27.墨の黒と、紅の赤
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「字なら普通に書けますけど……どうしてですか」
「いいから何か書いてみろ」
机の前に座ると斎藤が紙を指し示した。とにかく書けと迫る。
「はぃ……でも……今の時代と私の使っていた字、少し雰囲気が違うというか……斎藤さん達からしたら読みにくいかも知れないですけど」
そう言いながら筆を取った。筆を持つなんていつ以来だろう。何を書けば良いかわからず思わず考え込んでしまう。
そんな夢主だが、筆の持ち方は分かるのだなと斎藤と沖田は顔を見合わせた。
「えぇっと……」
「何でもいいですよ。こんにちはとか、愛しの君へ……とか。ははっ」
「お、沖田さんっ。沖田さんってロマンチストですよね……」
口をついて出てくるキザにも聞こえる言葉。夢主は正直な感想を呟いてしまった。
「ぇっ?ろまん……」
「浪漫、ろまんちすと……えぇと、甘い愛情表現と言うか……夢……見がちと言うか……」
なんと説明して良いか分からず曖昧な言葉しか出てこない。
「フッ、夢見がちか、確かに沖田君は女に夢を見ているな」
「な、なんですか!いいじゃないですか~~!僕がそのろまん~なら斎藤さんは!なんですかっ」
夢主の説明に斎藤は小さく噴出し顔をにやと歪め、沖田は照れて反発した。
斎藤を揶揄う言葉ないなですかと詰め寄る。
「うぅん、斎藤さんは……」
……ドS……なんて言えないし、第一、説明出来ないし……
ちらりと斎藤の顔を確認すると、加虐嗜好を思わせる尖った笑みが恥ずかしくて目を逸らしてしまった。
「な、内緒です!字を……字を書くんですよね……」
話題を変えようと筆に墨をつけた。
「ぎ……祗園精舎の……鐘の声……、諸行無常の……響きあり……」
「ほぉ、平家物語か」
「ふふっ、やっぱりご存知でした」
斎藤が知っているだろうと選んだ平家物語のひとくだり。
反応があり嬉しい夢主はすらすらと筆を走らせた。
「娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす……おごれる人も久しからず……これ、私のいた世では学校で必ずと言っていいほど覚えさせられたんです」
「学校?」
平家物語の中身を知らないのか首をひねっていた沖田が呟いた。
「今の寺子屋とか塾みたいなものです。学校……子供はみんな行ってお勉強するんですよ。朝から、お昼を食べてその後も……九年間は必ずします」
「ほぉ九年。長いな。それで色々と知識があるのだな」
「知識って程でも……ありませんけど……」
認められたようで嬉しく、照れ臭さで笑っていた。
「お習字……字はそんなに上手じゃないですけど……読めますか」
「まぁ、読めなくは無いな。称えるほどの美しさでも無いが」
斎藤は夢主が書いた字を眺めた。
表装して飾るほどではないが、柔らかな筆使いがこいつらしい。崩しの癖は全くなく読みやすい。
「いいから何か書いてみろ」
机の前に座ると斎藤が紙を指し示した。とにかく書けと迫る。
「はぃ……でも……今の時代と私の使っていた字、少し雰囲気が違うというか……斎藤さん達からしたら読みにくいかも知れないですけど」
そう言いながら筆を取った。筆を持つなんていつ以来だろう。何を書けば良いかわからず思わず考え込んでしまう。
そんな夢主だが、筆の持ち方は分かるのだなと斎藤と沖田は顔を見合わせた。
「えぇっと……」
「何でもいいですよ。こんにちはとか、愛しの君へ……とか。ははっ」
「お、沖田さんっ。沖田さんってロマンチストですよね……」
口をついて出てくるキザにも聞こえる言葉。夢主は正直な感想を呟いてしまった。
「ぇっ?ろまん……」
「浪漫、ろまんちすと……えぇと、甘い愛情表現と言うか……夢……見がちと言うか……」
なんと説明して良いか分からず曖昧な言葉しか出てこない。
「フッ、夢見がちか、確かに沖田君は女に夢を見ているな」
「な、なんですか!いいじゃないですか~~!僕がそのろまん~なら斎藤さんは!なんですかっ」
夢主の説明に斎藤は小さく噴出し顔をにやと歪め、沖田は照れて反発した。
斎藤を揶揄う言葉ないなですかと詰め寄る。
「うぅん、斎藤さんは……」
……ドS……なんて言えないし、第一、説明出来ないし……
ちらりと斎藤の顔を確認すると、加虐嗜好を思わせる尖った笑みが恥ずかしくて目を逸らしてしまった。
「な、内緒です!字を……字を書くんですよね……」
話題を変えようと筆に墨をつけた。
「ぎ……祗園精舎の……鐘の声……、諸行無常の……響きあり……」
「ほぉ、平家物語か」
「ふふっ、やっぱりご存知でした」
斎藤が知っているだろうと選んだ平家物語のひとくだり。
反応があり嬉しい夢主はすらすらと筆を走らせた。
「娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす……おごれる人も久しからず……これ、私のいた世では学校で必ずと言っていいほど覚えさせられたんです」
「学校?」
平家物語の中身を知らないのか首をひねっていた沖田が呟いた。
「今の寺子屋とか塾みたいなものです。学校……子供はみんな行ってお勉強するんですよ。朝から、お昼を食べてその後も……九年間は必ずします」
「ほぉ九年。長いな。それで色々と知識があるのだな」
「知識って程でも……ありませんけど……」
認められたようで嬉しく、照れ臭さで笑っていた。
「お習字……字はそんなに上手じゃないですけど……読めますか」
「まぁ、読めなくは無いな。称えるほどの美しさでも無いが」
斎藤は夢主が書いた字を眺めた。
表装して飾るほどではないが、柔らかな筆使いがこいつらしい。崩しの癖は全くなく読みやすい。