25.傷
夢主名前設定
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翌朝、斎藤は道場にいた。
隣には沖田が座っている。平隊士達に稽古を付けていた。幹部も数名集まっている。特に頼りない平隊士等の特別稽古である。
「ほら、切っ先が下がってるぞ!!」
「腰が引けている!!」
激しく叱咤する声の主、永倉が主に稽古をつけていた。
パン!……ドスッ!音を立てて隊士の体が飛ぶほど容赦なく叩き付けている。
真っ直ぐその様子を見守る二人だったが、沖田は斎藤ににじり寄った。
「斎藤さん……どうかしましたか、珍しい顔してますよ」
珍しい顔とは失礼な……斎藤は思ったが沖田を一瞥しただけで顔を元に戻した。
「晴れない顔して、夢主ちゃんにふられちゃいましたか、あははははっ」
嬉しそうに冗談を言う沖田を斎藤は相手にしなかった。
「まぁ悪いですけど夢主ちゃんは僕が幸せにしてあげますから、ご心配なくっ!」
沖田は皆に聞こえる大きな声で平然と言ってのけた。
周りから幾つか視線が向くが、沖田は気にしていない。その呑気さに斎藤は小さく溜息を吐いた。
「おや溜息ですかっ」
「ちっ、ちょっと黙ってろ」
稽古を傍から見て部下の動きを把握するのも大事な仕事だ。
沖田もちぇっと頭の後ろに手を組み、幹部らしからぬ態度で稽古風景に目を向けた。
「でも本当に……どうしたんですか。何かあったんでしょう。僕だって一番隊組長……人の心の揺れが分からない程に馬鹿ではありません」
真面目な言葉に、今度は沖田の顔をしっかりと見た。
「誤魔化せんな」
自嘲すると再び隊士達に目を戻した。
何も考えていないようで、しっかり周りが見えているのは頼もしい事か。
「あいつが、まだ何かを抱えている」
「夢主ちゃんが」
その言葉に沖田も顔色を変えた。
一人で抱え込んでしまう性格は知っている。
「俺には言えんようだ。もしかしたら君になら……そんな事もあるのかも知れん」
珍しく人に任せる言葉を呟いた。
そんな事があるとすれば俺自身の事。
今では何でも話してくれる。言えない話はしっかり理由を教えてくれる。
なのに何も言わぬとは、俺自身の事なのだろう。
「命の大事だろうが構わんが、それであいつが苦しむのはお門違いだ」
自らに言い聞かせるように斎藤は吐き捨てた。
「分かりました」
それから二人は暫く稽古を眺めた後、立ち上がって自らも木刀を交えた。
隣には沖田が座っている。平隊士達に稽古を付けていた。幹部も数名集まっている。特に頼りない平隊士等の特別稽古である。
「ほら、切っ先が下がってるぞ!!」
「腰が引けている!!」
激しく叱咤する声の主、永倉が主に稽古をつけていた。
パン!……ドスッ!音を立てて隊士の体が飛ぶほど容赦なく叩き付けている。
真っ直ぐその様子を見守る二人だったが、沖田は斎藤ににじり寄った。
「斎藤さん……どうかしましたか、珍しい顔してますよ」
珍しい顔とは失礼な……斎藤は思ったが沖田を一瞥しただけで顔を元に戻した。
「晴れない顔して、夢主ちゃんにふられちゃいましたか、あははははっ」
嬉しそうに冗談を言う沖田を斎藤は相手にしなかった。
「まぁ悪いですけど夢主ちゃんは僕が幸せにしてあげますから、ご心配なくっ!」
沖田は皆に聞こえる大きな声で平然と言ってのけた。
周りから幾つか視線が向くが、沖田は気にしていない。その呑気さに斎藤は小さく溜息を吐いた。
「おや溜息ですかっ」
「ちっ、ちょっと黙ってろ」
稽古を傍から見て部下の動きを把握するのも大事な仕事だ。
沖田もちぇっと頭の後ろに手を組み、幹部らしからぬ態度で稽古風景に目を向けた。
「でも本当に……どうしたんですか。何かあったんでしょう。僕だって一番隊組長……人の心の揺れが分からない程に馬鹿ではありません」
真面目な言葉に、今度は沖田の顔をしっかりと見た。
「誤魔化せんな」
自嘲すると再び隊士達に目を戻した。
何も考えていないようで、しっかり周りが見えているのは頼もしい事か。
「あいつが、まだ何かを抱えている」
「夢主ちゃんが」
その言葉に沖田も顔色を変えた。
一人で抱え込んでしまう性格は知っている。
「俺には言えんようだ。もしかしたら君になら……そんな事もあるのかも知れん」
珍しく人に任せる言葉を呟いた。
そんな事があるとすれば俺自身の事。
今では何でも話してくれる。言えない話はしっかり理由を教えてくれる。
なのに何も言わぬとは、俺自身の事なのだろう。
「命の大事だろうが構わんが、それであいつが苦しむのはお門違いだ」
自らに言い聞かせるように斎藤は吐き捨てた。
「分かりました」
それから二人は暫く稽古を眺めた後、立ち上がって自らも木刀を交えた。