15.小さな居場所

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主人公の女の子

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主人公の女の子

美しい素肌に残った痣は治り始めて少し色を変えていた。
沖田はその様子に安堵したが、悔しさと悲しさを覚えた。
だがその傷をつけた悪漢は自分達の手で葬られている。傷もやがて消えるだろうと、自分を慰めて言い聞かせた。

「暫く痛むかも知れんが、少しずつ良くなっているようだな」

落ち着いた口調で話し、撫でるように薬を塗り込んでいく。
時折夢主の体がふるっと動くのは擽ったいのか、痛むのか。
間もなく薬塗りが終わり、夢主は寝巻を元に戻した。

「ありがとうございました……お薬、とても効く気がします」

薬を塗ってもらうと直後から痛みが和らいで感じるのだ。

「いい薬だろ」

自慢げに言って薬を置いた。
斎藤と沖田の着替えも終えると布団が敷かれた。
着替えなど色々と用意されているが、部屋が狭いだけに布団は一組だけである。

「お布団……一つしかないのに……申し訳ないです……」

「ははっ、気にしないでくださいよ!まさか女の人を雑魚寝させて、僕らが仲良く一つの布団に入るわけにも行きませんし」

正座して頭を下げる夢主の前で、揶揄って笑う沖田から飛び出た冗談。斎藤は小さく噴出した。

「沖田君、冗談になっていないと言うより趣味が悪すぎる」

「あはは、僕だって斎藤さんと一緒になんて寝たくありませんよ!生きた心地がしませんもの!」

大きく笑う沖田に斎藤は「全く阿呆臭い」と溜息を吐いた。

「僕だってどうせ入るなら夢主ちゃんのお布団がいいですよ。ちょっと横に入っちゃおうかな~」

「ぇええっ」

先程の沖田の流し目と、肩を出した時に受けた視線を思い出して、夢主は顔を真っ赤にしてしまった。

「お、沖田さん!そんな冗談はいいいいってはいけません!!」

狼狽えて叫ぶ夢主に沖田は「すみません!」と明るく謝り、背を向けてごろりと畳に転がった。

斎藤は騒がしい二人をよそに胡坐を掻いて、「酒が欲しいな」と呟いた。


間もなく夢主が寝入ったのを確認して、沖田はゆっくりと起き上がった。

「さて、斎藤さん。詳しくお話しいたします」

「頼む」

夢主が寝付き、芹沢粛清の詳細が沖田から斎藤に伝えられた。

「平間さんと芸妓の二人は逃げました。まぁ女の人を斬るのは嫌だから良かったですが……」

「それで」

「お梅さんは……駄目でした。芹沢さんにしがみ付いて離れなかったそうです。夢主ちゃんに言えないな」

「言わずとも知っているだろう。お梅と話している様子が、そうだった」

「そうですか……お梅さんの遺体の引き取り手が無くて……それで二、三日は屯所には戻れないかと……」

「そうか」

夢主は一体何をどこまで知っているのだろうか、二人は寝姿を見つめて思い馳せた。
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