30.君の行方、その想い
夢主名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「はい、さすがに今日は……控えようかと……」
夢主の目は落ち着き無く泳いでいた。
ひとまず一杯どうぞ……落ち着かないまま最初の酌をした。
こんなに着飾った自分が恥ずかしい。だが皆はとても褒めてくれる。
素敵だと褒められた艶やかな恰好で斎藤と二人きり向き合い、落ち着かなかった。斎藤は自分をどんな目で見るのだろう。女として見るのだろうか。
夕方着替えた時にも、先程酌を終えて戻った時にも、家の者に散々あれこれと言われていた。
……なぁ、夢主はん綺麗どっしゃろ。みんなもそう思うやろ……
使用人達は揃って何度も頷いた。男の使用人に至っては見惚れて動けなくなる程だった。
……夢主はん、もっと自分に自信もち!こんな別嬪さんに言い寄られて断る男なんて男やおへん!堅物やろが変人やろが男は男や……
女将さんの言い草を思い出してクスリと笑ってしまった。
「どうした」
「ぁっ、いえっすみません。お酒はやめておいた方がいいかなって……こんな恰好だとすぐに横になれませんし……」
……横になれと帯を緩められても困ってしまうし……斎藤さんだってお酒に溺れてしまうこともあるかもしれない……
あらぬ事を想像してしまい胸の鼓動が早まる。
乱れた胸を沈めようと手を当てて、大きく静かな呼吸を繰り返す様子を斎藤は眺めていた。
「フッ、そんな緊張するな。俺が軽薄な男だと思うか」
夢主の胸の内を見抜いたのか、斎藤は猪口を持ったまま薄っすら笑った。
「そういう……わけでは……」
視線を投げ続ける斎藤。
夢主が視線に応じると、月の明かりに照らされる顔が見えた。
京の市中を毎日練り歩いても決して浅黒くならない斎藤の肌、月の光をそのまま返して白く美しい。
所々に薄すら残る庭の雪が月明かりを反射し、より白く映えていた。
そして月夜の間だけ輝くように美しい黄金色の瞳。吸い込まれそうだった。
「美しい……」
「ぇっ……」
夢主は自分の気持ちが見透かされたと驚き、体が跳ねた。
「フッ、本音が漏れちまったな……」
斎藤は顔を夢主から背け、溜息を吐くように笑った。
「美しい。そう言ったんだ。この際だ言っておいてやる」
何を言っているのですか……夢主は困惑して斎藤を見つめた。
だが斎藤は気にせず、指先で掴む猪口を揺ら揺らと動かし、中の酒をくるくる回している。
「お前は美しい……今宵のお前は飛び切りだ。これは紛れも無い事実だ。お前は……己に自信を持て。外っ面だけじゃない、内面もお前は綺麗だ。少なくとも俺はそう思うぜ」
一瞬だけ夢主を見てニッと笑み、手に持つ酒を呑み干した。
それから夢主を見ずに月を見上げた。
短い静寂が流れる。遠くの座敷で騒ぐ声が微かに聞こえた。
夢主の目は落ち着き無く泳いでいた。
ひとまず一杯どうぞ……落ち着かないまま最初の酌をした。
こんなに着飾った自分が恥ずかしい。だが皆はとても褒めてくれる。
素敵だと褒められた艶やかな恰好で斎藤と二人きり向き合い、落ち着かなかった。斎藤は自分をどんな目で見るのだろう。女として見るのだろうか。
夕方着替えた時にも、先程酌を終えて戻った時にも、家の者に散々あれこれと言われていた。
……なぁ、夢主はん綺麗どっしゃろ。みんなもそう思うやろ……
使用人達は揃って何度も頷いた。男の使用人に至っては見惚れて動けなくなる程だった。
……夢主はん、もっと自分に自信もち!こんな別嬪さんに言い寄られて断る男なんて男やおへん!堅物やろが変人やろが男は男や……
女将さんの言い草を思い出してクスリと笑ってしまった。
「どうした」
「ぁっ、いえっすみません。お酒はやめておいた方がいいかなって……こんな恰好だとすぐに横になれませんし……」
……横になれと帯を緩められても困ってしまうし……斎藤さんだってお酒に溺れてしまうこともあるかもしれない……
あらぬ事を想像してしまい胸の鼓動が早まる。
乱れた胸を沈めようと手を当てて、大きく静かな呼吸を繰り返す様子を斎藤は眺めていた。
「フッ、そんな緊張するな。俺が軽薄な男だと思うか」
夢主の胸の内を見抜いたのか、斎藤は猪口を持ったまま薄っすら笑った。
「そういう……わけでは……」
視線を投げ続ける斎藤。
夢主が視線に応じると、月の明かりに照らされる顔が見えた。
京の市中を毎日練り歩いても決して浅黒くならない斎藤の肌、月の光をそのまま返して白く美しい。
所々に薄すら残る庭の雪が月明かりを反射し、より白く映えていた。
そして月夜の間だけ輝くように美しい黄金色の瞳。吸い込まれそうだった。
「美しい……」
「ぇっ……」
夢主は自分の気持ちが見透かされたと驚き、体が跳ねた。
「フッ、本音が漏れちまったな……」
斎藤は顔を夢主から背け、溜息を吐くように笑った。
「美しい。そう言ったんだ。この際だ言っておいてやる」
何を言っているのですか……夢主は困惑して斎藤を見つめた。
だが斎藤は気にせず、指先で掴む猪口を揺ら揺らと動かし、中の酒をくるくる回している。
「お前は美しい……今宵のお前は飛び切りだ。これは紛れも無い事実だ。お前は……己に自信を持て。外っ面だけじゃない、内面もお前は綺麗だ。少なくとも俺はそう思うぜ」
一瞬だけ夢主を見てニッと笑み、手に持つ酒を呑み干した。
それから夢主を見ずに月を見上げた。
短い静寂が流れる。遠くの座敷で騒ぐ声が微かに聞こえた。