【幕】【明】香水発売記念・二作品
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斎藤一【移り香】斎藤さん×夢主さん
一さんから不思議な匂いがする。
いつもと違う、煙草とも、一さん自身の匂いとも異なる香り……
「はじめ……さん?」
「どうした」
呼び掛けが、不安に震えた声になってしまう。
不思議そうに首を傾げる姿に、やましさは微塵も感じられない。
優しい眼差しで、声が震えた理由を探っている。
やがて手が伸びてきて、そっと触れられた。
「何があった」
帰って早々、妻がこんな様子では一さんも気が気じゃないだろう。
疑心を抱いて見つめ返す自分が嫌で、笑顔を作った。
微笑みながら首を振るが上手く出来ずに、不自然さが一さんの顔を歪めた。
「どうしたんだ、言ってみろ」
「一さんが……」
優しい手に導かれるまま胸に顔を埋めると、より強く感じてしまった。
いつもと違う、貴方の匂い。
「一さんの……一さんの匂いが違う、違うんです」
「何?」
「匂いが……まるで……」
……誰かに匂いをつけられたみたいです……
大好きな胸に今は包まれたくないと思ってしまう。
俯いて逞しい胸を押し返すと、予想外に「フッ」と力の抜けた笑いが聞こえた。
「これは香水(においみず)の匂いだろう」
「においみず……」
「舶来品と国内で作られたものを比べたんだ。怪しい成分、まぁ阿片の様な中毒性あるものが使われていないか調べたんだよ。外だったが匂いがついたようだな」
初めの違和感も一日中嗅いでいれば慣れてしまうもの。
自分の匂いに鈍感なのは一さんも普通の人と同じようで、肩を持ち上げて自らの匂いを確かめている。
「良かった……私ったら」
「他所の女の匂いだと思ったか」
「そんなっ、それは……その、その通りです……」
護衛で女性の要人を守ったとしても密着せずに済ませる方法を好むだろう。
そばにいて匂いが移るほど長い時間守っていたのか。
都合の良い理由を考えてみるが、最初に浮かんだ恐れが消えなかった。
女の人が一さんに抱きつく姿。帰らないでと、引きとめる人。
「とんだ誤解だ」
「ごめんなさい、でも……ほっとしました」
心からほっとした。
一さんが自分以外の誰かに抱きしめられて抱き返すなんて、思い描いて恐怖しか起こらない。
私以外の誰かを求めないで……
「俺はそんなに信用が無いか」
「そうじゃなくて……一さんは素敵な方です。気付かない内に女の方の気を惹いてると思うから……そんな女の人が沢山いたら一人くらい……一さんを……求めるんじゃないかって……」
「不安にさせたか、単純な任務だったがとんだ残務だな。妻に不安を与える香りを持ち帰ってしまうとは……」
不甲斐ない……
言いながら一さんがそっと唇が重ねて、いつもの煙草の香りが与えられた。
慣れ親しんだほのかな甘苦さ。
「まさかここまで匂いが残るとは思わなかったな」
「お花みたいな香りの一さんも可愛いですね、ふふっ」
「阿呆が、花の香りはお前が纏え」
全て移してやると言わんばかりに、きつく抱きしめられた。
花香と煙草の香り、何より一さんの匂いが加わり、ひとつになって覆われていく。
……もしかしたら、私の匂いも一緒になってるのかな……
首元で一さんが嗅覚を働かせているのを感じる。
少し擽ったくて幸せなむず痒さ。
同じものに包まれる……二人だけが作り出す一つの香りを纏って。
「こうしてると、同じ移り香を持つんです。お互いに……」
……与え合って……
「少し……恥ずかしいですね」
「厭らしいの間違いだろ」
だが、悪くない。
そんな顔で私から衣を奪い去っていく一さん。
肌の上に口づけているけれど、時折り鼻頭を添えて私の香りを確かめているような。
熱い息と唾液で何を味わっているのだろう。
一さんもやがて制服を脱ぎ始めた。
不思議……この僅かな時が私の中で恥じらいを高めていく……
これって期待なのかな……
仕事で得た香りは遠ざかり、一さんそのものを強く感じる。
一糸まとわぬ姿を晒し、二人は互いの匂いの中で溶けあっていった。
──完──
一さんから不思議な匂いがする。
いつもと違う、煙草とも、一さん自身の匂いとも異なる香り……
「はじめ……さん?」
「どうした」
呼び掛けが、不安に震えた声になってしまう。
不思議そうに首を傾げる姿に、やましさは微塵も感じられない。
優しい眼差しで、声が震えた理由を探っている。
やがて手が伸びてきて、そっと触れられた。
「何があった」
帰って早々、妻がこんな様子では一さんも気が気じゃないだろう。
疑心を抱いて見つめ返す自分が嫌で、笑顔を作った。
微笑みながら首を振るが上手く出来ずに、不自然さが一さんの顔を歪めた。
「どうしたんだ、言ってみろ」
「一さんが……」
優しい手に導かれるまま胸に顔を埋めると、より強く感じてしまった。
いつもと違う、貴方の匂い。
「一さんの……一さんの匂いが違う、違うんです」
「何?」
「匂いが……まるで……」
……誰かに匂いをつけられたみたいです……
大好きな胸に今は包まれたくないと思ってしまう。
俯いて逞しい胸を押し返すと、予想外に「フッ」と力の抜けた笑いが聞こえた。
「これは香水(においみず)の匂いだろう」
「においみず……」
「舶来品と国内で作られたものを比べたんだ。怪しい成分、まぁ阿片の様な中毒性あるものが使われていないか調べたんだよ。外だったが匂いがついたようだな」
初めの違和感も一日中嗅いでいれば慣れてしまうもの。
自分の匂いに鈍感なのは一さんも普通の人と同じようで、肩を持ち上げて自らの匂いを確かめている。
「良かった……私ったら」
「他所の女の匂いだと思ったか」
「そんなっ、それは……その、その通りです……」
護衛で女性の要人を守ったとしても密着せずに済ませる方法を好むだろう。
そばにいて匂いが移るほど長い時間守っていたのか。
都合の良い理由を考えてみるが、最初に浮かんだ恐れが消えなかった。
女の人が一さんに抱きつく姿。帰らないでと、引きとめる人。
「とんだ誤解だ」
「ごめんなさい、でも……ほっとしました」
心からほっとした。
一さんが自分以外の誰かに抱きしめられて抱き返すなんて、思い描いて恐怖しか起こらない。
私以外の誰かを求めないで……
「俺はそんなに信用が無いか」
「そうじゃなくて……一さんは素敵な方です。気付かない内に女の方の気を惹いてると思うから……そんな女の人が沢山いたら一人くらい……一さんを……求めるんじゃないかって……」
「不安にさせたか、単純な任務だったがとんだ残務だな。妻に不安を与える香りを持ち帰ってしまうとは……」
不甲斐ない……
言いながら一さんがそっと唇が重ねて、いつもの煙草の香りが与えられた。
慣れ親しんだほのかな甘苦さ。
「まさかここまで匂いが残るとは思わなかったな」
「お花みたいな香りの一さんも可愛いですね、ふふっ」
「阿呆が、花の香りはお前が纏え」
全て移してやると言わんばかりに、きつく抱きしめられた。
花香と煙草の香り、何より一さんの匂いが加わり、ひとつになって覆われていく。
……もしかしたら、私の匂いも一緒になってるのかな……
首元で一さんが嗅覚を働かせているのを感じる。
少し擽ったくて幸せなむず痒さ。
同じものに包まれる……二人だけが作り出す一つの香りを纏って。
「こうしてると、同じ移り香を持つんです。お互いに……」
……与え合って……
「少し……恥ずかしいですね」
「厭らしいの間違いだろ」
だが、悪くない。
そんな顔で私から衣を奪い去っていく一さん。
肌の上に口づけているけれど、時折り鼻頭を添えて私の香りを確かめているような。
熱い息と唾液で何を味わっているのだろう。
一さんもやがて制服を脱ぎ始めた。
不思議……この僅かな時が私の中で恥じらいを高めていく……
これって期待なのかな……
仕事で得た香りは遠ざかり、一さんそのものを強く感じる。
一糸まとわぬ姿を晒し、二人は互いの匂いの中で溶けあっていった。
──完──