「えぇっ……」

斎藤の鋭い目が見据えてくる。どういう風の吹き回しか、本気で呑ませたいようだ。
まだ日も高いというのに、戸惑ってしまう。

「大丈夫ですよ、今なら寝ちゃっても夕方頃に丁度目が覚めるでしょう」

「えぇえ……」

斎藤も沖田も夢主の酔いの程度を本人よりも理解していた。
いつの間にか向かい合ってはいるものの、至近距離で二人に挟まれるように座っていた。

「ほら、持て。今日は気分がいい」

暗い話をしていたのに斎藤は何故かご機嫌で、ご機嫌ゆえに夢主に酒を含ませたいらしい。
沖田もすっかり気持ちを切り替えて一緒になって囃し立てた。

「お二人揃ってどうしたんですか……何か企んでいませんか、そんなに勧められると気になります……」

他意は無いのだろうが、こんなに積極的な二人は初めてだ。
言われるがまま斎藤から猪口を貰うと、沖田から酒を注がれた。

「お、ぴったり！」

以前、夢主の酒を溢れさせた沖田、今日は程よく一杯に注ぐ事ができて嬉しそうだ。
皆の酒が用意出来ると斎藤と沖田は少し高い位置に猪口を掲げた。
「あっ」と気付いた夢主も猪口を持ち上げ、笑顔で音頭を取った。

「かんぱぁーい」

乾杯の勢いのまま夢主も一気に喉の奥へ流し込んだ。
かぁっと熱くなるものを感じるが、くらくらとした眩暈は襲ってこなかった。

「ぁれ……」

頬もほんのり色づくが、陽の明かりのせいもあるのか以前ほどではない。

「斎藤さん、沖田さん、」

自分が一番驚いて、夢主は大きな声で二人の名前を呼んでいた。

「どうだ」

「美味しいです！それに……だいぶましです……めまいが、ありません……」

「ふふっ良かった！」

斎藤も沖田も夢主の様子に興味津々だ。そしてとても嬉しそうにしている。

「弱いんだ」

「え……？」

もともと酒に弱いのは知っているので、斎藤の言葉の意味が掴みきれなかった。