77.今はまだ
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斎藤がようやく志々雄の間に辿り着いた時、部屋は空だった。
「既に始まっているか」
扉は拳で開けたらしく破壊されている。短気な相楽左之助の仕業だ。
壊れた戸の傍には血の痕がある。
「抜刀斎の血か」
二連戦で相当な手傷を負ったようだ。それでもまだ闘えるはず。
斎藤は部屋の奥を見た。
もう一つの扉が開いている。その先は最後の闘場へ続く道。
一歩進む度に腿を襲う鈍い痛みを考えれば時間をかけて進みたいが、闘いが始まったならば一刻も早く追いつかねば。
「持ち堪えろよ、抜刀斎」
斎藤は決戦の場へ向けて歩み出した。
やがて見えてきた甲鉄の扉。黒く巨大な扉は開いたままだ。
……まぁ、閉じていようが斬鉄は可能だが……
斬鉄の衝撃は響き存在が悟られ、傷にも障る。
開放されているのは幸い、斎藤は運はこちらにあると断じた。
更に進むと扉の向こうが見えてきた。
……奴らがいる……
身構えるが、道の先にはもう一つの扉があった。
甲鉄の扉から続く細長い石造りの橋、その先で木造りの門がしっかりと閉ざされていた。
姿を見られる恐れはない。気配を消して飛び込む機会を窺うには、あの場所が最適。
だが志々雄は侮れない。暫く離れたこの甲鉄の扉の影で待機すべきだろう。
機に乗じて向こうの扉まで前進、隙を逃さず牙突を放つ。
斎藤は全てを決し、剣心と志々雄の闘いに全神経を集中した。
息を潜めて戦闘の状況を余さず掴む。
その時が来るまで確実に気配を消して。
斎藤の意識の先で闘いは続き、中の者達はぶつかり合う二人にすっかり気を取られていた。
一人場外から冷静に状況を把握する斎藤は、闘いの流れが動くのを感じた。
尋常ならざる叫びが聞こえた。抜刀斎の声。おかしい、斬られた程度で叫ぶ男ではない。中で何が起きている。
だが優勢は志々雄。丁度良い、隙が生まれる。
更に咆哮と激しい剣戟の音が繰り返される。
それから、一つの爆音が響いた。
――紅蓮腕、抜刀斎がやられたか。
技を放った志々雄の声が闘場の外まで届いた。
抜刀斎の剣気が薄れる。
しかし抜刀斎も修羅場を越えてきた身だ、この程度で終わるまい。そのうち立ち上がる。
だがそれまで待つ道理無し、今が好機、ここで終わらせる!
側近の男が勝利を確信し歓喜の声を上げている。
ありがたい、悟られずに抜刀できる。
斎藤は刃を水平に、切っ先を闘場に向けた。
扉を破壊しそのまま志々雄を殺る。
一撃必殺、狙うは頭!!
斎藤が牙突を繰り出した時、剣心は気を失っていた。
「志々雄真実、その首もらった!!!」
確実に人体の急所を突く、頭部の要、額。
しかし刃に手応えは無かった。
伝わってきたのは硬い感覚、切っ先は志々雄の額にある鉢金に止められていた。
「ちっ」
隙を突いたつもりが、敵もこちらの行動を読んでいた。
奇襲は策を巡らされ防がれた。
おまけに手負いの太腿に一太刀受けてしまった。
傷や急所を狙うは戦いの定石。
これで俺は圧倒的に不利な状況に追い込まれた。
だが、お前や抜刀斎に奥の手があるように俺にも奥の手はある!!
牙突零式、射程距離零の最大攻撃!!!
俺は確かに発動した。
手応えは、分からない。
激しい熱か痛みか、体を襲う。
攻撃を受けた。
───俺は何故か、夢を見た。
「既に始まっているか」
扉は拳で開けたらしく破壊されている。短気な相楽左之助の仕業だ。
壊れた戸の傍には血の痕がある。
「抜刀斎の血か」
二連戦で相当な手傷を負ったようだ。それでもまだ闘えるはず。
斎藤は部屋の奥を見た。
もう一つの扉が開いている。その先は最後の闘場へ続く道。
一歩進む度に腿を襲う鈍い痛みを考えれば時間をかけて進みたいが、闘いが始まったならば一刻も早く追いつかねば。
「持ち堪えろよ、抜刀斎」
斎藤は決戦の場へ向けて歩み出した。
やがて見えてきた甲鉄の扉。黒く巨大な扉は開いたままだ。
……まぁ、閉じていようが斬鉄は可能だが……
斬鉄の衝撃は響き存在が悟られ、傷にも障る。
開放されているのは幸い、斎藤は運はこちらにあると断じた。
更に進むと扉の向こうが見えてきた。
……奴らがいる……
身構えるが、道の先にはもう一つの扉があった。
甲鉄の扉から続く細長い石造りの橋、その先で木造りの門がしっかりと閉ざされていた。
姿を見られる恐れはない。気配を消して飛び込む機会を窺うには、あの場所が最適。
だが志々雄は侮れない。暫く離れたこの甲鉄の扉の影で待機すべきだろう。
機に乗じて向こうの扉まで前進、隙を逃さず牙突を放つ。
斎藤は全てを決し、剣心と志々雄の闘いに全神経を集中した。
息を潜めて戦闘の状況を余さず掴む。
その時が来るまで確実に気配を消して。
斎藤の意識の先で闘いは続き、中の者達はぶつかり合う二人にすっかり気を取られていた。
一人場外から冷静に状況を把握する斎藤は、闘いの流れが動くのを感じた。
尋常ならざる叫びが聞こえた。抜刀斎の声。おかしい、斬られた程度で叫ぶ男ではない。中で何が起きている。
だが優勢は志々雄。丁度良い、隙が生まれる。
更に咆哮と激しい剣戟の音が繰り返される。
それから、一つの爆音が響いた。
――紅蓮腕、抜刀斎がやられたか。
技を放った志々雄の声が闘場の外まで届いた。
抜刀斎の剣気が薄れる。
しかし抜刀斎も修羅場を越えてきた身だ、この程度で終わるまい。そのうち立ち上がる。
だがそれまで待つ道理無し、今が好機、ここで終わらせる!
側近の男が勝利を確信し歓喜の声を上げている。
ありがたい、悟られずに抜刀できる。
斎藤は刃を水平に、切っ先を闘場に向けた。
扉を破壊しそのまま志々雄を殺る。
一撃必殺、狙うは頭!!
斎藤が牙突を繰り出した時、剣心は気を失っていた。
「志々雄真実、その首もらった!!!」
確実に人体の急所を突く、頭部の要、額。
しかし刃に手応えは無かった。
伝わってきたのは硬い感覚、切っ先は志々雄の額にある鉢金に止められていた。
「ちっ」
隙を突いたつもりが、敵もこちらの行動を読んでいた。
奇襲は策を巡らされ防がれた。
おまけに手負いの太腿に一太刀受けてしまった。
傷や急所を狙うは戦いの定石。
これで俺は圧倒的に不利な状況に追い込まれた。
だが、お前や抜刀斎に奥の手があるように俺にも奥の手はある!!
牙突零式、射程距離零の最大攻撃!!!
俺は確かに発動した。
手応えは、分からない。
激しい熱か痛みか、体を襲う。
攻撃を受けた。
───俺は何故か、夢を見た。