20.銀の星、金の月
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「わぁ……綺麗……」
色鮮やかな朱漆から黒漆、竹櫛から銀の櫛まで、様々な素材の様々な装飾の櫛が並べられている。
「すごぉい……こんなに種類があるんですね……」
夢主の髪は長いがもちろん日本髪など結っておらず、いつも耳の下辺りで一つに束ねている。
櫛を挿すことはないが髪を梳く櫛は欲しかった。
「この櫛……」
夢主はひとつの黒い櫛を手に取った。
「ほぉ、珍しいな。黒漆に銀細工と……金の月か」
手に取った櫛を胸の前で大事そうに持ち、眺めている夢主の後ろから斎藤が声を掛けた。
漆塗りの黒い櫛には銀細工で星空のような銀の点が散りばめられ、端には桜の花と花びらが細工されていた。
そして、右上に金細工で月らしきものが施されている。黄金色の満月だ。
「綺麗ですね……」
黒い夜空に浮かぶ星々の中、輝く金の月と花咲く桜……夢主はまるで斎藤を表しているようだと櫛を見つめた。
「あぁ。稀な細工だな」
すると斎藤は何を訊くでもなく、店の主人に声を掛けた。
「これをくれ」
「へぃ、おおきに」
驚く間もなく、斎藤は素早く支払いを済ませてしまった。
咄嗟の出来事で良く見えなかったが、決して安い代物では無いのが分かる。
「気に入るのがあって良かったな」
櫛を持ったまま戸惑う夢主に、斎藤はさらりと言った。
はなから俺が支払うと決めていたから気にするな、そんな顔をしている。
「え……でも……」
「いいから。こういう時は黙って受け取るか、笑顔で礼の一つでも言うもんだ」
「ぁっ……ありがとうございます!でも……」
困った顔で礼を言った夢主。
あまりに困惑をして斎藤の小さな溜息を誘った。
「だって私、いつも斎藤さんにご迷惑をかけてばかりで……それなのに……」
溜息の次にフッと鼻をならした斎藤は、自分を必死に見上げる困り顔に向かってニッと笑った。
「やれやれ。お前、してもらうばかりだと思っているのか」
「えっ……?」
「少なくとも俺は一方的に迷惑を被っている訳ではない。分からんか」
分かりません……とばかりに夢主は黙って頷いた。
斎藤はまたしても小さな溜息を吐き、やれやれと肩をすぼめた。
「お前が来てから、良く眠れるようになった。その礼だ」
「ぇ……」
短く言い、気まずいのか恥ずかしいのか斎藤はすぐに目を逸らした。
夢主はますます戸惑いを深める。
……私のおかげで……眠れる……
何度か、斎藤の寝顔を見た夜を思い出した。
自分が思う以上に心を許してくれているのだろうか。
自分だけが甘えていると思ったが、そうでないのなら……
夢主は胸の奥がきゅっと熱くなった。
色鮮やかな朱漆から黒漆、竹櫛から銀の櫛まで、様々な素材の様々な装飾の櫛が並べられている。
「すごぉい……こんなに種類があるんですね……」
夢主の髪は長いがもちろん日本髪など結っておらず、いつも耳の下辺りで一つに束ねている。
櫛を挿すことはないが髪を梳く櫛は欲しかった。
「この櫛……」
夢主はひとつの黒い櫛を手に取った。
「ほぉ、珍しいな。黒漆に銀細工と……金の月か」
手に取った櫛を胸の前で大事そうに持ち、眺めている夢主の後ろから斎藤が声を掛けた。
漆塗りの黒い櫛には銀細工で星空のような銀の点が散りばめられ、端には桜の花と花びらが細工されていた。
そして、右上に金細工で月らしきものが施されている。黄金色の満月だ。
「綺麗ですね……」
黒い夜空に浮かぶ星々の中、輝く金の月と花咲く桜……夢主はまるで斎藤を表しているようだと櫛を見つめた。
「あぁ。稀な細工だな」
すると斎藤は何を訊くでもなく、店の主人に声を掛けた。
「これをくれ」
「へぃ、おおきに」
驚く間もなく、斎藤は素早く支払いを済ませてしまった。
咄嗟の出来事で良く見えなかったが、決して安い代物では無いのが分かる。
「気に入るのがあって良かったな」
櫛を持ったまま戸惑う夢主に、斎藤はさらりと言った。
はなから俺が支払うと決めていたから気にするな、そんな顔をしている。
「え……でも……」
「いいから。こういう時は黙って受け取るか、笑顔で礼の一つでも言うもんだ」
「ぁっ……ありがとうございます!でも……」
困った顔で礼を言った夢主。
あまりに困惑をして斎藤の小さな溜息を誘った。
「だって私、いつも斎藤さんにご迷惑をかけてばかりで……それなのに……」
溜息の次にフッと鼻をならした斎藤は、自分を必死に見上げる困り顔に向かってニッと笑った。
「やれやれ。お前、してもらうばかりだと思っているのか」
「えっ……?」
「少なくとも俺は一方的に迷惑を被っている訳ではない。分からんか」
分かりません……とばかりに夢主は黙って頷いた。
斎藤はまたしても小さな溜息を吐き、やれやれと肩をすぼめた。
「お前が来てから、良く眠れるようになった。その礼だ」
「ぇ……」
短く言い、気まずいのか恥ずかしいのか斎藤はすぐに目を逸らした。
夢主はますます戸惑いを深める。
……私のおかげで……眠れる……
何度か、斎藤の寝顔を見た夜を思い出した。
自分が思う以上に心を許してくれているのだろうか。
自分だけが甘えていると思ったが、そうでないのなら……
夢主は胸の奥がきゅっと熱くなった。