29.小さな酒宴
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それから暫くの後に訪れた夕飯の座敷、幹部か勢揃いしている。
夢主の席だけが一つ空いており、膳の上も空だった。
「夢主ちゃん、どうしたんでしょう。斎藤さんご存知ですか」
空席を挟んで沖田は訊ねた。
この時間、一人姿を消すなど珍しい。
膳が用意されていないからには予め夕餉の席を空ける事が伝わっていた。つまり突発的に問題が起きた訳ではない。
ならば同室の斎藤は何か知っているのではないか。
「さぁな」
斎藤は素知らぬ振りをした。だが沖田は納得しておらず「ふぅん……」と覗き込んでくる。
鬱陶しい顔を遠ざけようと二、三言葉を付け足した。
「そう言えば女将さんに頼まれて夕餉の特別な酒肴を用意するとか言ってたな」
「へぇ……さ」
「酒肴!」
「酒、出してくれんのか!」
沖田の声を遮って他の男達が反応した。
永倉や藤堂を皮切りに、がやがやと皆が騒ぎ出す。
酒とは失敗だったか……
斎藤がそう思い始めた時、いつもなら幹部が部屋に入る頃には姿を消している家の使用人が数人、何かを運び込んだ。
「おぉっ、来た来た!酒だぜ!!」
原田が言う通り酒支度だ。だが使用人は酒を呑む為の猪口だけを幹部達の膳に配り始めた。
そつなく配り終えると頭を下げて去って行った。あっという間の出来事だ。
「おい、中身はどうなってんだよ」
「もうすぐ来るんじゃねぇか……」
永倉は周りを見回すが、全ての膳に猪口だけが乗っている。
自分だけ忘れられたのでなければ良いと落ち着きを取り戻した。
藤堂が入り口を見ると、前川家女将がしんなりと現れた。改まって正座をして手をつき、深々と頭を下げる。
「そ、そんな女将さん、やめて下さいよ」
「なっなんですか突然!頭上げて下さい!」
皆が慌てた。女将はそんな慌てぶりを可笑しく思いながら顔を上げた。
「ふふふっ、みなさま準備はよろしおすか」
「は……?」
女将の言葉に男達はみな揃って首を傾げる。
「酒の準備か?おぅよいつでも準備は出来てるぜ!」
「あぁ、どんどん持ってきて下さい!いや、お願いします」
どんと来いと構える者や、中には頭を下げる者もいた。
「ほほほっ。みなさんお気が早いどすぇ、ほら、こちらへ早ぅ…………」
女将は心から皆の態度が可笑しかったらしく、着物の袖口で口元を隠して笑っている。
んんっと気丈さを取り戻すと、女将は座敷の外に首を伸ばして、何かを催促した。
そこには、正座でにじりよる一人の女が見えた。
「夢主に……ございます……」
夢主の席だけが一つ空いており、膳の上も空だった。
「夢主ちゃん、どうしたんでしょう。斎藤さんご存知ですか」
空席を挟んで沖田は訊ねた。
この時間、一人姿を消すなど珍しい。
膳が用意されていないからには予め夕餉の席を空ける事が伝わっていた。つまり突発的に問題が起きた訳ではない。
ならば同室の斎藤は何か知っているのではないか。
「さぁな」
斎藤は素知らぬ振りをした。だが沖田は納得しておらず「ふぅん……」と覗き込んでくる。
鬱陶しい顔を遠ざけようと二、三言葉を付け足した。
「そう言えば女将さんに頼まれて夕餉の特別な酒肴を用意するとか言ってたな」
「へぇ……さ」
「酒肴!」
「酒、出してくれんのか!」
沖田の声を遮って他の男達が反応した。
永倉や藤堂を皮切りに、がやがやと皆が騒ぎ出す。
酒とは失敗だったか……
斎藤がそう思い始めた時、いつもなら幹部が部屋に入る頃には姿を消している家の使用人が数人、何かを運び込んだ。
「おぉっ、来た来た!酒だぜ!!」
原田が言う通り酒支度だ。だが使用人は酒を呑む為の猪口だけを幹部達の膳に配り始めた。
そつなく配り終えると頭を下げて去って行った。あっという間の出来事だ。
「おい、中身はどうなってんだよ」
「もうすぐ来るんじゃねぇか……」
永倉は周りを見回すが、全ての膳に猪口だけが乗っている。
自分だけ忘れられたのでなければ良いと落ち着きを取り戻した。
藤堂が入り口を見ると、前川家女将がしんなりと現れた。改まって正座をして手をつき、深々と頭を下げる。
「そ、そんな女将さん、やめて下さいよ」
「なっなんですか突然!頭上げて下さい!」
皆が慌てた。女将はそんな慌てぶりを可笑しく思いながら顔を上げた。
「ふふふっ、みなさま準備はよろしおすか」
「は……?」
女将の言葉に男達はみな揃って首を傾げる。
「酒の準備か?おぅよいつでも準備は出来てるぜ!」
「あぁ、どんどん持ってきて下さい!いや、お願いします」
どんと来いと構える者や、中には頭を下げる者もいた。
「ほほほっ。みなさんお気が早いどすぇ、ほら、こちらへ早ぅ…………」
女将は心から皆の態度が可笑しかったらしく、着物の袖口で口元を隠して笑っている。
んんっと気丈さを取り戻すと、女将は座敷の外に首を伸ばして、何かを催促した。
そこには、正座でにじりよる一人の女が見えた。
「夢主に……ございます……」