32.屯所の大晦日
夢主名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
最後に辿り着いた原田の部屋。
久しぶりの部屋は以前より物が増えている。
「おぉ夢主!来てくれたのか。悪いなぁ」
余程埃が溜まっていたのか顔を拭った時に付いたのか、原田の頬に黒い汚れが付いている。
「ふふっ、原田さん、ここ……黒いですよっ」
夢主は自分の頬を指差して教えた。
「おっ?そうかっ」
頬を腕で拭く原田、汚れがそのまま横に広がってしまった。
「ふふっ、原田さんてば横着ですっ」
子供みたいな仕草を笑って、夢主は着物に掛けた襷の端を原田の頬に伸ばした。
原田は悪びれもせず夢主に顔を差し出した。
「すみませんこんな物で……手拭い沖田さんにお渡ししてて……」
「おぉ、気にすんなよ!夢主に顔拭いてもらえるなんて、ありがてぇな」
汚れを拭い、掃除に取り掛かろうと部屋を見渡せば、頑張って片付けた様子が窺える。
荷物は邪魔にならぬよう机の上に纏められていた。
夢主は机の横に紙が一枚落ちているのを見つけた。
机上にも何枚か紙が見える。この一枚だけ落ちてしまったのだろう。
「原田さん、落ちてますよ」
「あぁ、そいつはぁ……まぁ、……見ねぇ方がいいかも知れねえぞ……」
腰を屈め紙を手に取ろうとした夢主の後ろから、原田が覗き込んできた。
両手を腰を当てて忠告めいた事を言う。
「え……そうなんですか……」
首を傾げて拾い上げた紙をめくった。
見えたのはあられもない姿で絡み合う男女。肌を露にした男と女の姿が描かれていた。
「こ……これってっ……!」
夢主は一気に熱が込み上げ、顔を赤くして慌てて紙を元に戻した。
目を泳がせる夢主を原田は爽やかな顔で豪快に笑った。
「ははははっ!だから言っただろ、春画だよっ!春画!」
「は、原田さんがこんな物を……い、意外ですっ……」
「いいだろぅ、冗談で買ったんだぜ。大坂に持って行こうってな。新八と平助も持ってただろ、お前掃除しに寄って来たんだよな。それから……」
続けようとした原田の言葉を遮って、夢主は合点が行ったとばかりに叫んだ。
「持って……持ってました!なんだ……これだったんですね!」
原田の言葉で夢主はようやく先程の二人の不審な言動の理由が理解できた。
なんて厭らしい……。
一瞬、怒りが沸いてきたが、けろっとしている原田を見てその怒りも消えてしまった。
こんなに厭らしい物なのに何故まぁいいかと思えるのか、夢主自身にも分からない。
「もぅっ、こんな物にお金使ったら……もったいないですよ」
ふぅと小さく溜息を吐くと原田と目が合い、笑っていた。
「ふふっ。原田さんてば……女の方には困らないくせにっ」
「言ってくれるな、ははっ」
照れたように頭を掻いて原田も笑っている。
「もう片付けはいいぜ、もっと凄いものが出てきたらお前ぇも困っちまうだろ」
「えっ、もっと凄いものって……」
増々顔が赤らんだ。
春画以上の何が存在するのか。気になってドキドキしまう。
「おいおぃ、聞くんじゃねぇよ!俺ぁ斎藤に怒られるのはごめんだぜ」
原田はフフンと夢主を見下ろしながら、大きな手でほっかむりの上から頭をぐしゃっと撫でた。
ほっかむりにしていた手拭いが外れ、原田は夢主に「すまねぇ」と渡した。
「ほらよ、戻っていいぜ」
春画を越える何かがあるのか、何も無いのか。
分からないが誤魔化されたまま、原田に肩を掴まれ夢主は部屋の外まで連れ出された。
「ありがとよ!」
「はい」
苦笑いで頭を下げ、夢主は斎藤の部屋へ戻った。
久しぶりの部屋は以前より物が増えている。
「おぉ夢主!来てくれたのか。悪いなぁ」
余程埃が溜まっていたのか顔を拭った時に付いたのか、原田の頬に黒い汚れが付いている。
「ふふっ、原田さん、ここ……黒いですよっ」
夢主は自分の頬を指差して教えた。
「おっ?そうかっ」
頬を腕で拭く原田、汚れがそのまま横に広がってしまった。
「ふふっ、原田さんてば横着ですっ」
子供みたいな仕草を笑って、夢主は着物に掛けた襷の端を原田の頬に伸ばした。
原田は悪びれもせず夢主に顔を差し出した。
「すみませんこんな物で……手拭い沖田さんにお渡ししてて……」
「おぉ、気にすんなよ!夢主に顔拭いてもらえるなんて、ありがてぇな」
汚れを拭い、掃除に取り掛かろうと部屋を見渡せば、頑張って片付けた様子が窺える。
荷物は邪魔にならぬよう机の上に纏められていた。
夢主は机の横に紙が一枚落ちているのを見つけた。
机上にも何枚か紙が見える。この一枚だけ落ちてしまったのだろう。
「原田さん、落ちてますよ」
「あぁ、そいつはぁ……まぁ、……見ねぇ方がいいかも知れねえぞ……」
腰を屈め紙を手に取ろうとした夢主の後ろから、原田が覗き込んできた。
両手を腰を当てて忠告めいた事を言う。
「え……そうなんですか……」
首を傾げて拾い上げた紙をめくった。
見えたのはあられもない姿で絡み合う男女。肌を露にした男と女の姿が描かれていた。
「こ……これってっ……!」
夢主は一気に熱が込み上げ、顔を赤くして慌てて紙を元に戻した。
目を泳がせる夢主を原田は爽やかな顔で豪快に笑った。
「ははははっ!だから言っただろ、春画だよっ!春画!」
「は、原田さんがこんな物を……い、意外ですっ……」
「いいだろぅ、冗談で買ったんだぜ。大坂に持って行こうってな。新八と平助も持ってただろ、お前掃除しに寄って来たんだよな。それから……」
続けようとした原田の言葉を遮って、夢主は合点が行ったとばかりに叫んだ。
「持って……持ってました!なんだ……これだったんですね!」
原田の言葉で夢主はようやく先程の二人の不審な言動の理由が理解できた。
なんて厭らしい……。
一瞬、怒りが沸いてきたが、けろっとしている原田を見てその怒りも消えてしまった。
こんなに厭らしい物なのに何故まぁいいかと思えるのか、夢主自身にも分からない。
「もぅっ、こんな物にお金使ったら……もったいないですよ」
ふぅと小さく溜息を吐くと原田と目が合い、笑っていた。
「ふふっ。原田さんてば……女の方には困らないくせにっ」
「言ってくれるな、ははっ」
照れたように頭を掻いて原田も笑っている。
「もう片付けはいいぜ、もっと凄いものが出てきたらお前ぇも困っちまうだろ」
「えっ、もっと凄いものって……」
増々顔が赤らんだ。
春画以上の何が存在するのか。気になってドキドキしまう。
「おいおぃ、聞くんじゃねぇよ!俺ぁ斎藤に怒られるのはごめんだぜ」
原田はフフンと夢主を見下ろしながら、大きな手でほっかむりの上から頭をぐしゃっと撫でた。
ほっかむりにしていた手拭いが外れ、原田は夢主に「すまねぇ」と渡した。
「ほらよ、戻っていいぜ」
春画を越える何かがあるのか、何も無いのか。
分からないが誤魔化されたまま、原田に肩を掴まれ夢主は部屋の外まで連れ出された。
「ありがとよ!」
「はい」
苦笑いで頭を下げ、夢主は斎藤の部屋へ戻った。