15.小さな居場所
夢主名前設定
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「ここは……」
刀を腰から外し、さりげなく左肩を擦る。
左に引っ張られ続け、芹沢にやられた傷が傷んだのだ。
「休息所だ」
「休息所……」
三人が座ったところで、まさかの言葉が飛び出した。
新選組になった後、幹部の皆が家族や妾を住まわせる休息所を持つ事が許されたのを思い出した。
「まさか、私ここに……」
屯所から出て、一人ここに暮らすのか。夢主の不安が膨らむ。
「いや、勘違いするな。ここは俺たちの密会の場に充てるのさ。屯所の中は間者の存在が疑われているのでな、大事な話ができん」
「なるほど……」
安心すると共に感心した。上手く考えるものだ。土方の案に違いない。
「じゃあ、ここは幹部のみなさんがご存知なんですね」
「いや、山南さんは知らない。山南さんはすっかり病んでいるからな……策略に加わる事もないので、と土方さんが決めたのさ」
「そうですか……」
山南以外の幹部は皆知っている、という事だ。
「普段は今まで通り屯所で過ごしてもらう。一人で寝泊りは危険だろう。誰かがずっと付き添うわけにもいかん」
「お前を含めた話がしたい時は、お前をここに連れ出すって寸法さ。よろしくな」
斎藤と永倉、二人の話に夢主は分かりましたと頷いた。
「ただ今日明日は、ここにいてもらう」
理由は……と付け加えたかったが、斎藤は躊躇った。
「分かるな、夢主……」
永倉がその後の言葉を引き継いだ。
夢主は涙を堪えて頷くしかなかった。
夕暮れ時、弁当を持った沖田がこの休息所を訪れた。元気に飛び込んで来て座敷に弁当を三つ置く。
「お待たせしました~!」
沖田も一緒なら一つ足りない。夢主は不思議そうに三つの弁当を見た。
「いや、僕は……」
「あとは仲良くやんな!」
沖田が言い掛けると、永倉が既に草鞋の紐を結んでいた。
「永倉さん、お戻りですか……」
三人も付き添う必要は確かに無く、斎藤と沖田がいつも組んで動いている事を考えれば不自然ではない。
「あぁ。あとは総司と斎藤と……その方がお前も落ち着くだろ。じゃあまた屯所でな」
ニッと笑うと永倉は背を向けて、右手をひらひらと振りながら出て行った。
「永倉さん……なんだかお顔が暗かった気がするんです。私、昨日永倉さんに何かしてしまったのでしょうか……」
「気にするな、何も無い」
また一緒に夜を過ごすと夢主が気を張り詰めてしまうのでは。角屋を出る時に『役目交代』を頼む使いを屯所にやっていたのだ。
それはもちろん沖田宛て。事情を察した沖田はこうして休息所にやって来たのだ。
刀を腰から外し、さりげなく左肩を擦る。
左に引っ張られ続け、芹沢にやられた傷が傷んだのだ。
「休息所だ」
「休息所……」
三人が座ったところで、まさかの言葉が飛び出した。
新選組になった後、幹部の皆が家族や妾を住まわせる休息所を持つ事が許されたのを思い出した。
「まさか、私ここに……」
屯所から出て、一人ここに暮らすのか。夢主の不安が膨らむ。
「いや、勘違いするな。ここは俺たちの密会の場に充てるのさ。屯所の中は間者の存在が疑われているのでな、大事な話ができん」
「なるほど……」
安心すると共に感心した。上手く考えるものだ。土方の案に違いない。
「じゃあ、ここは幹部のみなさんがご存知なんですね」
「いや、山南さんは知らない。山南さんはすっかり病んでいるからな……策略に加わる事もないので、と土方さんが決めたのさ」
「そうですか……」
山南以外の幹部は皆知っている、という事だ。
「普段は今まで通り屯所で過ごしてもらう。一人で寝泊りは危険だろう。誰かがずっと付き添うわけにもいかん」
「お前を含めた話がしたい時は、お前をここに連れ出すって寸法さ。よろしくな」
斎藤と永倉、二人の話に夢主は分かりましたと頷いた。
「ただ今日明日は、ここにいてもらう」
理由は……と付け加えたかったが、斎藤は躊躇った。
「分かるな、夢主……」
永倉がその後の言葉を引き継いだ。
夢主は涙を堪えて頷くしかなかった。
夕暮れ時、弁当を持った沖田がこの休息所を訪れた。元気に飛び込んで来て座敷に弁当を三つ置く。
「お待たせしました~!」
沖田も一緒なら一つ足りない。夢主は不思議そうに三つの弁当を見た。
「いや、僕は……」
「あとは仲良くやんな!」
沖田が言い掛けると、永倉が既に草鞋の紐を結んでいた。
「永倉さん、お戻りですか……」
三人も付き添う必要は確かに無く、斎藤と沖田がいつも組んで動いている事を考えれば不自然ではない。
「あぁ。あとは総司と斎藤と……その方がお前も落ち着くだろ。じゃあまた屯所でな」
ニッと笑うと永倉は背を向けて、右手をひらひらと振りながら出て行った。
「永倉さん……なんだかお顔が暗かった気がするんです。私、昨日永倉さんに何かしてしまったのでしょうか……」
「気にするな、何も無い」
また一緒に夜を過ごすと夢主が気を張り詰めてしまうのでは。角屋を出る時に『役目交代』を頼む使いを屯所にやっていたのだ。
それはもちろん沖田宛て。事情を察した沖田はこうして休息所にやって来たのだ。