33.おめでとう
夢主名前設定
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「寒くありませんか……斎藤さん、あの、お茶淹れてきますね……」
夢主は体をふるっと震わせ、斎藤と別れて勝手元に向かった。
一人になり立ち止まった途端、体がぶるぶると震えだす。
「体の芯まで冷えちゃったぁ……」
早く熱い茶を入れて部屋に戻ろうと準備を急いだ。
部屋に戻った斎藤は羽織を着たまま座った。
寒さは感じていなかったが、閉ざされた空間に入れば外との温度差を感じる。触れた羽織の表面が冷たい。
「さすがに冷えたな。あいつは大丈夫か」
女は男より冷える上に、体の小さいあいつはもっと冷えるのでは。
一人になった途端、夢主が気になって仕方がない。
暫く待っても夢主は戻って来ず、更に気を揉んだ。
「また火傷でもしたか。誰かに捉まっているのか」
心配事が止まらない。
以前のようにまた火傷して手を冷やしているのか。浮かれ気分の酔った隊士に絡まれてはいまいか。
そう言えばあれほど夢主に会いに来る沖田君も見ない。まさか奴に捉まっているのでは。
居ても立っても居られなくなり、斎藤は立ち上がった。自分が愚かしいと思うが放って置けない。
障子を開けようとしたその時、月明かりで小さな影が映し出された。
「遅い」
自らの動揺を隠そうと、斎藤はわざと冷たく告げた。
「えへへ……すみません」
「それは」
夢主は盆を手にしていた。
二人がいつも使う湯呑みに加えて、夢主が用意した物が置かれていた。
「私が握ったんです……おにぎり……」
照れてほんのり頬を染め、はにかみながら首を傾げた。
「おなか空いていませんか……お夜食……です」
小さなおにぎりが二つ並んでいた。
「おなか空いて無いかもと思って……小さくしたんですけど……」
斎藤はずっと驚いた顔をしている。
夢主が部屋に入るのに押されるように、斎藤も体を部屋の中に向けた。驚いたままゆっくり障子を閉め、正座する夢主の前に座した。
「どういうことだ」
別に夜食を用意しても不思議ではないが、何か含みが見て取れる。
「斎藤さん、ちょっと早いですけど……お誕生日、おめでとうございます」
「誕、生日」
「お生まれになったのが、一月一日と聞いています。……違いましたか」
「一日、確かにそうだが」
不安そうに訊ねた夢主の顔が緩やかに晴れた。
「良かった……実は私の時代では、生まれた日をお祝いする風習があるんです。無事に一つ歳を取って、おめでとう」
斎藤は不思議そうに話を聞いている。
「それから、生まれてきてくれて……ありがとう……って」
再び恥ずかしそうに頬を染めて少し目を逸らした。
こんな話をどう思うのだろうか。夢主は上目遣いをするようにちらりと斎藤を見た。
斎藤は己の存在に祝いを告げてくれる夢主に驚いた。自覚も無く、胸の奥に微かにくすぶる熱が生まれる。
夢主は体をふるっと震わせ、斎藤と別れて勝手元に向かった。
一人になり立ち止まった途端、体がぶるぶると震えだす。
「体の芯まで冷えちゃったぁ……」
早く熱い茶を入れて部屋に戻ろうと準備を急いだ。
部屋に戻った斎藤は羽織を着たまま座った。
寒さは感じていなかったが、閉ざされた空間に入れば外との温度差を感じる。触れた羽織の表面が冷たい。
「さすがに冷えたな。あいつは大丈夫か」
女は男より冷える上に、体の小さいあいつはもっと冷えるのでは。
一人になった途端、夢主が気になって仕方がない。
暫く待っても夢主は戻って来ず、更に気を揉んだ。
「また火傷でもしたか。誰かに捉まっているのか」
心配事が止まらない。
以前のようにまた火傷して手を冷やしているのか。浮かれ気分の酔った隊士に絡まれてはいまいか。
そう言えばあれほど夢主に会いに来る沖田君も見ない。まさか奴に捉まっているのでは。
居ても立っても居られなくなり、斎藤は立ち上がった。自分が愚かしいと思うが放って置けない。
障子を開けようとしたその時、月明かりで小さな影が映し出された。
「遅い」
自らの動揺を隠そうと、斎藤はわざと冷たく告げた。
「えへへ……すみません」
「それは」
夢主は盆を手にしていた。
二人がいつも使う湯呑みに加えて、夢主が用意した物が置かれていた。
「私が握ったんです……おにぎり……」
照れてほんのり頬を染め、はにかみながら首を傾げた。
「おなか空いていませんか……お夜食……です」
小さなおにぎりが二つ並んでいた。
「おなか空いて無いかもと思って……小さくしたんですけど……」
斎藤はずっと驚いた顔をしている。
夢主が部屋に入るのに押されるように、斎藤も体を部屋の中に向けた。驚いたままゆっくり障子を閉め、正座する夢主の前に座した。
「どういうことだ」
別に夜食を用意しても不思議ではないが、何か含みが見て取れる。
「斎藤さん、ちょっと早いですけど……お誕生日、おめでとうございます」
「誕、生日」
「お生まれになったのが、一月一日と聞いています。……違いましたか」
「一日、確かにそうだが」
不安そうに訊ねた夢主の顔が緩やかに晴れた。
「良かった……実は私の時代では、生まれた日をお祝いする風習があるんです。無事に一つ歳を取って、おめでとう」
斎藤は不思議そうに話を聞いている。
「それから、生まれてきてくれて……ありがとう……って」
再び恥ずかしそうに頬を染めて少し目を逸らした。
こんな話をどう思うのだろうか。夢主は上目遣いをするようにちらりと斎藤を見た。
斎藤は己の存在に祝いを告げてくれる夢主に驚いた。自覚も無く、胸の奥に微かにくすぶる熱が生まれる。