59.炸裂間際
夢主名前設定
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赤べこで起きた吐き気の不安を取り除こうと、夢主は恵を訪ねた。
「悪阻で間違いないわね。臭いのせいよ、影響が出ない人もいるし人によるけれど、夢主さんは食べ物の臭いに反応しちゃったのね」
「臭い……」
「そう。その日の体調にもよるでしょうし、長く続くかもしれないし明日には終わるかもしれないし。残念ながらそこまでは分からないわ」
「そうですか……でもありがとうございます、恵さんにはっきり言っていただいてスッキリしました」
悪阻以外の原因は思い当たらなかったが、玄人に断言されると気が落ち着く。
夢主は体を緩ませ、ほぅっと息を吐いた。
「あと、体温が少し上がっているみたいね。まぁ心配ないわ、身重の体ゆえね」
斎藤が額を当てたのは微熱が理由だ。
本人も意識しない体温の変化を感じ取れたのは普段の状態を良く知り、常に気に掛けていたから。
「さすが……」
「ん?」
「いぇっ、何でもっ!」
いつも気に掛けてくれている、離れていても体の温もりを忘れることなく。そう思うと嬉しくて仕方がない。
不思議そうに首を傾げる恵の前で、夢主はにこにこと笑顔が絶えなかった。
軽い足取りで沖田の屋敷へ戻ると小さな客人がいた。
弥彦が神谷道場の使いで訪れていたのだ。
夢主を見つけるなり「あ、来たきた」と揃って手招く。
「宴会?」
「あぁ、左之助が主催だぜ、珍しいこともあるもんだよな。妙と燕も来るんだ。赤べこの連中が来るんだからお前も誘おうって薫がよ」
「薫さんが」
「絵師の月岡津南って男も来るんだぜ、左之助の古い友達だとか」
「月岡さん……」
妙に頼まれて月岡津南の錦絵を買ったことがある。
月岡津南こと月岡克浩は左之助の赤報隊時代の仲間だ。
道場での宴会と言うことは今夜、月岡が動くのだろう。
どうすべきか意見を求めて沖田の顔色を見てしまう。
「いいんじゃありませんか、お酒が飲めなくても気の知れた皆さんと息抜きになるでしょう」
「お前、酒飲めねぇのか」
「それが……はい、元々弱いんですけど今は飲めなくて……体に障るので」
「そっか。でも料理も美味いぜ、気晴らしに来いよ」
「どうしよう……」
「夢主ちゃんが出かけるなら僕もちょっと行きたい場所があるんですよ、行ってみてはどうですか」
夢主は「あっ」と顔を上げた。
常日頃、沖田を頼りにしているが、ここ暫くは縛り付けると言っていいほど甘えている。
夜は特にそばにいてくれる。
少し頼り過ぎていたかもしれない。
「行って……みようかな」
「弥彦君は頼りになりますし、左之助さんもいるんでしょう、帰りもしっかり送り届けてくれるんですから大丈夫でしょう」
「よしっ、決まりだな!」
沖田の後押しを受けて、夢主は久しぶりに神谷道場の敷地を踏んだ。
誘いに来た弥彦もしっかり役目を果たせたと嬉しそうだ。
中には長らく顔を見ていない左之助がいる。
変わらぬ顔で出迎えてくれるだろうか。
月岡の企みを知っているのも顔に出してはいけない。
緊張の面持ちで中を覗くが、心配は一気に吹き飛んだ。
薫が笑顔で夢主を道場に引き入れ、妙と燕が共に座ってくれる。恵がいれば心強いが診療所が忙しいのでは仕方がない。
何かを知っているのかいないのか、剣心はにこやかに微笑んでくれる。
夢主は安心して酒宴の席を楽しむことが出来た。
「悪阻で間違いないわね。臭いのせいよ、影響が出ない人もいるし人によるけれど、夢主さんは食べ物の臭いに反応しちゃったのね」
「臭い……」
「そう。その日の体調にもよるでしょうし、長く続くかもしれないし明日には終わるかもしれないし。残念ながらそこまでは分からないわ」
「そうですか……でもありがとうございます、恵さんにはっきり言っていただいてスッキリしました」
悪阻以外の原因は思い当たらなかったが、玄人に断言されると気が落ち着く。
夢主は体を緩ませ、ほぅっと息を吐いた。
「あと、体温が少し上がっているみたいね。まぁ心配ないわ、身重の体ゆえね」
斎藤が額を当てたのは微熱が理由だ。
本人も意識しない体温の変化を感じ取れたのは普段の状態を良く知り、常に気に掛けていたから。
「さすが……」
「ん?」
「いぇっ、何でもっ!」
いつも気に掛けてくれている、離れていても体の温もりを忘れることなく。そう思うと嬉しくて仕方がない。
不思議そうに首を傾げる恵の前で、夢主はにこにこと笑顔が絶えなかった。
軽い足取りで沖田の屋敷へ戻ると小さな客人がいた。
弥彦が神谷道場の使いで訪れていたのだ。
夢主を見つけるなり「あ、来たきた」と揃って手招く。
「宴会?」
「あぁ、左之助が主催だぜ、珍しいこともあるもんだよな。妙と燕も来るんだ。赤べこの連中が来るんだからお前も誘おうって薫がよ」
「薫さんが」
「絵師の月岡津南って男も来るんだぜ、左之助の古い友達だとか」
「月岡さん……」
妙に頼まれて月岡津南の錦絵を買ったことがある。
月岡津南こと月岡克浩は左之助の赤報隊時代の仲間だ。
道場での宴会と言うことは今夜、月岡が動くのだろう。
どうすべきか意見を求めて沖田の顔色を見てしまう。
「いいんじゃありませんか、お酒が飲めなくても気の知れた皆さんと息抜きになるでしょう」
「お前、酒飲めねぇのか」
「それが……はい、元々弱いんですけど今は飲めなくて……体に障るので」
「そっか。でも料理も美味いぜ、気晴らしに来いよ」
「どうしよう……」
「夢主ちゃんが出かけるなら僕もちょっと行きたい場所があるんですよ、行ってみてはどうですか」
夢主は「あっ」と顔を上げた。
常日頃、沖田を頼りにしているが、ここ暫くは縛り付けると言っていいほど甘えている。
夜は特にそばにいてくれる。
少し頼り過ぎていたかもしれない。
「行って……みようかな」
「弥彦君は頼りになりますし、左之助さんもいるんでしょう、帰りもしっかり送り届けてくれるんですから大丈夫でしょう」
「よしっ、決まりだな!」
沖田の後押しを受けて、夢主は久しぶりに神谷道場の敷地を踏んだ。
誘いに来た弥彦もしっかり役目を果たせたと嬉しそうだ。
中には長らく顔を見ていない左之助がいる。
変わらぬ顔で出迎えてくれるだろうか。
月岡の企みを知っているのも顔に出してはいけない。
緊張の面持ちで中を覗くが、心配は一気に吹き飛んだ。
薫が笑顔で夢主を道場に引き入れ、妙と燕が共に座ってくれる。恵がいれば心強いが診療所が忙しいのでは仕方がない。
何かを知っているのかいないのか、剣心はにこやかに微笑んでくれる。
夢主は安心して酒宴の席を楽しむことが出来た。