30.君の行方、その想い
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黙って赤くなり呆けている夢主に、斎藤はまた口を開いた。
「おぃ、こっちも思い切って言ってやったんだ。何とか言えよ」
斎藤が横目で見ると、固まっていた夢主は伏せた目を瞬かせながら小さく唇を動かした。
「ぁっ……はっ……はぃ。ありがとう……ございます」
少しだけ顔を上げると斎藤の手元が目に入り、空になった猪口に気付く。
徳利を持って寄せるが、恥かしさで僅かに震えていた。
「おいおい、そんなに緊張するなと言っているだろうが。何もするかよ、そんなに怯えるな」
「ぉっ、怯えてなんて……う、嬉しいんです。……ありがとうござぃます……た、ただ、恥かしくて……」
見れば分かると言いたくなる赤面具合だ。
斎藤が二杯目を飲み干そうとした時に、顔を上げた夢主と目が合った。
恥ずかしさと嬉しさで夢主の目には零れそうなほど涙が溜まっていた。
きらりと月の光を照り返し、ゆらゆらと揺れている。
耳まで染まった赤い顔は白い月明かりで和らぎ、綺麗な色合いは桃のような……桜のような……乙女椿のようだった。
「ぐっ……」
斎藤は思わず酒を呑み損ね、咳き込んでしまった。
「すまん……っ」
顔を逸らして口元を拭う。心なしか斎藤の耳が赤らんで見えた。
咳き込んだせいで赤くなったのか、夢主は自分の表情に照れて酒を呑み損ねたとは思いもよらなかった。
珍しく乱れた姿を見たと思ったのだ。
「だ……大丈夫……ですか……」
斎藤はひとまず落ち着こうと、咄嗟に手酌で三杯目を呑み干した。
一気に流し込んだが口の中に酒の良い香りが残っている。
「しかしっ、こんな美味い酒を控える日が来るなんざ考えも及ばんな」
「えっ」
「お前、言っただろう。酒が入ると人を斬りたくなるから俺が酒を控えていたと」
「あ……はぃっ」
気まずさを吹き飛ばす為の言葉かと夢主は首を傾げたが、随分前にした話だった。斎藤はしっかり覚えていた。
何も言わないほうが良かったのだと夢主は自分の言葉を後悔する。
「覚えてらしたんですね……やっぱり気になってしまいますね……ごめんなさい」
「いや、構わんと言っているだろう。何を言おうが構わんさ。ただ酒は美味い。呑まぬなど考えられるか」
斎藤はフンと笑いながら夢主を見た。
「斎藤さんは……人を斬るのがお好きなのですか」
人を斬りたくなるから酒を控える日の訪れ。
斎藤は人を斬るのが好きだという印象があった。
だが無差別に斬ればいいという考えではなく、今後自ら酒を控えたり、正気を持って動いていると感じられる。
本当の所はどうなのだろう。
「唐突な質問だな。ま、お前らしい」
斎藤は夢主を僅かに睨みつけ、ニヤリと笑って見せた。
「おぃ、こっちも思い切って言ってやったんだ。何とか言えよ」
斎藤が横目で見ると、固まっていた夢主は伏せた目を瞬かせながら小さく唇を動かした。
「ぁっ……はっ……はぃ。ありがとう……ございます」
少しだけ顔を上げると斎藤の手元が目に入り、空になった猪口に気付く。
徳利を持って寄せるが、恥かしさで僅かに震えていた。
「おいおい、そんなに緊張するなと言っているだろうが。何もするかよ、そんなに怯えるな」
「ぉっ、怯えてなんて……う、嬉しいんです。……ありがとうござぃます……た、ただ、恥かしくて……」
見れば分かると言いたくなる赤面具合だ。
斎藤が二杯目を飲み干そうとした時に、顔を上げた夢主と目が合った。
恥ずかしさと嬉しさで夢主の目には零れそうなほど涙が溜まっていた。
きらりと月の光を照り返し、ゆらゆらと揺れている。
耳まで染まった赤い顔は白い月明かりで和らぎ、綺麗な色合いは桃のような……桜のような……乙女椿のようだった。
「ぐっ……」
斎藤は思わず酒を呑み損ね、咳き込んでしまった。
「すまん……っ」
顔を逸らして口元を拭う。心なしか斎藤の耳が赤らんで見えた。
咳き込んだせいで赤くなったのか、夢主は自分の表情に照れて酒を呑み損ねたとは思いもよらなかった。
珍しく乱れた姿を見たと思ったのだ。
「だ……大丈夫……ですか……」
斎藤はひとまず落ち着こうと、咄嗟に手酌で三杯目を呑み干した。
一気に流し込んだが口の中に酒の良い香りが残っている。
「しかしっ、こんな美味い酒を控える日が来るなんざ考えも及ばんな」
「えっ」
「お前、言っただろう。酒が入ると人を斬りたくなるから俺が酒を控えていたと」
「あ……はぃっ」
気まずさを吹き飛ばす為の言葉かと夢主は首を傾げたが、随分前にした話だった。斎藤はしっかり覚えていた。
何も言わないほうが良かったのだと夢主は自分の言葉を後悔する。
「覚えてらしたんですね……やっぱり気になってしまいますね……ごめんなさい」
「いや、構わんと言っているだろう。何を言おうが構わんさ。ただ酒は美味い。呑まぬなど考えられるか」
斎藤はフンと笑いながら夢主を見た。
「斎藤さんは……人を斬るのがお好きなのですか」
人を斬りたくなるから酒を控える日の訪れ。
斎藤は人を斬るのが好きだという印象があった。
だが無差別に斬ればいいという考えではなく、今後自ら酒を控えたり、正気を持って動いていると感じられる。
本当の所はどうなのだろう。
「唐突な質問だな。ま、お前らしい」
斎藤は夢主を僅かに睨みつけ、ニヤリと笑って見せた。