27.墨の黒と、紅の赤
夢主名前設定
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ある日、休息所に斎藤と沖田の姿があった。
珍しく土方が同席しており、いないのは夢主。この場にいない夢主の扱いが問題になっていた。
「もうすぐ将軍警護で俺達はみんな大坂です」
「一日二日で戻れる仕事じゃねぇ」
「一緒に……連れて行けないんでしょうか。前みたいに男装させて……」
沖田は夢主の身を案じて無理を承知で言った。
総出で向かう為、隊士に襲われる心配は無い。だが不測の事態というものはいつでも起こりうる。
「無理だな。連れて行って不逞の輩が現れて、まかり間違って何かが起きた時に夢主を守ってられねぇ。守るのは将軍家茂公であって、あいつじゃねぇんだ」
胡坐姿の土方は百も承知の事実を告げた。それでも沖田は夢主を一人置いていくのが怖かった。
心配なのは沖田の隣に座する斎藤も同じだ。
「定期的に連絡を取る、と言うのはどうでしょうか」
「連絡、どうやって」
新選組総出で警護に当たるのだ。連絡役だけの為に誰かを残すわけには行かない。
「文は、どうでしょうか」
顎をいじりながら何やら考えている土方に斎藤は告げた。
「文か……あいつ字ぃ書けんのか」
「書けるでしょう。それなりの教養があるようですし」
「ふぅん……」
斎藤の提案に土方は「いいかもしれない」と唸った。
「夢主ちゃんから文……いいなぁ」
沖田は何やら思いを馳せ一人にやけている。
「よし、帰ったら確認だ。いっちょ書かせてみろ」
「分かりました」
斎藤は頷いた。
いつもと変わらず部屋で針仕事をこなす夢主は、ご機嫌に鼻歌を歌っている。
「ふんふふ~ん……」
針を進めていると前触れもなく障子が開いた。暫く部屋を空けていた斎藤が姿を見せる。後ろから沖田もひょっこり顔を出した。
「おかえりなさい、寒くありませんでしたか」
「ふふー大丈夫ですよ!僕達は歩き慣れていますから」
沖田はにこにこと夢主のそばに座った。
斎藤は目を合わせるだけで机に向かい、かたかたと音を立てて何かを用意し始めた。
夢主は離れた場所から覗き込むように首を伸ばした。
……斎藤さん、何を始めるのかな……
「夢主ちゃん、ちょっと針を置いてもらえませんか」
「……はぃ……?」
首を傾げるが、夢主は言われた通り針を置き、道具を簡単に片付けた。
「おい、こっちへ来い」
斎藤に呼ばれ近寄ると、机には筆と墨が用意されていた。
「お前、字は書けるか」
「え?」
突然の質問に「当たり前です」と答えそうになるが、考えればこちらへ来てから一度も字を書いていない。
珍しく土方が同席しており、いないのは夢主。この場にいない夢主の扱いが問題になっていた。
「もうすぐ将軍警護で俺達はみんな大坂です」
「一日二日で戻れる仕事じゃねぇ」
「一緒に……連れて行けないんでしょうか。前みたいに男装させて……」
沖田は夢主の身を案じて無理を承知で言った。
総出で向かう為、隊士に襲われる心配は無い。だが不測の事態というものはいつでも起こりうる。
「無理だな。連れて行って不逞の輩が現れて、まかり間違って何かが起きた時に夢主を守ってられねぇ。守るのは将軍家茂公であって、あいつじゃねぇんだ」
胡坐姿の土方は百も承知の事実を告げた。それでも沖田は夢主を一人置いていくのが怖かった。
心配なのは沖田の隣に座する斎藤も同じだ。
「定期的に連絡を取る、と言うのはどうでしょうか」
「連絡、どうやって」
新選組総出で警護に当たるのだ。連絡役だけの為に誰かを残すわけには行かない。
「文は、どうでしょうか」
顎をいじりながら何やら考えている土方に斎藤は告げた。
「文か……あいつ字ぃ書けんのか」
「書けるでしょう。それなりの教養があるようですし」
「ふぅん……」
斎藤の提案に土方は「いいかもしれない」と唸った。
「夢主ちゃんから文……いいなぁ」
沖田は何やら思いを馳せ一人にやけている。
「よし、帰ったら確認だ。いっちょ書かせてみろ」
「分かりました」
斎藤は頷いた。
いつもと変わらず部屋で針仕事をこなす夢主は、ご機嫌に鼻歌を歌っている。
「ふんふふ~ん……」
針を進めていると前触れもなく障子が開いた。暫く部屋を空けていた斎藤が姿を見せる。後ろから沖田もひょっこり顔を出した。
「おかえりなさい、寒くありませんでしたか」
「ふふー大丈夫ですよ!僕達は歩き慣れていますから」
沖田はにこにこと夢主のそばに座った。
斎藤は目を合わせるだけで机に向かい、かたかたと音を立てて何かを用意し始めた。
夢主は離れた場所から覗き込むように首を伸ばした。
……斎藤さん、何を始めるのかな……
「夢主ちゃん、ちょっと針を置いてもらえませんか」
「……はぃ……?」
首を傾げるが、夢主は言われた通り針を置き、道具を簡単に片付けた。
「おい、こっちへ来い」
斎藤に呼ばれ近寄ると、机には筆と墨が用意されていた。
「お前、字は書けるか」
「え?」
突然の質問に「当たり前です」と答えそうになるが、考えればこちらへ来てから一度も字を書いていない。