73.露の間、決戦間近
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煉獄でアジトで待つと言い残した志々雄は物見斥候を送り、斎藤達の動きを見張っていた。
葵屋を警官が訪問、出発は明朝まで無いと情報を収集した。
「だ、そうだぜ。夢主」
「……そうですか」
夢主は志々雄の閨にいた。由美、宗次郎、方治と志々雄の信頼厚い者が集まっている。
当然ながら居心地は悪かった。
この砦に来て以来、方治からは厳しい視線が向けられ続けている。志々雄からは挑発的な視線。由美とはお腹の子を秘め事にしている間柄、皆が集まっていると緊張してしまう。
「あの、部屋に戻っても構いませんか。緋村さん達が来るのが明日なら、今日はもう……」
私を見張る理由がありません。
張り詰めた空気から逃れたい、目で訴えると志々雄はあっさり了承した。
「構わねぇぜ」
「あ、ありがとうございます!」
良かった、と安堵の表情で夢主はいそいそと部屋を出て行った。
「よろしいので、志々雄様」
「いいさ、全て知ってましたって顔しやがって。本当に明日なんだろう、奴らが来るのは」
「油断は禁物です。しかしあの娘は一体」
「気になるならお前も話してみればいい、随分と避けているな」
「関わる必要がありませんので」
「フッ、まぁ好きにすればいいさ。問題は明日だ。奴らとどう接触させるか」
「会わせる気ですか、なりません、こちらの情報が洩れ兼ねません!」
「そう熱くなるな。手は考えるさ」
志々雄と方治が夢主の処遇に熱くなる傍で、宗次郎は相変わらずの笑顔を保ち、由美は困り顔で見守っていた。
「明日……どうなるんだろう」
部屋に戻った夢主は溜め息を繰り返していた。
自由に動けるのは今日が最後。
明日は強固な見張りが付くか、志々雄のそばに控えさせられるだろう。
斎藤が到着した後の行動を考えてみる。
正面から導かれ安慈和尚の部屋へ、宇水と闘い単独行動、倒れた蒼紫の元を訪れ、最後は志々雄の闘場へ。
一人で動く斎藤と接触したい。しかし斎藤の経路が分からず、夢主自身アジト内の把握が不十分。
今更足掻いても仕方ない、大人しくしていなければ。きっと明日、好機は訪れる。
「……蒼紫様は……」
中枢部分には立ち入っていなくとも、部屋から外へ通じる道は知っているはず。
砦の外、蒼紫は鳥居にもたれて京の町を見下ろしていた、そんな光景を思い出した。
今は砦の中も外も厳戒態勢、だが明日混乱が起きれば事は変わる。
「聞いてみても……いいかもしれない……」
蒼紫を訪ねる、勇気は要るが唯一起こせる行動。夢主は意を決して隣の部屋の扉をノックした。
反応がない。
扉の前にはノックした手が浮いたまま、部屋の中の気配を探ってみる。
「いないのかな……」
恐る恐る二度目のノックをした。
やはり反応はない。
諦めて帰ろう、いやもう一度だけ……最後のつもりでノックを試みた手が空気を叩いた。
「あ……」
「……何か用か」
音もなく扉が開き、蒼紫が夢主を見下ろした。
無感情の瞳に修羅の文字が思い浮ぶ。
外への出口を訊ねなければ、考えるほど緊張で喉が詰まった。
「っ、あ、あの……」
「用が無いなら来るな」
蒼紫が扉を閉めようとし、夢主は咄嗟に手で止めた。
「あのっ、緋村さんを……待っているのですか」
違う、口をついて出た言葉は夢主は聞きたい事ではなかった。
「……抜刀斎だ。貴様には関係ない」
蒼紫の言う通りだ。夢主は口を閉ざした。
早く聞かなければ扉は閉じてしまう。
「その、このアジトの……」
外に出る道を教えて欲しい。
夢主の望みに気付いたのか、蒼紫は腕を掴んで部屋に引き入れた。
志々雄の手下に聞かれてはまずい話。もう少し警戒心を抱けと蒼紫は威圧的な視線を向けた。
「馬鹿か貴様」
「すみません、誰もいないから……」
「見えなくとも目や耳はある、そう考えろ」
「じゃあ部屋の中も……」
「ここは何もない。あれば俺が排除している」
部下を張りつけても殺されて終わりと悟る志々雄も方治も蒼紫を自由にしていた。
葵屋を警官が訪問、出発は明朝まで無いと情報を収集した。
「だ、そうだぜ。夢主」
「……そうですか」
夢主は志々雄の閨にいた。由美、宗次郎、方治と志々雄の信頼厚い者が集まっている。
当然ながら居心地は悪かった。
この砦に来て以来、方治からは厳しい視線が向けられ続けている。志々雄からは挑発的な視線。由美とはお腹の子を秘め事にしている間柄、皆が集まっていると緊張してしまう。
「あの、部屋に戻っても構いませんか。緋村さん達が来るのが明日なら、今日はもう……」
私を見張る理由がありません。
張り詰めた空気から逃れたい、目で訴えると志々雄はあっさり了承した。
「構わねぇぜ」
「あ、ありがとうございます!」
良かった、と安堵の表情で夢主はいそいそと部屋を出て行った。
「よろしいので、志々雄様」
「いいさ、全て知ってましたって顔しやがって。本当に明日なんだろう、奴らが来るのは」
「油断は禁物です。しかしあの娘は一体」
「気になるならお前も話してみればいい、随分と避けているな」
「関わる必要がありませんので」
「フッ、まぁ好きにすればいいさ。問題は明日だ。奴らとどう接触させるか」
「会わせる気ですか、なりません、こちらの情報が洩れ兼ねません!」
「そう熱くなるな。手は考えるさ」
志々雄と方治が夢主の処遇に熱くなる傍で、宗次郎は相変わらずの笑顔を保ち、由美は困り顔で見守っていた。
「明日……どうなるんだろう」
部屋に戻った夢主は溜め息を繰り返していた。
自由に動けるのは今日が最後。
明日は強固な見張りが付くか、志々雄のそばに控えさせられるだろう。
斎藤が到着した後の行動を考えてみる。
正面から導かれ安慈和尚の部屋へ、宇水と闘い単独行動、倒れた蒼紫の元を訪れ、最後は志々雄の闘場へ。
一人で動く斎藤と接触したい。しかし斎藤の経路が分からず、夢主自身アジト内の把握が不十分。
今更足掻いても仕方ない、大人しくしていなければ。きっと明日、好機は訪れる。
「……蒼紫様は……」
中枢部分には立ち入っていなくとも、部屋から外へ通じる道は知っているはず。
砦の外、蒼紫は鳥居にもたれて京の町を見下ろしていた、そんな光景を思い出した。
今は砦の中も外も厳戒態勢、だが明日混乱が起きれば事は変わる。
「聞いてみても……いいかもしれない……」
蒼紫を訪ねる、勇気は要るが唯一起こせる行動。夢主は意を決して隣の部屋の扉をノックした。
反応がない。
扉の前にはノックした手が浮いたまま、部屋の中の気配を探ってみる。
「いないのかな……」
恐る恐る二度目のノックをした。
やはり反応はない。
諦めて帰ろう、いやもう一度だけ……最後のつもりでノックを試みた手が空気を叩いた。
「あ……」
「……何か用か」
音もなく扉が開き、蒼紫が夢主を見下ろした。
無感情の瞳に修羅の文字が思い浮ぶ。
外への出口を訊ねなければ、考えるほど緊張で喉が詰まった。
「っ、あ、あの……」
「用が無いなら来るな」
蒼紫が扉を閉めようとし、夢主は咄嗟に手で止めた。
「あのっ、緋村さんを……待っているのですか」
違う、口をついて出た言葉は夢主は聞きたい事ではなかった。
「……抜刀斎だ。貴様には関係ない」
蒼紫の言う通りだ。夢主は口を閉ざした。
早く聞かなければ扉は閉じてしまう。
「その、このアジトの……」
外に出る道を教えて欲しい。
夢主の望みに気付いたのか、蒼紫は腕を掴んで部屋に引き入れた。
志々雄の手下に聞かれてはまずい話。もう少し警戒心を抱けと蒼紫は威圧的な視線を向けた。
「馬鹿か貴様」
「すみません、誰もいないから……」
「見えなくとも目や耳はある、そう考えろ」
「じゃあ部屋の中も……」
「ここは何もない。あれば俺が排除している」
部下を張りつけても殺されて終わりと悟る志々雄も方治も蒼紫を自由にしていた。