18.湯屋時
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いつもの湯屋に着くと、土方は懐から取り出した湯銭を「ほらよっ」と渡してくれた。
「行って来い。俺はここで待ってるから」
「ありがとうございます」
土方は「ほれ」と顎で入り口を示した。
夢主が笑顔でお辞儀をして湯屋の暖簾をくぐると、土方はやれやれと腕を組んで湯屋の壁にもたれた。
眼前に広がる夕暮れの空を見上げ、美しい色と静かな時を感じた。
「たまにはこうやってのんびるするのも、いぃもんだな……」
……おなごまつ……たそがれいろの、ゆあみはだ……
茜色の空を見ながら愛嬌のある俳句を幾つも考えていると、急いで済ませてきたのか、四半刻も経たないうちに夢主は出てきた。
「土方さん」
後ろに束ねた髪をそのままに、ほくほくと温まった桜色の頬で戻ってきた。
「おぉ、良かったか」
「はぃ!おかげさまで、すっきりしました。ありがとうございます」
夢主は無意識に満面の笑みで首を傾げていた。
……俺に向かってそんな笑顔を見せてくれるのか……こんな顔を見るのはいつ以来だろうか……
土方は清廉な笑みを目にして、そんなことを考えた。
辺りは綺麗な夕焼け空。もう少しで日も沈む頃。
「ちょっと、歩いて行かねぇか……」
「……はぃ」
思いがけない誘いだが、夢主も今は素直に受け入れる事ができた。
土方は夢主を連れて川へ向かい、夕陽に染まる川縁を歩いた。
来る時よりも、ずっとゆっくりとした足取りだ。土方は腕組みをして静かに歩いている。
夢主は土方の少しだけ後ろを……ほとんど隣を歩いていた。
「こうやって一緒に歩くのは、初めてかもしれねぇな……」
「……はぃ」
優しい声で話す土方に、夢主も構えず応えた。
「もしかしたら、最初で最後かも知れねぇな」
土方は少し自嘲するように笑った。
「そんな淋しい事、言わないで下さい……」
夢主も少し苦笑い気味に返す。
そうだとも、違うとも言えない。でも、最後にはしたくない、そう思えた。
「ふっ……また一緒に歩いてくれるのか」
「はぃ……」
真っ直ぐ前を見る土方の問いに、夢主は短く答えた。
答えた瞬間、揺れる黒髪の向こうにある目がふっと和らいだ気がした。
土方は半歩、歩みを下げて夢主と並んで歩き始めた。視線はそのまま前を向いたまま。
「そういやぁ、最初会った時……鬼の副長とか言ってたなぁ」
「ぁ……はぃ……」
もしかしてずっと気にしていたのかな、無意識の一言だったのに……
夢主は申し訳なさそうに頷いた。
「そんなに俺は、怖い怖いって言われてたのか」
ゆっくり歩みながら、土方は夢主の顔を覗くように少しだけ首を傾げた。
また自嘲した笑いを含んでいる。自分で心当たりがあるらしい。
「いぇ、あの……土方さんは新選組きっての色男って一番の人気者でしたよ」
「そうか!そいつを聞いて安心したぜ!!はははっ!」
正直に伝え励ますように微笑むと、土方は少しだけ声を大きくして笑った。
「土方さんは、近藤さんを担ぐ為に……新選組の為に進んで嫌われ者になって汚れ役を引き受けたんだって、そんな話も…………。でも、本当はとっても優しくて、やんちゃで、まるでみんなの兄貴みたいだって!言われてました!!」
もっと元気になって欲しいと夢主は続けた。
思えば最近の土方はとても急がしそうで、以前のように悪戯っぽく笑う事も無くなっていた。
「はははははっ!!そうかい!俺もなかなかいい男だなっ!!」
土方はご機嫌におどけて見せた。
一生懸命励ましてくれる夢主を見ていると、笑いたくなったのだ。
「行って来い。俺はここで待ってるから」
「ありがとうございます」
土方は「ほれ」と顎で入り口を示した。
夢主が笑顔でお辞儀をして湯屋の暖簾をくぐると、土方はやれやれと腕を組んで湯屋の壁にもたれた。
眼前に広がる夕暮れの空を見上げ、美しい色と静かな時を感じた。
「たまにはこうやってのんびるするのも、いぃもんだな……」
……おなごまつ……たそがれいろの、ゆあみはだ……
茜色の空を見ながら愛嬌のある俳句を幾つも考えていると、急いで済ませてきたのか、四半刻も経たないうちに夢主は出てきた。
「土方さん」
後ろに束ねた髪をそのままに、ほくほくと温まった桜色の頬で戻ってきた。
「おぉ、良かったか」
「はぃ!おかげさまで、すっきりしました。ありがとうございます」
夢主は無意識に満面の笑みで首を傾げていた。
……俺に向かってそんな笑顔を見せてくれるのか……こんな顔を見るのはいつ以来だろうか……
土方は清廉な笑みを目にして、そんなことを考えた。
辺りは綺麗な夕焼け空。もう少しで日も沈む頃。
「ちょっと、歩いて行かねぇか……」
「……はぃ」
思いがけない誘いだが、夢主も今は素直に受け入れる事ができた。
土方は夢主を連れて川へ向かい、夕陽に染まる川縁を歩いた。
来る時よりも、ずっとゆっくりとした足取りだ。土方は腕組みをして静かに歩いている。
夢主は土方の少しだけ後ろを……ほとんど隣を歩いていた。
「こうやって一緒に歩くのは、初めてかもしれねぇな……」
「……はぃ」
優しい声で話す土方に、夢主も構えず応えた。
「もしかしたら、最初で最後かも知れねぇな」
土方は少し自嘲するように笑った。
「そんな淋しい事、言わないで下さい……」
夢主も少し苦笑い気味に返す。
そうだとも、違うとも言えない。でも、最後にはしたくない、そう思えた。
「ふっ……また一緒に歩いてくれるのか」
「はぃ……」
真っ直ぐ前を見る土方の問いに、夢主は短く答えた。
答えた瞬間、揺れる黒髪の向こうにある目がふっと和らいだ気がした。
土方は半歩、歩みを下げて夢主と並んで歩き始めた。視線はそのまま前を向いたまま。
「そういやぁ、最初会った時……鬼の副長とか言ってたなぁ」
「ぁ……はぃ……」
もしかしてずっと気にしていたのかな、無意識の一言だったのに……
夢主は申し訳なさそうに頷いた。
「そんなに俺は、怖い怖いって言われてたのか」
ゆっくり歩みながら、土方は夢主の顔を覗くように少しだけ首を傾げた。
また自嘲した笑いを含んでいる。自分で心当たりがあるらしい。
「いぇ、あの……土方さんは新選組きっての色男って一番の人気者でしたよ」
「そうか!そいつを聞いて安心したぜ!!はははっ!」
正直に伝え励ますように微笑むと、土方は少しだけ声を大きくして笑った。
「土方さんは、近藤さんを担ぐ為に……新選組の為に進んで嫌われ者になって汚れ役を引き受けたんだって、そんな話も…………。でも、本当はとっても優しくて、やんちゃで、まるでみんなの兄貴みたいだって!言われてました!!」
もっと元気になって欲しいと夢主は続けた。
思えば最近の土方はとても急がしそうで、以前のように悪戯っぽく笑う事も無くなっていた。
「はははははっ!!そうかい!俺もなかなかいい男だなっ!!」
土方はご機嫌におどけて見せた。
一生懸命励ましてくれる夢主を見ていると、笑いたくなったのだ。