24.冬の刺客
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一人になってからも、手を温めては皿を洗う作業を繰り返した。
間もなく桶の中が洗い終わった綺麗な皿で埋まろうとしている。
「よぉし……あと少し」
夢主は嬉しくて呟いた。
その時、冬の柔らかい日差しを何かが遮り、影が出来た。誰か来たのだ。
反射的に顔を上げるが逆光で目が眩んでしまう。
「っ……さぃ……とぅ……さん?」
違和感があった。
背の丈は同じくらい……だが僅かに……単に体つきが大きいのか若干筋肉質であるのか、ひと回り大きく見えた。
逆光で瞬時に判断出来ない顔も、骨格は似ているが多少ごつい気がする。
「だ……れ……」
「すみませんね、ちょっとお水を頂きますよ」
聞こえた声は低く唸りのような掠れを含み、斎藤の声とは全く違うものだった。
思えば沖田が巡察に出たのだから、いつも対になり任務に当たる斎藤がいるはずが無い。
「……っ!!」
目が慣れて見えた顔は覚えのある人物だった。
とても怖い目をして口元はにやりと歪み、しゃがむ夢主を見下ろしている。
「失敬」
横目に夢主を見ながら井戸に進んだ男は、綱に手を掛け水を汲み始めた。
夢主は恐ろしさを感じて、目は見開いたまま閉じられなかった。
稽古着姿の男は慣れた様子から新選組の隊士ではあるようだ。
……体が……動かせない……
恐怖で生唾を飲み込むと、男が口を開いた。
「知っていますか……男と女では、斬った時の感触が違うんですよ……」
男の目が据わり、口元は更に卑しく歪む。
見せつけるよう恐ろしい笑顔をゆっくり作り上げていく。
「あっ……」
痙攣の如く反射的に動いた体、盥に足が当たり、中に積み上げられた皿が音を立てて崩れた。
同時に、ある部屋の障子が勢い良く開いた。
「ひっ……じかた……さん……」
ぎこちなく呟いて夢主は目だけを動かした。
皿の音と異様な気配を察知した土方だった。
「何をしている、刃衛」
……じ……じんえ……
全て思い出した。
目の前の男が人斬りで、そのイカれた人斬りがかつて新選組の隊士であった事を。
「これは副長。いえ、道場に残っていたものですから。お水をね、頂こうと思っただけですよ」
そう言うと釣瓶から直接浴びるように水を飲み、井戸の木板を元に戻した。
「そうか。終わったら去れ」
言い終わっても、土方は自らの部屋の前で刃衛が去るまで見張っていた。
「ふっ、副長までもがお気に入りとは……」
刃衛は立ち去る途中、誰にも届かぬ声で漏らした。
「大丈夫か夢主」
強張った顔で頷く夢主は、刃衛のぶちまけた水で髪や顔が、着物までも濡れていた。
立ち上がれないさまを見て、土方は中庭に降りて駆け寄った。
間もなく桶の中が洗い終わった綺麗な皿で埋まろうとしている。
「よぉし……あと少し」
夢主は嬉しくて呟いた。
その時、冬の柔らかい日差しを何かが遮り、影が出来た。誰か来たのだ。
反射的に顔を上げるが逆光で目が眩んでしまう。
「っ……さぃ……とぅ……さん?」
違和感があった。
背の丈は同じくらい……だが僅かに……単に体つきが大きいのか若干筋肉質であるのか、ひと回り大きく見えた。
逆光で瞬時に判断出来ない顔も、骨格は似ているが多少ごつい気がする。
「だ……れ……」
「すみませんね、ちょっとお水を頂きますよ」
聞こえた声は低く唸りのような掠れを含み、斎藤の声とは全く違うものだった。
思えば沖田が巡察に出たのだから、いつも対になり任務に当たる斎藤がいるはずが無い。
「……っ!!」
目が慣れて見えた顔は覚えのある人物だった。
とても怖い目をして口元はにやりと歪み、しゃがむ夢主を見下ろしている。
「失敬」
横目に夢主を見ながら井戸に進んだ男は、綱に手を掛け水を汲み始めた。
夢主は恐ろしさを感じて、目は見開いたまま閉じられなかった。
稽古着姿の男は慣れた様子から新選組の隊士ではあるようだ。
……体が……動かせない……
恐怖で生唾を飲み込むと、男が口を開いた。
「知っていますか……男と女では、斬った時の感触が違うんですよ……」
男の目が据わり、口元は更に卑しく歪む。
見せつけるよう恐ろしい笑顔をゆっくり作り上げていく。
「あっ……」
痙攣の如く反射的に動いた体、盥に足が当たり、中に積み上げられた皿が音を立てて崩れた。
同時に、ある部屋の障子が勢い良く開いた。
「ひっ……じかた……さん……」
ぎこちなく呟いて夢主は目だけを動かした。
皿の音と異様な気配を察知した土方だった。
「何をしている、刃衛」
……じ……じんえ……
全て思い出した。
目の前の男が人斬りで、そのイカれた人斬りがかつて新選組の隊士であった事を。
「これは副長。いえ、道場に残っていたものですから。お水をね、頂こうと思っただけですよ」
そう言うと釣瓶から直接浴びるように水を飲み、井戸の木板を元に戻した。
「そうか。終わったら去れ」
言い終わっても、土方は自らの部屋の前で刃衛が去るまで見張っていた。
「ふっ、副長までもがお気に入りとは……」
刃衛は立ち去る途中、誰にも届かぬ声で漏らした。
「大丈夫か夢主」
強張った顔で頷く夢主は、刃衛のぶちまけた水で髪や顔が、着物までも濡れていた。
立ち上がれないさまを見て、土方は中庭に降りて駆け寄った。