29.小さな酒宴
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夢主が座敷を離れた後も酒宴は続いた。
家の者達により酒瓶がいくつも運ばれ、自由に酒を飲める。
席も最早無くなり、それぞれが入り乱れて好きなように飲んでいた。
「ふぅ……僕はそろそろ戻ろうかなぁ」
「おーーい、総司ぃ~~!戻るなんて水臭せぇこと言うなよぉーー!!お前には聞きてぇことが山ほどあるぜーーーあぁ~~ん?」
戻ろうと思った時、沖田は酔った皆に絡まれてしまった。
「えー何がでしょう、僕には話す事なんて、何もありませんよ!あっははっ!!」
呼び止められてしらばっくれるが、すっかり取り囲まれている。
笑って誤魔化し逃げようとするが、そうはさせまいと皆が肩を組んだり押さえ込んでくる。夢主に求婚した仕返しだ。
断られたのにこんな仕打ちを受けるとは、沖田は甘く見ていた自分をせせら笑った。
そんな沖田を尻目に斎藤は目立たぬようひっそりと席を立った。
「やれやれ、これ以上の付き合いは不要だな」
呟いて廊下を歩いていた。
「ちっ、しまったな。酒だけ持ってくれば良かったぜ」
口元をにやりと細めて漏らした。
思い立って勝手元に寄ってみた。夢主がいると思ったが、そこには使用人が何人かいるだけで女将も夢主の姿も無い。
「いないのか。すみませんが、酒はありますか」
使用人に尋ねるも、今ある分は全てあそこに運んでしまったと、賑やかなその場所を指差された。
座敷に今更戻る気がしない。
斎藤は聞こえないように舌打ちをして、そのまま部屋に戻る事にした。
「フン、こんな夜に酒も無しか」
部屋に戻り、せめてもと障子を開けて手枕で転がり月を眺めた。
……外に呑みに行くか……今夜は出ても分からないだろう……そもそも外に女を囲ってもいいのだ、夜分外に出るくらい咎められるものか。しかしあいつは何をしている……
この屯所内どこかにいるはずだ。
手枕を解いた時、廊下の板を着物を擦って近づく音が聞こえた。
……何だ……まさか……
「斎藤さん……」
顔を上げると、えへへ……と照れた笑いを浮かべる夢主が立っていた。
手には盆、酒が用意されていた。
「一体どういう了見だ」
「女将さんが……持っていってやれって」
夢主は部屋に入ってすぐの場所に盆を置いた。
「折角ですから……こちらでお月見をしながら……どうぞ」
微笑む夢主が、いつも以上にたおやかに感じるのは艶やかな着物のせいだろうか。
鮮やかな紅による化粧のせいだろうか。
……それとも白粉と混じった夢主本人の香りのせいか……
斎藤は考えながら夢主を見つめ、のっそり立ち上がった。
「そうか……ならば、ありがたく頂こう」
ゆっくり盆のそばへ腰を下ろすと、月明かりが真正面から斎藤の顔を照らした。
瞳に反射した金光が、きらりと揺れた。
家の者達により酒瓶がいくつも運ばれ、自由に酒を飲める。
席も最早無くなり、それぞれが入り乱れて好きなように飲んでいた。
「ふぅ……僕はそろそろ戻ろうかなぁ」
「おーーい、総司ぃ~~!戻るなんて水臭せぇこと言うなよぉーー!!お前には聞きてぇことが山ほどあるぜーーーあぁ~~ん?」
戻ろうと思った時、沖田は酔った皆に絡まれてしまった。
「えー何がでしょう、僕には話す事なんて、何もありませんよ!あっははっ!!」
呼び止められてしらばっくれるが、すっかり取り囲まれている。
笑って誤魔化し逃げようとするが、そうはさせまいと皆が肩を組んだり押さえ込んでくる。夢主に求婚した仕返しだ。
断られたのにこんな仕打ちを受けるとは、沖田は甘く見ていた自分をせせら笑った。
そんな沖田を尻目に斎藤は目立たぬようひっそりと席を立った。
「やれやれ、これ以上の付き合いは不要だな」
呟いて廊下を歩いていた。
「ちっ、しまったな。酒だけ持ってくれば良かったぜ」
口元をにやりと細めて漏らした。
思い立って勝手元に寄ってみた。夢主がいると思ったが、そこには使用人が何人かいるだけで女将も夢主の姿も無い。
「いないのか。すみませんが、酒はありますか」
使用人に尋ねるも、今ある分は全てあそこに運んでしまったと、賑やかなその場所を指差された。
座敷に今更戻る気がしない。
斎藤は聞こえないように舌打ちをして、そのまま部屋に戻る事にした。
「フン、こんな夜に酒も無しか」
部屋に戻り、せめてもと障子を開けて手枕で転がり月を眺めた。
……外に呑みに行くか……今夜は出ても分からないだろう……そもそも外に女を囲ってもいいのだ、夜分外に出るくらい咎められるものか。しかしあいつは何をしている……
この屯所内どこかにいるはずだ。
手枕を解いた時、廊下の板を着物を擦って近づく音が聞こえた。
……何だ……まさか……
「斎藤さん……」
顔を上げると、えへへ……と照れた笑いを浮かべる夢主が立っていた。
手には盆、酒が用意されていた。
「一体どういう了見だ」
「女将さんが……持っていってやれって」
夢主は部屋に入ってすぐの場所に盆を置いた。
「折角ですから……こちらでお月見をしながら……どうぞ」
微笑む夢主が、いつも以上にたおやかに感じるのは艶やかな着物のせいだろうか。
鮮やかな紅による化粧のせいだろうか。
……それとも白粉と混じった夢主本人の香りのせいか……
斎藤は考えながら夢主を見つめ、のっそり立ち上がった。
「そうか……ならば、ありがたく頂こう」
ゆっくり盆のそばへ腰を下ろすと、月明かりが真正面から斎藤の顔を照らした。
瞳に反射した金光が、きらりと揺れた。