【明】実写世界の中で
夢主名前設定
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宗次郎の手で、志々雄真実のもとへ連れて来られた。
夢主は今、甲鉄艦煉獄、海の上にいる。志々雄と向かい合っている。
志々雄はこれから浜辺で抜刀斎を裁くと語っている。招いた客人との束の間の会話を楽しむ志々雄に、夢主は、無関係じゃないだろと詮索されていた。
「お前が抜刀斎とも繋がっているとはな」
「繋がってるなんて……少しだけ、お世話になったことがあるんです。幕末の話です」
「世話にねぇ。宗次郎が神谷道場にいるトコロを見てる。もっと深い仲なんじゃねぇのか、斎藤一だけじゃなく抜刀斎も手玉に取るとは隅に置けねえな」
「そんな関係じゃありませんから……」
剣心に再会したのは神谷道場。
ある日、ある屋敷の開け放たれた門前を通り過ぎた。神谷道場とは知らなかった。偶然掃き掃除をしていた薫が夢主に気付き、呼び止めたのだ。驚く薫の声に呼ばれてやって来た剣心と、夢主は幕末以来の再開をした。こんな近くにいたのかと互いに驚いた。
それから神谷道場には近寄らないようにしていたが、剣心達が観柳邸に向かう直前、夢主は神谷道場を訪れた。恵が気掛かりで放って置けなかったのだ。
屋敷を出ようとしていた剣心が夢主の前で立ち止まった。
「恵さんを、お願いします」
「恵殿をご存じであったか」
「はい。恵さんに、頼みたいことがあるんです」
「恵殿に?……ならば尚更、連れ戻さねばならぬな」
待つしか出来ない夢主が剣心に頭を下げた。丁寧に揃えられた手は、お腹に置かれていた。
まだ皆には伝えていないが、新たな命が育まれている。
何かを感じ取ったのか、剣心は任せておけと力強く頷いて走り出した。
剣心達が観柳邸に乗り込み、恵を救出して戻ると、夢主は以前より神谷道場に顔を出すようになった。
そこを宗次郎が目撃したのだろう。
観柳邸の騒動から間もなく、各地で志々雄真実の暴挙が始まった。
夢主の夫、斎藤一の仕事も忙しくなる。
ある朝、渋い顔で今夜は戻らんぞと告げられた。よくある事だ。いつも通り頷く夢主だが、斎藤が纏う緊張感に、怖さを覚えた。
「いつもの任務と、違うんですね」
「廃坑道の捜索だ」
「廃坑道……」
「志々雄一派の目撃があった。夜、奇襲をかける」
夜の坑道。夢主にも全く分からない未知の場所だ。志々雄一派とは誰を指すのか。
夢主は斎藤を案じて、胸の前で手を握りしめた。
「どうかご武運を……」
「あぁ。心配するな」
斎藤は黙って煙草を咥えた。夢主を案じて火は外でつける気だ。
任務を終えてちゃんと戻るさとでも言うように、斎藤は無言で強い眼差しを夢主に向け、頷いた。
廃坑道で待ち構えていたのは宗次郎。斎藤は無事戻ったが、斎藤が東京に戻ると、夢主が志々雄のもとへ連れ去られていた。
すぐにでも夢主を取り戻しに向かいたいが、私情で動けぬ身。
怒りを堪える斎藤に、抜刀斎処刑の茶番を行うと話が伝わった。
阿呆臭いと思ったが、斎藤は上の指示に従い、変装をして抜刀斎処刑の場に潜り込んだ。
砂浜での処刑、多くの市民が集まるだろう。神谷の娘達も来るに違いない。喧嘩屋がいれば、少しは戦力になるだろか。
志々雄一派と警官や軍が陣取る砂浜。艦の主、志々雄が警官や軍隊がいる浜に下りてくるとは思えない。夢主は恐らく艦に留まるだろう。何としても茶番を成功させて艦に乗り込む。斎藤は誓った。
良く晴れた処刑実施の日。
斎藤は茶番を成功させ、剣心らと共に甲鉄艦煉獄に乗り込み、任務を成功させた。
浜辺から無情にも大砲が撃ち込まれ、大きく揺れた煉獄。その中で死闘を繰り広げた末、志々雄が限界を超えて燃え上ったのだ。
「夢主!」
「一さん、お怪我はっ」
「構うな。急げ、沈むぞ」
傷を負った斎藤は、俺のことは構うなと夢主の無事を確かめた。客人として大切に扱われた様子が窺える。不幸中の幸いだ。
斎藤は「よし」と頷き、脱出の小舟に皆を誘導した。
斎藤達の勝利を知らぬ軍が砲撃を続けている。左之助が甲板で陸に向かって叫んでいた。半分怒りを込めた声で勝利を叫ぶ。白旗のつもりか、上着を振り回していた。
舟が浜辺に辿り着く頃には砲撃も収まっていた。夢主は安堵から腰が抜けたように立ち上がれなくなってしまった。
夢主は斎藤の手を借り、舟から降りた。
沈む甲鉄艦を見守る男達。
何を思うのか、煙草を咥えた斎藤が一人歩み出た。沈む艦を見送り佇んでいる。
幕末、乗船した艦や沈んだ艦を思っているのだろうか。共に闘った仲間や、死んでいった仲間を思い出しているのだろうか。
斎藤の淋しそう背中。夢主は居た堪れなくなり、そっと歩み寄った。
斎藤は己の背中に寄り添う夢主を小さく振り返り、煙草を投げ捨てた。
身重の妻を気遣って見せた、さりげない行動。
京都大火を防ぎ、煉獄を沈めた。今度は大切なものを守り抜いた。町を、民を、夢主を守った。気付いた斎藤の眉間の皺が浅くなった。
「夢主」
「はい」
夢主が返事をすると、斎藤は頑張ったなと労いの笑みを見せた。夢主はお疲れ様でしたと微笑み返す。
「一さんが守ってくれました」
「大袈裟だ」
夢主がお腹に手を当てて、一さんが守ってくれたのはこの子の未来ですと笑って見せた。
明るい未来が待っている。
斎藤もそうだなと応じずにはいられなかった。
お題
「妾・妻奉公の夢主で実写映画版。
剣心との再会は、神谷道場。
武田観柳邸へ乗り込む前に夢主との会話。
(夢主は妊娠中)
京都編では序章での夫の安否を心配する様子や船内で志々雄一派の絡みなど。
伝説編は最終局面を最後まで見届けた設定」
世羅さん、リクエストありがとうございました!
夢主は今、甲鉄艦煉獄、海の上にいる。志々雄と向かい合っている。
志々雄はこれから浜辺で抜刀斎を裁くと語っている。招いた客人との束の間の会話を楽しむ志々雄に、夢主は、無関係じゃないだろと詮索されていた。
「お前が抜刀斎とも繋がっているとはな」
「繋がってるなんて……少しだけ、お世話になったことがあるんです。幕末の話です」
「世話にねぇ。宗次郎が神谷道場にいるトコロを見てる。もっと深い仲なんじゃねぇのか、斎藤一だけじゃなく抜刀斎も手玉に取るとは隅に置けねえな」
「そんな関係じゃありませんから……」
剣心に再会したのは神谷道場。
ある日、ある屋敷の開け放たれた門前を通り過ぎた。神谷道場とは知らなかった。偶然掃き掃除をしていた薫が夢主に気付き、呼び止めたのだ。驚く薫の声に呼ばれてやって来た剣心と、夢主は幕末以来の再開をした。こんな近くにいたのかと互いに驚いた。
それから神谷道場には近寄らないようにしていたが、剣心達が観柳邸に向かう直前、夢主は神谷道場を訪れた。恵が気掛かりで放って置けなかったのだ。
屋敷を出ようとしていた剣心が夢主の前で立ち止まった。
「恵さんを、お願いします」
「恵殿をご存じであったか」
「はい。恵さんに、頼みたいことがあるんです」
「恵殿に?……ならば尚更、連れ戻さねばならぬな」
待つしか出来ない夢主が剣心に頭を下げた。丁寧に揃えられた手は、お腹に置かれていた。
まだ皆には伝えていないが、新たな命が育まれている。
何かを感じ取ったのか、剣心は任せておけと力強く頷いて走り出した。
剣心達が観柳邸に乗り込み、恵を救出して戻ると、夢主は以前より神谷道場に顔を出すようになった。
そこを宗次郎が目撃したのだろう。
観柳邸の騒動から間もなく、各地で志々雄真実の暴挙が始まった。
夢主の夫、斎藤一の仕事も忙しくなる。
ある朝、渋い顔で今夜は戻らんぞと告げられた。よくある事だ。いつも通り頷く夢主だが、斎藤が纏う緊張感に、怖さを覚えた。
「いつもの任務と、違うんですね」
「廃坑道の捜索だ」
「廃坑道……」
「志々雄一派の目撃があった。夜、奇襲をかける」
夜の坑道。夢主にも全く分からない未知の場所だ。志々雄一派とは誰を指すのか。
夢主は斎藤を案じて、胸の前で手を握りしめた。
「どうかご武運を……」
「あぁ。心配するな」
斎藤は黙って煙草を咥えた。夢主を案じて火は外でつける気だ。
任務を終えてちゃんと戻るさとでも言うように、斎藤は無言で強い眼差しを夢主に向け、頷いた。
廃坑道で待ち構えていたのは宗次郎。斎藤は無事戻ったが、斎藤が東京に戻ると、夢主が志々雄のもとへ連れ去られていた。
すぐにでも夢主を取り戻しに向かいたいが、私情で動けぬ身。
怒りを堪える斎藤に、抜刀斎処刑の茶番を行うと話が伝わった。
阿呆臭いと思ったが、斎藤は上の指示に従い、変装をして抜刀斎処刑の場に潜り込んだ。
砂浜での処刑、多くの市民が集まるだろう。神谷の娘達も来るに違いない。喧嘩屋がいれば、少しは戦力になるだろか。
志々雄一派と警官や軍が陣取る砂浜。艦の主、志々雄が警官や軍隊がいる浜に下りてくるとは思えない。夢主は恐らく艦に留まるだろう。何としても茶番を成功させて艦に乗り込む。斎藤は誓った。
良く晴れた処刑実施の日。
斎藤は茶番を成功させ、剣心らと共に甲鉄艦煉獄に乗り込み、任務を成功させた。
浜辺から無情にも大砲が撃ち込まれ、大きく揺れた煉獄。その中で死闘を繰り広げた末、志々雄が限界を超えて燃え上ったのだ。
「夢主!」
「一さん、お怪我はっ」
「構うな。急げ、沈むぞ」
傷を負った斎藤は、俺のことは構うなと夢主の無事を確かめた。客人として大切に扱われた様子が窺える。不幸中の幸いだ。
斎藤は「よし」と頷き、脱出の小舟に皆を誘導した。
斎藤達の勝利を知らぬ軍が砲撃を続けている。左之助が甲板で陸に向かって叫んでいた。半分怒りを込めた声で勝利を叫ぶ。白旗のつもりか、上着を振り回していた。
舟が浜辺に辿り着く頃には砲撃も収まっていた。夢主は安堵から腰が抜けたように立ち上がれなくなってしまった。
夢主は斎藤の手を借り、舟から降りた。
沈む甲鉄艦を見守る男達。
何を思うのか、煙草を咥えた斎藤が一人歩み出た。沈む艦を見送り佇んでいる。
幕末、乗船した艦や沈んだ艦を思っているのだろうか。共に闘った仲間や、死んでいった仲間を思い出しているのだろうか。
斎藤の淋しそう背中。夢主は居た堪れなくなり、そっと歩み寄った。
斎藤は己の背中に寄り添う夢主を小さく振り返り、煙草を投げ捨てた。
身重の妻を気遣って見せた、さりげない行動。
京都大火を防ぎ、煉獄を沈めた。今度は大切なものを守り抜いた。町を、民を、夢主を守った。気付いた斎藤の眉間の皺が浅くなった。
「夢主」
「はい」
夢主が返事をすると、斎藤は頑張ったなと労いの笑みを見せた。夢主はお疲れ様でしたと微笑み返す。
「一さんが守ってくれました」
「大袈裟だ」
夢主がお腹に手を当てて、一さんが守ってくれたのはこの子の未来ですと笑って見せた。
明るい未来が待っている。
斎藤もそうだなと応じずにはいられなかった。
お題
「妾・妻奉公の夢主で実写映画版。
剣心との再会は、神谷道場。
武田観柳邸へ乗り込む前に夢主との会話。
(夢主は妊娠中)
京都編では序章での夫の安否を心配する様子や船内で志々雄一派の絡みなど。
伝説編は最終局面を最後まで見届けた設定」
世羅さん、リクエストありがとうございました!