29.小さな酒宴
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「おぃ、これは一体何のつもりだ」
土方は照れくさそうに目を逸らした。
花街で艶やかな妓達に慣れている男の頬が仄かに色づいている。
「すみません、女将さんが色々と用意して下さって……正月に発たれるみなさんへ、新年のお祝いの代わりにと……」
「そうか、女将さんか」
申し訳なさそうな夢主を見て、土方はそれなら仕方ないと諦めの溜息を吐いた。
一杯食わされたというのが本音だが、折角の好意を受け取るべく猪口を差し出した。
「失礼します……」
仮にも副長、粗相があってはならない。夢主は慎重に酌をした。
下戸と言う噂もあったが、土方は躊躇せず注がれた酒を口に運んだ。
土方さん、飲めるんだ……。
そう考えつつ次の席、沖田のもとへ移る頃合いを探っていた。
もう一杯注ぐまで待つべきか、早々に皆の席を回るべきか見当もつかない。
土方は困った様子の夢主を見て、ふっと力を抜くように笑った。
「もういいぜ、他の連中の酌もしてやれ」
「はぃ」
夢主は小さく頭を下げ、腰を落としたまま傍の沖田の前へ移動した。重たい恰好では立ち上がるより、にじり寄る方が楽だ。
そんな姿を眺め、ちびちび酒を口に運ぶ土方、言葉に表せない艶やかさを味わっていた。
……全く……女は数多く見てきたが、夢主のやろぅ……
にっと笑って恥じらいに染まる横顔を目に、残りの酒を飲み干した。視線を向けたまま、次の酒を無意識に手酌していた。
沖田の前で姿勢を正した夢主。
照れてしまうが、心許す沖田を前に緊張は和らぎ、顔を見て話せる。
「沖田さん」
「ぁっ……」
「遅くなってしまいましたが……紅、ありがとうございました」
夢主が軽く頭を下げると、笑顔で固まっていた沖田がようやく声を発した。
「と……とっても良く、お似合いですよっ……あははっ、なんだか緊張、しちゃいますねっ」
こんな照れた顔の沖田は滅多に見られない。顔は真っ赤だが目が輝いていた。
まるで大切な宝物を見つけた童のようにきらきらと煌めいている。
「ふふっ……緊張、しちゃいますね」
夢主も照れ笑いをして、重たい首をほんの少し傾げた。
嬉し過ぎるのか沖田の口はずっと半開きだ。猪口を持ち、反対の手は頭をぽりぽりと掻いて照れ隠しをしている。
酒を注ぐ途中、二人は目が合った。
周りの皆からは相変わらず極度の緊張感が漂っており、座敷は静まり返っている。
視線を集めた二人は居た堪れず揃って俯いた。
「ぇえっと……あぁ……も、もう年末ですね~~あはははっ」
「ふふっ」
静寂を打ち消す為に発した沖田の言葉に思わず笑ってしまった。
普段は出てこない言葉だ。
「年始すぐに……出立しますが、必ず無事に戻りますから、安心して待っていて下さい」
「はい」
夢主の笑顔に胸を打たれ、沖田は自らの胸元をぐっと掴んだ。
胸の鼓動が悟られてしまうのではないかと思う程、激しく鼓動している。
「おいっ、総司、次っ、つぎぃっ」
誰かが小声で囁いた。皆、早く夢主に酌をして欲しいのだ。
「わっ、分かりましたよ!急かさないで下さい!!」
「ふふっ、沖田さん、失礼します」
軽い会釈に、沖田は少しだけ淋しそうな会釈を返した。
それから夢主はどこへ行くべきか再び迷い、視線を左右に振った末、自分の席を飛ばした沖田と同じ並びの斎藤の前に進んだ。
土方は照れくさそうに目を逸らした。
花街で艶やかな妓達に慣れている男の頬が仄かに色づいている。
「すみません、女将さんが色々と用意して下さって……正月に発たれるみなさんへ、新年のお祝いの代わりにと……」
「そうか、女将さんか」
申し訳なさそうな夢主を見て、土方はそれなら仕方ないと諦めの溜息を吐いた。
一杯食わされたというのが本音だが、折角の好意を受け取るべく猪口を差し出した。
「失礼します……」
仮にも副長、粗相があってはならない。夢主は慎重に酌をした。
下戸と言う噂もあったが、土方は躊躇せず注がれた酒を口に運んだ。
土方さん、飲めるんだ……。
そう考えつつ次の席、沖田のもとへ移る頃合いを探っていた。
もう一杯注ぐまで待つべきか、早々に皆の席を回るべきか見当もつかない。
土方は困った様子の夢主を見て、ふっと力を抜くように笑った。
「もういいぜ、他の連中の酌もしてやれ」
「はぃ」
夢主は小さく頭を下げ、腰を落としたまま傍の沖田の前へ移動した。重たい恰好では立ち上がるより、にじり寄る方が楽だ。
そんな姿を眺め、ちびちび酒を口に運ぶ土方、言葉に表せない艶やかさを味わっていた。
……全く……女は数多く見てきたが、夢主のやろぅ……
にっと笑って恥じらいに染まる横顔を目に、残りの酒を飲み干した。視線を向けたまま、次の酒を無意識に手酌していた。
沖田の前で姿勢を正した夢主。
照れてしまうが、心許す沖田を前に緊張は和らぎ、顔を見て話せる。
「沖田さん」
「ぁっ……」
「遅くなってしまいましたが……紅、ありがとうございました」
夢主が軽く頭を下げると、笑顔で固まっていた沖田がようやく声を発した。
「と……とっても良く、お似合いですよっ……あははっ、なんだか緊張、しちゃいますねっ」
こんな照れた顔の沖田は滅多に見られない。顔は真っ赤だが目が輝いていた。
まるで大切な宝物を見つけた童のようにきらきらと煌めいている。
「ふふっ……緊張、しちゃいますね」
夢主も照れ笑いをして、重たい首をほんの少し傾げた。
嬉し過ぎるのか沖田の口はずっと半開きだ。猪口を持ち、反対の手は頭をぽりぽりと掻いて照れ隠しをしている。
酒を注ぐ途中、二人は目が合った。
周りの皆からは相変わらず極度の緊張感が漂っており、座敷は静まり返っている。
視線を集めた二人は居た堪れず揃って俯いた。
「ぇえっと……あぁ……も、もう年末ですね~~あはははっ」
「ふふっ」
静寂を打ち消す為に発した沖田の言葉に思わず笑ってしまった。
普段は出てこない言葉だ。
「年始すぐに……出立しますが、必ず無事に戻りますから、安心して待っていて下さい」
「はい」
夢主の笑顔に胸を打たれ、沖田は自らの胸元をぐっと掴んだ。
胸の鼓動が悟られてしまうのではないかと思う程、激しく鼓動している。
「おいっ、総司、次っ、つぎぃっ」
誰かが小声で囁いた。皆、早く夢主に酌をして欲しいのだ。
「わっ、分かりましたよ!急かさないで下さい!!」
「ふふっ、沖田さん、失礼します」
軽い会釈に、沖田は少しだけ淋しそうな会釈を返した。
それから夢主はどこへ行くべきか再び迷い、視線を左右に振った末、自分の席を飛ばした沖田と同じ並びの斎藤の前に進んだ。