26.気まずさ
夢主名前設定
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その頃、休息所の酒が切れていたので、諦めて屯所に戻ってきた斎藤の姿があった。
酒を買って休息所に戻り一人酒をするなど、まるで阿呆のする事ではないかと自分に言い聞かせたのだ。
原田の部屋の前を通りかかった時、斎藤はある気配に気が付いた。
静かに立ち止まって中の気配を窺うが、原田はいないようだ。
代わりに一つ、馴染みある小さく無防備な気配を感じた。
……いるのか……
そう思い、障子に手を掛けようとしたが、中から小さな溜息が聞こえ、思わず手を離した。
……部屋に来るまで待つか……
斎藤は一人で自室へ戻って行った。
夕暮れ時になると、流石にお腹が空いてきた夢主。
どうしようか迷うが、やはり座敷は行き難い。勝手元へ行こうか……廊下の様子を見るように障子を小さく開けてみた。
すると細く開いた障子の向こうに懐かしい物が一つ見える。
「……これ……」
障子を大きく開き、しっかり見つめた。
この屯所に来た頃に部屋に届けられた、見覚えのある盆が目の前にあった。
「おに……ぎり」
盆の上にはおにぎり。驚いた夢主は口元に手を添えて囁いた。
今でもよく覚えている、このおにぎり。握ってくれた主は。
「斎藤さん……」
自分を気遣ってくれていると知り、嬉しさで涙が込み上げてきた。
「私の事、怒ってないのかな……沖田さんの事も……気にして無いのかな……」
いつまでも言わない隠し事を抱えて、言わないくせに一人思い悩んで、心配させて。そんな私の為にこんな優しいことを。
夢主は盆を手に取り、ゆっくり立ち上がった。
日が傾き赤く染まった空、盆を持っていつもの場所に戻ってきた。
急ぎ足で僅かに息を切らして、いつもの人に呼び掛けた。
「さぃ……とうさん……」
「フッ……遅かったな」
斎藤は小さく笑っていた。
澄ました顔で自らの部屋の前、らしからぬ崩した恰好で縁側に座っている。
片足を立てて、立てた膝には肘を乗せ、そのまま頬杖を付いている。
着流しは乱れ、しどけない姿を晒していた。
「待ちくたびれたぞ」
「す……すみま……せんっ……」
夕陽の中、こちらを向く斎藤の瞳は既に黄金色に輝いていた。とても美しい色で夢主を映している。
「お隣……いいですか」
斎藤は座れと言わんばかりに広げていた足を片付け、座る場所を作ってくれた。
酒を買って休息所に戻り一人酒をするなど、まるで阿呆のする事ではないかと自分に言い聞かせたのだ。
原田の部屋の前を通りかかった時、斎藤はある気配に気が付いた。
静かに立ち止まって中の気配を窺うが、原田はいないようだ。
代わりに一つ、馴染みある小さく無防備な気配を感じた。
……いるのか……
そう思い、障子に手を掛けようとしたが、中から小さな溜息が聞こえ、思わず手を離した。
……部屋に来るまで待つか……
斎藤は一人で自室へ戻って行った。
夕暮れ時になると、流石にお腹が空いてきた夢主。
どうしようか迷うが、やはり座敷は行き難い。勝手元へ行こうか……廊下の様子を見るように障子を小さく開けてみた。
すると細く開いた障子の向こうに懐かしい物が一つ見える。
「……これ……」
障子を大きく開き、しっかり見つめた。
この屯所に来た頃に部屋に届けられた、見覚えのある盆が目の前にあった。
「おに……ぎり」
盆の上にはおにぎり。驚いた夢主は口元に手を添えて囁いた。
今でもよく覚えている、このおにぎり。握ってくれた主は。
「斎藤さん……」
自分を気遣ってくれていると知り、嬉しさで涙が込み上げてきた。
「私の事、怒ってないのかな……沖田さんの事も……気にして無いのかな……」
いつまでも言わない隠し事を抱えて、言わないくせに一人思い悩んで、心配させて。そんな私の為にこんな優しいことを。
夢主は盆を手に取り、ゆっくり立ち上がった。
日が傾き赤く染まった空、盆を持っていつもの場所に戻ってきた。
急ぎ足で僅かに息を切らして、いつもの人に呼び掛けた。
「さぃ……とうさん……」
「フッ……遅かったな」
斎藤は小さく笑っていた。
澄ました顔で自らの部屋の前、らしからぬ崩した恰好で縁側に座っている。
片足を立てて、立てた膝には肘を乗せ、そのまま頬杖を付いている。
着流しは乱れ、しどけない姿を晒していた。
「待ちくたびれたぞ」
「す……すみま……せんっ……」
夕陽の中、こちらを向く斎藤の瞳は既に黄金色に輝いていた。とても美しい色で夢主を映している。
「お隣……いいですか」
斎藤は座れと言わんばかりに広げていた足を片付け、座る場所を作ってくれた。