らない事に腹を立てたものだと笑っていた。
「俺もまだまだだな」
「えっ」
「いや、何でもない。お前や沖田君と同じ歳とは納得いかんが、まぁ致し方あるまい。これからも宜しく頼むぜ」
「ふふふっ、それは私も同じですっ。斎藤さんと一緒だなんて……ふふっ。こちらこそ、宜しくお願いします」
夢主は満面の笑みで斎藤を見つめ返すと、肩をすぼめて少しだけ首を傾げ、おどけて見せた。
斎藤が湯呑みを手にするのを確認し、夢主も湯呑みを手に取った。
手の平から体全体が温まっていくようだ。夢主は、ほかほかと温まっていく熱に幸せを重ねた。
僅かなものから生まれ、やがて全てを覆い広がって温めてくれる。安らいだ気持ちと例えようのない温もり。
目を閉じて湯呑みの熱を両手で感じていた。
斎藤はその様子を本当に体が冷えていたのだなと捉えていた。
「外は冷えたな。お前、大丈夫か」
思いがけない気遣いに夢主は目を開き、心配させまいと笑顔を見せた。
「はいっ、大丈夫ですよっ。お茶も温かいし、斎藤さんと一緒にいるとぽかぽかあったかいです……っ」
余計な一言に気が付いて、夢主は顔を真っ赤にして俯いた。
わざと音を立ててお茶を一口啜る。
「フッ」
斎藤は何も言わず、聞こえなかった振りをして茶を啜った。
気付けば鐘の音も止んでいる。
「この時代って時間の感覚がいまいち分からないんです……半年経っても慣れなくて……」
「時折、時を告げる鐘が鳴るだろう。あれがおおよその目安だな。それから後は日の出と日の入りに」
教え聞かせる斎藤が夢主を見て言葉を止めた。
話を聞く夢主の瞼が重そうに上下を繰り返している。
「ふっ、お前眠たいのか」
「ぁあっ、そんな事はっ……」
冷えた体が急に温まり一気に眠気が湧いていた。
体がふわふわ、舟を漕いでいる。
「無理するな。祝いの握り飯か、礼を言う」
「はっ……はい、喜んでいただけて……何よりです……」
夢主は既に微睡んでいるような細い目だ。
斎藤に答えるのが精一杯だが、幸せそうに笑顔を湛えていた。
「あとは俺がやっておく」
そう言うと斎藤は湯呑みを戻し、夢主に布団へ行けと促した。
「いつもすみません……何だか甘えてばかり……」
……こんな時代の男の人なのに、新選組の幹部なのに、なんでこんなに偉ぶらないんだろう……
夢主は斎藤の好意に素直に甘えた。
眠そうに布団に移動する姿を斎藤は口元を緩めて見つめた。
「いい子だ」
「ふふっ、斎藤さん可笑しいですっ」
「そうか」
「痛っ!」
照れ隠しだ。
斎藤はニッと笑うと夢主のおでこをコツンと小さく弾いた。
「ゆっくり眠れよ」
「はぃ……」
ニヤリと立ち上がった斎藤に、夢主は少し不貞腐れて返事をした。
だがすぐに笑いが込み上げてきた。
「ふふ……おやすみなさい」
夢主はそう言うと、盆を持って行く斎藤の姿を見届けてから布団に横たわった。
見知らぬ者に囲まれ怯えたあの日から始まり、訳の分からぬ時代の中を過ごしてきた。
けれど今はこうしてこんなに温かい気持ちで過ごしている。
夢主は穏やかな今に感謝しながら眠りについた。
おでこに残るジンジンとした疼きさえも心地良かった。