29.小さな酒宴
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最後、原田の席へ来ると、原田は既に勝手に呑んでいた。
ご機嫌に夢主を迎えてくれる。
「すまねぇな、待ちきれなくてよ。でもお前の姿見ながら呑む酒は美味ぇな!」
うんうんと原田は楽しそうに大きく頷いた。徳利の中身は半分以上減っているが、酌をするだけの酒は残っている。
「どうぞ、原田さん」
「あぁ、すまねぇな」
原田は猪口を勢いよく突き出した。
日に焼けた力強い手だ。陽の匂いがしそうな手に思わずクスリと笑ってしまう。
「ありがとよ。皆が緊張すんのも分かるぜ。こいつぁどんな太夫よりも別嬪さんだ」
「そんな恥ずかしい事……でも原田さんに言われると素直に嬉しいです、ふふっ」
「いつもの仕草も色っぽく見えちまうぜ、参ったな、ははっ」
爽やかな笑顔で原田は注がれたばかりの猪口を空にした。
袖で口元を隠して小さく笑っていた夢主も気持ちの良い笑顔につられて隠さず笑い始めた。
皆の酌を一通り終えた夢主は立ち上がり、もう一度副長である土方の元へ戻るべきか、自分が望む斎藤や沖田の席へ行っても良いのか、迷って座敷を見回した。
その時、女将が戻ってきた。夢主に手招きをして廊下へ呼ぶ。
女二人ひそひそと何やら話し、揃って座敷へ戻った。
並んで膝をつき頭を下げる。女将がそのまま話し始めた。
「皆様、本年は当家に起こしになり、以来毎日厳しぃお勤めご苦労さんどす。年始も忙しゅうてゆっくり新年のお祝いも出来まへん故、今宵の小さいながらの宴と致しました。夢主はんのお酌でお楽しみいただけましたでっしゃろか。これから夢主はんには少しお手伝いして欲しい事がありますさかい、これにて失礼、致します」
「すみません……みなさま、ごゆっくりどうぞ」
女将に続き夢主も挨拶を済ませた。夢主を連れ去るように女将は部屋を出て行った。
「なんだ夢主……あっという間じゃねぇか……」
「でも嬉しかったなぁ~……」
残された男達はいなくなった夢主の姿を思い出して手酌を始めた。
いつもと変わらないはずの夕餉が、夢主の酌によって一気に華やいだ宴へと変わった。艶やかな姿はそれだけ強い印象を残した。
斎藤は一人、女将の機転に感心していた。男達が酔い始める前に、そして酒を呑まされる前に夢主を引いたのは流石。
沖田や他の男達は心ここにあらずで顔を緩ませている。
「はぁぁ……斎藤さん、綺麗でしたね……夢主ちゃん……」
「……そうだな」
呆けた沖田の顔を一瞥すると、斎藤も小さく本音を漏らした。
「しかし……残念だな、フッ」
あまりに短い一時に心惹かれていた。
ご機嫌に夢主を迎えてくれる。
「すまねぇな、待ちきれなくてよ。でもお前の姿見ながら呑む酒は美味ぇな!」
うんうんと原田は楽しそうに大きく頷いた。徳利の中身は半分以上減っているが、酌をするだけの酒は残っている。
「どうぞ、原田さん」
「あぁ、すまねぇな」
原田は猪口を勢いよく突き出した。
日に焼けた力強い手だ。陽の匂いがしそうな手に思わずクスリと笑ってしまう。
「ありがとよ。皆が緊張すんのも分かるぜ。こいつぁどんな太夫よりも別嬪さんだ」
「そんな恥ずかしい事……でも原田さんに言われると素直に嬉しいです、ふふっ」
「いつもの仕草も色っぽく見えちまうぜ、参ったな、ははっ」
爽やかな笑顔で原田は注がれたばかりの猪口を空にした。
袖で口元を隠して小さく笑っていた夢主も気持ちの良い笑顔につられて隠さず笑い始めた。
皆の酌を一通り終えた夢主は立ち上がり、もう一度副長である土方の元へ戻るべきか、自分が望む斎藤や沖田の席へ行っても良いのか、迷って座敷を見回した。
その時、女将が戻ってきた。夢主に手招きをして廊下へ呼ぶ。
女二人ひそひそと何やら話し、揃って座敷へ戻った。
並んで膝をつき頭を下げる。女将がそのまま話し始めた。
「皆様、本年は当家に起こしになり、以来毎日厳しぃお勤めご苦労さんどす。年始も忙しゅうてゆっくり新年のお祝いも出来まへん故、今宵の小さいながらの宴と致しました。夢主はんのお酌でお楽しみいただけましたでっしゃろか。これから夢主はんには少しお手伝いして欲しい事がありますさかい、これにて失礼、致します」
「すみません……みなさま、ごゆっくりどうぞ」
女将に続き夢主も挨拶を済ませた。夢主を連れ去るように女将は部屋を出て行った。
「なんだ夢主……あっという間じゃねぇか……」
「でも嬉しかったなぁ~……」
残された男達はいなくなった夢主の姿を思い出して手酌を始めた。
いつもと変わらないはずの夕餉が、夢主の酌によって一気に華やいだ宴へと変わった。艶やかな姿はそれだけ強い印象を残した。
斎藤は一人、女将の機転に感心していた。男達が酔い始める前に、そして酒を呑まされる前に夢主を引いたのは流石。
沖田や他の男達は心ここにあらずで顔を緩ませている。
「はぁぁ……斎藤さん、綺麗でしたね……夢主ちゃん……」
「……そうだな」
呆けた沖田の顔を一瞥すると、斎藤も小さく本音を漏らした。
「しかし……残念だな、フッ」
あまりに短い一時に心惹かれていた。