16.湯屋通いと屯所への帰還
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何とも珍しい組み合わせの三人だが、道を知る斎藤が先頭に立ち、いつもの湯屋へ案内した。
「じゃぁ夢主、ゆっくり行って来いよ!」
笑顔で見送られ、夢主はお辞儀をして中に入って行った。
原田と二人きりというのも珍しい、斎藤は思った。
特に話す気もなく黙っていると、原田が何の気なしに口を開いた。目の端に映る顔は何やら嬉しそうに緩んでいる。
「なぁ斎藤、夢主ちゃん可愛いなぁ」
「……まぁそれなりにいい女だとは思いますが」
斎藤は正直に答えた。
それを聞いて原田はにやけて斎藤の顔を覗き込む。
「お前も不器用だな。素直に求めりゃいいのによ」
それだけ言って原田は前を向き直し、通りを眺めた。
言われると思わなかった一言だが、どんな事を言われても嫌味に感じない不思議な魅力がある男だ。
「まぁ……沖田君の手前もありますし」
本音ではない適当な返事。
それでも原田は感慨深げに頷いた。
「総司かぁ……あいつはぁ奥手だよなぁ。見ていて可哀想になっちまうぜ。それがあいつのいい所なんだけどよ」
原田は夢主が可愛くて仕方がなく、どうにか幸せになってほしい……それが本音のようだ。
可愛い妹を愛でるように見守っている。
そうこうしている内に夢主が戻ってきた。陽も傾いている。
「ありがとうございました……」
湯屋なので髪は洗っていないが、雫が垂れている。
濡れ髪の艶やかさに素直な反応を見せる原田。おっ、と気付くや否や、水気を搾り取るように夢主の髪を摘んだ。
太い指から水滴が滴る。
温かい指が頬に触れ、夢主は「ぁっ」と小さく声を出した。
「おぅ、色っぽい顔で戻ってきやがったな」
「もぅ原田さんてば」
こんな事を言われても厭らしく感じない不思議な原田の爽やかさ。
二人のやりとりに、横目で見ている斎藤の方が恥ずかしいものを感じた。
帰り道は原田と斎藤が並び、夢主が僅か後ろに続いた。
鮮やかな夕陽に向かい歩いていく。湯上りの桃色の肌は赤い陽に隠れた。
「なぁ夢主、お前土方さんが苦手なのか」
「そぉですね……嫌いじゃないんですよ……でもなんか……苦手なのかなぁ……」
訊き辛い事も聞けてしまうし、不思議と答えてしまう。
原田の持つ空気が斎藤は不思議だった。
「この前、土方さんが自分で嫌われてんだぜーって俺に話してきたからよ。そうなのかと思ってよ」
夢主は苦笑いを向けた。
原田は構わず夢主の頭に手を置いて力強く撫でた。夢主の胸の中、何とも言えぬ焦れた思いが解れるようだ。
「苦手な理由ってのはやっぱりあれなのか……ま、仕方ねぇか……な。女だもんな」
「……」
夢主は静かにこくりと頷いた。
「まぁ、なんにせよお前自身の清らかさはなんら変わっちゃいねぇよ。自信持てよ」
「ありがとう……ございます」
原田は頼もしく微笑んだ。
何でも吐き出せてしまう、包み込んでくれる、本当に陽だまりのような男。
何も求めずただ温かさで包んでくれる原田の優しさに、胸の奥が熱くなった。
「じゃぁ夢主、ゆっくり行って来いよ!」
笑顔で見送られ、夢主はお辞儀をして中に入って行った。
原田と二人きりというのも珍しい、斎藤は思った。
特に話す気もなく黙っていると、原田が何の気なしに口を開いた。目の端に映る顔は何やら嬉しそうに緩んでいる。
「なぁ斎藤、夢主ちゃん可愛いなぁ」
「……まぁそれなりにいい女だとは思いますが」
斎藤は正直に答えた。
それを聞いて原田はにやけて斎藤の顔を覗き込む。
「お前も不器用だな。素直に求めりゃいいのによ」
それだけ言って原田は前を向き直し、通りを眺めた。
言われると思わなかった一言だが、どんな事を言われても嫌味に感じない不思議な魅力がある男だ。
「まぁ……沖田君の手前もありますし」
本音ではない適当な返事。
それでも原田は感慨深げに頷いた。
「総司かぁ……あいつはぁ奥手だよなぁ。見ていて可哀想になっちまうぜ。それがあいつのいい所なんだけどよ」
原田は夢主が可愛くて仕方がなく、どうにか幸せになってほしい……それが本音のようだ。
可愛い妹を愛でるように見守っている。
そうこうしている内に夢主が戻ってきた。陽も傾いている。
「ありがとうございました……」
湯屋なので髪は洗っていないが、雫が垂れている。
濡れ髪の艶やかさに素直な反応を見せる原田。おっ、と気付くや否や、水気を搾り取るように夢主の髪を摘んだ。
太い指から水滴が滴る。
温かい指が頬に触れ、夢主は「ぁっ」と小さく声を出した。
「おぅ、色っぽい顔で戻ってきやがったな」
「もぅ原田さんてば」
こんな事を言われても厭らしく感じない不思議な原田の爽やかさ。
二人のやりとりに、横目で見ている斎藤の方が恥ずかしいものを感じた。
帰り道は原田と斎藤が並び、夢主が僅か後ろに続いた。
鮮やかな夕陽に向かい歩いていく。湯上りの桃色の肌は赤い陽に隠れた。
「なぁ夢主、お前土方さんが苦手なのか」
「そぉですね……嫌いじゃないんですよ……でもなんか……苦手なのかなぁ……」
訊き辛い事も聞けてしまうし、不思議と答えてしまう。
原田の持つ空気が斎藤は不思議だった。
「この前、土方さんが自分で嫌われてんだぜーって俺に話してきたからよ。そうなのかと思ってよ」
夢主は苦笑いを向けた。
原田は構わず夢主の頭に手を置いて力強く撫でた。夢主の胸の中、何とも言えぬ焦れた思いが解れるようだ。
「苦手な理由ってのはやっぱりあれなのか……ま、仕方ねぇか……な。女だもんな」
「……」
夢主は静かにこくりと頷いた。
「まぁ、なんにせよお前自身の清らかさはなんら変わっちゃいねぇよ。自信持てよ」
「ありがとう……ございます」
原田は頼もしく微笑んだ。
何でも吐き出せてしまう、包み込んでくれる、本当に陽だまりのような男。
何も求めずただ温かさで包んでくれる原田の優しさに、胸の奥が熱くなった。