22.見定め事と中途半端な君

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主人公の女の子

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主人公の女の子

夢主は鈍器で後ろから殴られたような衝撃を感じた。
そんな事を告げられるのか……でも本人は望んでいる……真っ直ぐ向けられる目は真実を望んでいた。
鼓動が速くなっていく。唇は震え始めた。

「二十……七歳です。……沖田さんの生まれ年が分からないので、二十五や六だという人も……」

顔色一つ変えない沖田だが衝撃を受けていた。
斎藤も先日聞いたのは二十七歳の齢だけ。早ければ後二年の命という過酷な事実に襲われた。

「私、未来の戦争中に労咳にかかって、それでも治って九十過ぎまで生きた方の話を聞いた事があります。きっと体に気をつけて免疫を高めていれば、無理して戦に出なければ……きっと助かるんだと思います……」

震える声で言いながら、どちらにしても沖田には辛い選択になるのは分かっていた。
剣に生き剣に死のうとする剣客に、戦うなと言うのだから。

「ありがとう」

「沖田さん……」

「僕はまずその二十七を超えられるように生きてみます。そうすれば、僕の歴史が変わるでしょう」

「ねっ」と訴える顔は頼もしく、言葉には力があり、瞳は強く輝いていた。

「はぃ……」

夢主もそれを望んでいる。
斎藤ももちろん死が早まるなど望んでいない。
希望を信じ、誓いを立てるように三人は互いを確認し合った。

「戦いはこの先も続くさ。沖田君が一年二年休んだ所で問題は無い」

「でもまだ今はこの通り!元気満々ですからね!人斬りと剣を交えるまでは引けませんよ!」

そう言いながら袖をめくって目一杯の力こぶを作って見せる。
原田や永倉がいつも力こぶ自慢をしているが、それに比べると可愛い沖田の力こぶが愛おしく見えた。

「ふふっ、そうですねっ。……斎藤さんも知っていたのですね」

「あぁ。お前が余計に気遣うと思い黙っていた。すまんな」

責める気は無い。訊きたかっただけだ。
夢主は笑顔のまま首を振った。

「いいぇ、お心遣いありがとうございます。お二人とも……私も大事なお方です。お二人のお考え……判断を、私は……信じています」

噛み締めるように言い、二人の目を交互に見つめた。
目には力を宿し、正しいものを求める光がある。

斎藤は言葉にはしないが夢主の考えに対し、ありがたい……と静かに頷いた。
沖田も続くようにゆっくり頷いて見せた。

「さぁ、さぁさぁ!お話はこれくらいでしょう、辛気臭いのも程々に、本題に参りましょうよ!」

嬉しそうに沖田が酒の準備を始めた。
突然だったが斎藤も待ってたぜとばかりに、表情を変える。

「フッ、今日はしっかり呑ませるぞ」
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