「ふふっ、夢主ちゃん、そんなに恥ずかしがらなくても」

皆に背を向けて立つ夢主に沖田が近付いた。
ぽつんと一人離れる小さな姿を放っておけなかったのだ。

「だって……きゃぁ」

顔を覗き込まれる気配で振り返ると、沖田までもが肌を露にしていた。

「だ、駄目ですよっ沖田さんまでっ！」

「えぇ、どうして僕は駄目なんですかっ、あはははっ」

恥ずかしがって困る夢主が可愛くて仕方がない。
沖田は離れるどころか顔を覗いて体を寄せた。

「っ……」

不意に目に入る沖田の上体。
小柄な沖田でさえも、毎日の厳しい鍛錬と隊務で鍛え上げられた筋肉の鎧を纏っていた。

「沖田さっ……」

「ん？」

沖田は何かと首を傾げたが、夢主の視線が自分の腹や胸の辺りで泳いでいるのに気付き、俄かに笑い声を漏らした。

「ははっ夢主ちゃん、僕だってこれでも一番隊組長ですよ、これくらいは……ね」

思わぬ男らしい体つき、綺麗に区切られた腹筋や程よく張った胸の筋肉。夢主は視線を奪われた。
頬を赤らめたまましげしげと見つめてしまい、羞恥を覚えた責任をなすり付けて沖田をぷぅっと睨んだ。

「もぉっ……着物着てくださいよ……」

顔を遠ざけて体を逸らしながら、腫れ物に触れるように沖田の着物をそっと摘まんで持ち上げる。

「あはははっ、そんな事しても駄目ですよ～僕もお餅つきたいんですからっ」

そう言って沖田は頭の後ろに両手を回していつもの恰好で笑った。

「じゃ、じゃぁ、お餅がつきあがるまで私は……」

餅がつきあがったら夢主は餅を丸めるのを手伝う為、少し離れたこの場所で待とうと心に決めた。
傍にいるのは恥ずかしさで気が持たない。
再び背を向けるが、交互に杵を回して皆が楽しそうに笑っている。つい何度も笑い声の方を見てしまった。

「気になるなら一緒においでよ、気にしなくても大丈夫だよ」

優しく誘ってくれる沖田に導かれて、そっと顔を向けてみた。
夢主は眉毛をハの字にして相変わらず困り気味の赤い顔をしている。