25.傷
夢主名前設定
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着替え終えた斎藤は珍しく自ら衝立のこちら側へやって来た。
「で、どうして欲しいんだ」
「ぇ」
突然の問いに夢主は固まってしまった。
……どうして欲しいって……
「そんな顔を見る度にこうすればいいのか」
いくら言っても辛い顔を見せるだけで甘えてこない。
斎藤は静かに手を回し、ふっ……っと軽く体を引き寄せた。
「これでいいか」
夢主は真っ赤な顔で動けなかった。
驚いて咄嗟に自分を庇うように入れた両手がもどかしい。
大きな胸板の前、軽く拳を握ったまま斎藤の体に添えられずにいた。
「ぁのっ……」
手を回して思い切り抱きついて甘えたかった。
いっそ全てを預けてしまいたかった。
それでもずっと気になって、心から離れない事がある。
だから、そう出来ずにいた。
斎藤はその思い悩むさまに、心の中でやれやれ……と呟いた。
「一日中、お前が俺を目で探していたのは嫌でも気付く。相当堪えているのではないか」
……こいつはまだ俺に言えぬ何かを抱えているのか……
少なからず己に対し好意を持っているのは伝わってくる。
最初はまさかと思ったが、土方や原田など周りも、やいやい言うので認めざるを得ない。
今もどうだ、瞬間的に驚き硬直したものの、こうした途端夢主の体から力が抜けていくのを感じた。安心しきっている。
相手が夢主なら……相手がお前ならばその想いに応えるのも悪くないかもしれん、考え始め、言葉にしてしまおうかと思う時もあった。
しかし未だ何かを抱えて苦しむ様子。
今その言葉を伝えてもより苦しめるだけかもしれず、時が来るのを待つと決めたのだ。
「背に顔を預ける事も出来ぬなら、俺がこうすれば良いか」
夢主は呆けていた体にゆっくり力を入れた。
頷くわけでもなく、首を振るでもなく、ただゆっくりと斎藤の体を押し離した。
顔は赤く染まったまま、俯いている。
「だ……だめです……こんな事……」
……こんな事を……淋しいと思う度にされていたら本当に離れられなくなってしまう……心の底から……貴方を想ってしまう……
夢主は必死に涙を堪えていた。手が震えてしまいそうだ。
泣きそうなほど戸惑う理由が分からぬ斎藤は迷うが、小さな体を包んでいた手をそっと離した。
「そうか……」
音も無く立ち上がると斎藤は自分の布団へ戻っていった。
「すみません……お気持ち……ありがとうございます……」
静かに響く揺れる声から、涙が頬を伝う顔が容易に想像出来た。
「ゆっくり休め」
斎藤は一言掛けて布団に入った。
横になった夢主は涙が止まらなかった。
「で、どうして欲しいんだ」
「ぇ」
突然の問いに夢主は固まってしまった。
……どうして欲しいって……
「そんな顔を見る度にこうすればいいのか」
いくら言っても辛い顔を見せるだけで甘えてこない。
斎藤は静かに手を回し、ふっ……っと軽く体を引き寄せた。
「これでいいか」
夢主は真っ赤な顔で動けなかった。
驚いて咄嗟に自分を庇うように入れた両手がもどかしい。
大きな胸板の前、軽く拳を握ったまま斎藤の体に添えられずにいた。
「ぁのっ……」
手を回して思い切り抱きついて甘えたかった。
いっそ全てを預けてしまいたかった。
それでもずっと気になって、心から離れない事がある。
だから、そう出来ずにいた。
斎藤はその思い悩むさまに、心の中でやれやれ……と呟いた。
「一日中、お前が俺を目で探していたのは嫌でも気付く。相当堪えているのではないか」
……こいつはまだ俺に言えぬ何かを抱えているのか……
少なからず己に対し好意を持っているのは伝わってくる。
最初はまさかと思ったが、土方や原田など周りも、やいやい言うので認めざるを得ない。
今もどうだ、瞬間的に驚き硬直したものの、こうした途端夢主の体から力が抜けていくのを感じた。安心しきっている。
相手が夢主なら……相手がお前ならばその想いに応えるのも悪くないかもしれん、考え始め、言葉にしてしまおうかと思う時もあった。
しかし未だ何かを抱えて苦しむ様子。
今その言葉を伝えてもより苦しめるだけかもしれず、時が来るのを待つと決めたのだ。
「背に顔を預ける事も出来ぬなら、俺がこうすれば良いか」
夢主は呆けていた体にゆっくり力を入れた。
頷くわけでもなく、首を振るでもなく、ただゆっくりと斎藤の体を押し離した。
顔は赤く染まったまま、俯いている。
「だ……だめです……こんな事……」
……こんな事を……淋しいと思う度にされていたら本当に離れられなくなってしまう……心の底から……貴方を想ってしまう……
夢主は必死に涙を堪えていた。手が震えてしまいそうだ。
泣きそうなほど戸惑う理由が分からぬ斎藤は迷うが、小さな体を包んでいた手をそっと離した。
「そうか……」
音も無く立ち上がると斎藤は自分の布団へ戻っていった。
「すみません……お気持ち……ありがとうございます……」
静かに響く揺れる声から、涙が頬を伝う顔が容易に想像出来た。
「ゆっくり休め」
斎藤は一言掛けて布団に入った。
横になった夢主は涙が止まらなかった。