31.お餅つき
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「さっ、斎藤さんっ!あ、ありがとうございます……さ、斎藤さんも凄くお上手なんですね……その、お餅つき……」
すっかり体が温まった二人が横に立つと熱がほかほかと伝わってくる。
体から発生する熱を身に受ける、考えると気恥ずかしく、夢主の頬が色づいた。
「も、もう終わったんですか……、終わったのなら……その……着物……」
「あぁ、暑くて着ていられん」
斎藤は少し乱れた髪を掻き上げながら言った。
その仕草に夢主はびくりと反応し、驚いて唇をきつく閉じた。
掻き上げられた髪が蒸気か汗できらりと光って見える。
「ははっ、そんな顔するなよ」
そう言ったお兄さん役であるはずの原田の肌にも困ってしまった。
冬でも日に焼けたように色濃い肌が汗ばんで艶やかに見える。
濡れ髪のような斎藤に、艶んだ肌の原田。どこに目をやって良いやら分からない。
「だって……目のやり場に困ってしまいます……」
夢主はもじもじと下を向いて作業を進めた。
「餅丸めんの上手ぇなぁ」
「ありがとうございます……」
肌を見せた二人が寄って来てから照れを隠す為に動きが速くなり、残っていた餅はあっという間に小さな塊に姿を変えていき、最初に受け取った分は全て丸餅に仕上がった。
「おぉ~~!完成だな!!出来立て食いてぇな」
完成したばかりの餅を眺めた原田はそう言うと一つ摘まみ上げ、ひょいと口に運んだ。
「うおっ、やわらけぇ~!」
「原田さん」
斎藤は行儀が悪いですね、と目で訴えた。
気にせず原田はにんまりと餅を味わっている。
「ふふっ出来立ては美味しいですよね、私も一度いただいた事があります……ぅっ」
原田を見ていた夢主が話を振ろうと斎藤を見た。
意識した以上にすぐ隣に立つ斎藤、汗ばんだ立派な胸板に夢主の鼻先が触れそうになる。
杵を振り続けて張った筋肉が見事に盛り上がっていた。
「あぁっ……そのっ……」
「フン、いちいち照れていては疲れるだろうが」
男の肌を目にするたび目を回しそうになる夢主がいい加減心配になってきた斎藤は、はぁと溜め息を吐いた。
「やれやれ」
まだ火照りが残り暑さを感じるが、斎藤は着物を羽織ってやった。
「ほら、これでいいだろう」
「あっ……はい……」
夢主は着物を直してくれた斎藤に軽く頭を下げた。しかし目に入るのは大きく開いた衿元から覗く胸元。
夢主の頬の赤さはなかなか引かなかった。
「俺もつくのはもういい。こっちを手伝ってやる」
「おぅ、それじゃぁ俺はもういっちょ、あっちを手伝ってくるぜ!夢主、餅ありがとよっ!」
斎藤は傍にあった紐で素早く襷掛けをし、原田は臼のもとへ戻って行った。
斎藤はやり方を聞かずとも、新しい餅の塊を近くに寄せて見事な手付きで餅を取り分け始めた。
巧みな手の動きに見惚れ、夢主の手は止まっていた。
骨ばった長い指がしなやかに動いて目を引きつける。人肌より柔らかい白い餅を扱う色気ある指先。しかし見事な手際を眺めるうちに夢主は恥ずかしさを忘れていった。
「凄ぉぃ……斎藤さん、何でも出来るんですね……」
「昔、故郷でやった事があるんだよ……」
斎藤は呟くように答えた。
「そう……なんですか」
斎藤が初めて「昔」と言う言葉を聞かせてくれた。
夢主は驚きと喜びで、自分の口元が緩んでいくのが分かった。
「……そうなんですね」
優しく言いながら斎藤を見上げると、斎藤の口元も微かに緩んでいた。
いつ頃の事なのだろう……
夢主は隣に立つ長身の男に、少年の姿や幼い頃の姿を想像して重ねてみた。
これ以上は何も語る様子はないが、夢主はとても嬉しく、斎藤を見つめて微笑んでいた。
「フッ」
斎藤は一息の笑みを溢すと、手元にある餅の塊を半分に分け夢主に渡した。
「ほら、お前も手伝え」
「ぁ、はいっ」
夢主は満面の笑みで答え、再び手を動かし始めた。
賑やかに笑い茶化し合い餅をつく男達から離れ斎藤と二人、並んで静かに手を動かした。
夢主はつきたての餅と斎藤の温かさを感じて、冬の寒さを忘れていた。
すっかり体が温まった二人が横に立つと熱がほかほかと伝わってくる。
体から発生する熱を身に受ける、考えると気恥ずかしく、夢主の頬が色づいた。
「も、もう終わったんですか……、終わったのなら……その……着物……」
「あぁ、暑くて着ていられん」
斎藤は少し乱れた髪を掻き上げながら言った。
その仕草に夢主はびくりと反応し、驚いて唇をきつく閉じた。
掻き上げられた髪が蒸気か汗できらりと光って見える。
「ははっ、そんな顔するなよ」
そう言ったお兄さん役であるはずの原田の肌にも困ってしまった。
冬でも日に焼けたように色濃い肌が汗ばんで艶やかに見える。
濡れ髪のような斎藤に、艶んだ肌の原田。どこに目をやって良いやら分からない。
「だって……目のやり場に困ってしまいます……」
夢主はもじもじと下を向いて作業を進めた。
「餅丸めんの上手ぇなぁ」
「ありがとうございます……」
肌を見せた二人が寄って来てから照れを隠す為に動きが速くなり、残っていた餅はあっという間に小さな塊に姿を変えていき、最初に受け取った分は全て丸餅に仕上がった。
「おぉ~~!完成だな!!出来立て食いてぇな」
完成したばかりの餅を眺めた原田はそう言うと一つ摘まみ上げ、ひょいと口に運んだ。
「うおっ、やわらけぇ~!」
「原田さん」
斎藤は行儀が悪いですね、と目で訴えた。
気にせず原田はにんまりと餅を味わっている。
「ふふっ出来立ては美味しいですよね、私も一度いただいた事があります……ぅっ」
原田を見ていた夢主が話を振ろうと斎藤を見た。
意識した以上にすぐ隣に立つ斎藤、汗ばんだ立派な胸板に夢主の鼻先が触れそうになる。
杵を振り続けて張った筋肉が見事に盛り上がっていた。
「あぁっ……そのっ……」
「フン、いちいち照れていては疲れるだろうが」
男の肌を目にするたび目を回しそうになる夢主がいい加減心配になってきた斎藤は、はぁと溜め息を吐いた。
「やれやれ」
まだ火照りが残り暑さを感じるが、斎藤は着物を羽織ってやった。
「ほら、これでいいだろう」
「あっ……はい……」
夢主は着物を直してくれた斎藤に軽く頭を下げた。しかし目に入るのは大きく開いた衿元から覗く胸元。
夢主の頬の赤さはなかなか引かなかった。
「俺もつくのはもういい。こっちを手伝ってやる」
「おぅ、それじゃぁ俺はもういっちょ、あっちを手伝ってくるぜ!夢主、餅ありがとよっ!」
斎藤は傍にあった紐で素早く襷掛けをし、原田は臼のもとへ戻って行った。
斎藤はやり方を聞かずとも、新しい餅の塊を近くに寄せて見事な手付きで餅を取り分け始めた。
巧みな手の動きに見惚れ、夢主の手は止まっていた。
骨ばった長い指がしなやかに動いて目を引きつける。人肌より柔らかい白い餅を扱う色気ある指先。しかし見事な手際を眺めるうちに夢主は恥ずかしさを忘れていった。
「凄ぉぃ……斎藤さん、何でも出来るんですね……」
「昔、故郷でやった事があるんだよ……」
斎藤は呟くように答えた。
「そう……なんですか」
斎藤が初めて「昔」と言う言葉を聞かせてくれた。
夢主は驚きと喜びで、自分の口元が緩んでいくのが分かった。
「……そうなんですね」
優しく言いながら斎藤を見上げると、斎藤の口元も微かに緩んでいた。
いつ頃の事なのだろう……
夢主は隣に立つ長身の男に、少年の姿や幼い頃の姿を想像して重ねてみた。
これ以上は何も語る様子はないが、夢主はとても嬉しく、斎藤を見つめて微笑んでいた。
「フッ」
斎藤は一息の笑みを溢すと、手元にある餅の塊を半分に分け夢主に渡した。
「ほら、お前も手伝え」
「ぁ、はいっ」
夢主は満面の笑みで答え、再び手を動かし始めた。
賑やかに笑い茶化し合い餅をつく男達から離れ斎藤と二人、並んで静かに手を動かした。
夢主はつきたての餅と斎藤の温かさを感じて、冬の寒さを忘れていた。