32.屯所の大晦日

夢主名前設定

本棚全体の夢小説設定
主人公の女の子

この小説の夢小説設定
主人公の女の子

「沖田さんはご自分の誕生日って……ご存知ですか、生まれた日付けを……」

「生まれた日、ですか。さぁ~何日ってのは聞いて無いなぁ。確か雨の季節も終わった頃とか。生まれ年は天保十五年ですよ」

「十五年!」

「はい。姉上がいるのですが、姉上にそう聞きました。ただ親戚の中にはお前は十三年の生まれだと言う人もいるので、良く分からいないんですけどね!あはははっ。まぁ姉上が大好きなので姉上の言う年にしておこうかと」

大したこだわりは無いようで、あっけらかんと笑いながら沖田は答えた。

「十五年って……斎藤さんと同じなのですか……」

「えぇぇっ!斎藤さんと一緒ぉおお」

知らなかった沖田は飛び退いて驚いた。

「あんな老けた人が……僕と同じ……いやっ、あの人より年下って言うのも嫌だな……上がいい、僕はきっと十三年の生まれなんです。うん!今日から僕は十三年生まれ……明日で二十二歳なんだ!」

斎藤と同じ歳が嫌なのか、沖田はぶつぶつと大きな独り言を言っている。

「あの……沖田さんの誕生日、生まれた日はお正月では無いんですよね……」

なのに何故、明日になると歳を取るのか。
夢主は理解出来なかった。

「そうですよ。でも年が明けたらみんな歳を取るでしょう」

「どうして明日、歳を取るんですか……」

斎藤さんはともかく……夢主は不思議に思った。
沖田も夢主の話が理解出来ずにいる。
互いに疑問を抱えたまま見つめ合う。

「……」

「……あぁっ!!!」

夢主は暫く考え込んでやっとある事を思い出した。

「数え年……そっかぁ……」

昔は歳の取り方が違うと何かで聞いた覚えがある。
数え年で幾つ……誰かがそんな言い回しをしていた。

「じゃあ、明日みんな揃って一つ、歳を取るんですね」

「そうですよ。夢主ちゃんもそうですね」

沖田は微笑みかけた。そういう事になるのだ。皆一緒に歳を取る。

「ちなみに……」

沖田は夢主の歳を知りたかった。
女の人に歳を聞くのはいつの時代も失礼なこと。言葉を濁して視線を送っている。

「私ですか……いくつなんだろぅ……」

思い出そうとするが不思議なものだ。己に関わる細かい情報は浮かんでこない。
丸ごと何かに抜き取られてしまったように綺麗に記憶が消えていた。
2/8ページ
スキ