16.湯屋通いと屯所への帰還
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買い置いた酒が尽きる頃、夢主は酒の入らぬ体で睡魔に襲われていた。
目をはしはしと瞬いている。
「そろそろ……お先に……斎藤さんたちは……平気なんですか……」
「お酒も切れそうだし、僕達ももうすぐ寝ますよ。遠慮なくお休みなさい」
「とっとと寝る事だな」
沖田の幼子に話しかけるような優しい言葉と、相変わらずの斎藤の素っ気なさ。
夢主はどちらの言葉にも親しみを感じていた。
「お言葉に……甘えてお先に……おやすみなさぃ……」
眠そうに頭を下げ、もぞもぞと布団にもぐると、柔らかい布団が夢主を包んで眠りに誘い込んだ。
それを見計い、外で待っていた男が顔を出した。監察方の山崎丞だ。
「お眠りですね。……何事もなく安堵いたしました……」
本気か冗談か夢主の身を案じる言葉。二人の顔がぴくりとした。
既にすやすやと安らかな寝息が響いている。
「本題ですが、お梅の遺体の引き取り先がようやく見つかりましたんで、明日には屯所にお戻りいただけます」
「そうか」
「分かりました。わざわざありがとうございます」
山崎はそう報告すると素早く姿を消した。
「僕はもう少しここに居たかったんですけどね」
「気ままに酒を呑んで過ごせるのはいいが、人が斬れんのは退屈だ」
斎藤はククッと喉を鳴らすと、残り少ない酒を流し込んだ。
芹沢達がいなくなった今、次の大きな仕事は長州過激派志士達の取り締まりという名の抹殺。昂らずには居られなかった。
翌朝、三人は早々に休息所を後にした。
たった二日だったが、二人のおかげで八木邸での出来事を考えず穏やかな時を過ごせた。
初めての湯屋も三人の夕餉も楽しい時間、素直な気持ちで微笑むことが出来た。
この日、屯所の中へ、初めて正面である門から入ることになった。もう誰の目も気にするなとの証。
だが入る時、夢主は躊躇して門前で立ち止まってしまった。足が竦んでしまう。
斎藤も沖田もすぐに気付いて振り返る。その戸惑いを分かっていた。
夢主が怖い思いをし、悲しい思いもしたこの屯所。目を背けたい出来事も多いが、共に過ごし見守りたい人達がいる。
二人は夢主にそっと手を伸ばした。
「行くぞ」
穏やかな声。
その手を取る事はなかったが、夢主は静やかに頷いて後に続くことが出来た。
斎藤さんが、沖田さんが一緒なら大丈夫、みんながいれば、きっと大丈夫と。
目をはしはしと瞬いている。
「そろそろ……お先に……斎藤さんたちは……平気なんですか……」
「お酒も切れそうだし、僕達ももうすぐ寝ますよ。遠慮なくお休みなさい」
「とっとと寝る事だな」
沖田の幼子に話しかけるような優しい言葉と、相変わらずの斎藤の素っ気なさ。
夢主はどちらの言葉にも親しみを感じていた。
「お言葉に……甘えてお先に……おやすみなさぃ……」
眠そうに頭を下げ、もぞもぞと布団にもぐると、柔らかい布団が夢主を包んで眠りに誘い込んだ。
それを見計い、外で待っていた男が顔を出した。監察方の山崎丞だ。
「お眠りですね。……何事もなく安堵いたしました……」
本気か冗談か夢主の身を案じる言葉。二人の顔がぴくりとした。
既にすやすやと安らかな寝息が響いている。
「本題ですが、お梅の遺体の引き取り先がようやく見つかりましたんで、明日には屯所にお戻りいただけます」
「そうか」
「分かりました。わざわざありがとうございます」
山崎はそう報告すると素早く姿を消した。
「僕はもう少しここに居たかったんですけどね」
「気ままに酒を呑んで過ごせるのはいいが、人が斬れんのは退屈だ」
斎藤はククッと喉を鳴らすと、残り少ない酒を流し込んだ。
芹沢達がいなくなった今、次の大きな仕事は長州過激派志士達の取り締まりという名の抹殺。昂らずには居られなかった。
翌朝、三人は早々に休息所を後にした。
たった二日だったが、二人のおかげで八木邸での出来事を考えず穏やかな時を過ごせた。
初めての湯屋も三人の夕餉も楽しい時間、素直な気持ちで微笑むことが出来た。
この日、屯所の中へ、初めて正面である門から入ることになった。もう誰の目も気にするなとの証。
だが入る時、夢主は躊躇して門前で立ち止まってしまった。足が竦んでしまう。
斎藤も沖田もすぐに気付いて振り返る。その戸惑いを分かっていた。
夢主が怖い思いをし、悲しい思いもしたこの屯所。目を背けたい出来事も多いが、共に過ごし見守りたい人達がいる。
二人は夢主にそっと手を伸ばした。
「行くぞ」
穏やかな声。
その手を取る事はなかったが、夢主は静やかに頷いて後に続くことが出来た。
斎藤さんが、沖田さんが一緒なら大丈夫、みんながいれば、きっと大丈夫と。