1.混乱の時代へ
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京の外れにある壬生村。
ある屋敷の一角に作られた道場から、威勢のいい声と木刀が激しくぶつかる音が響いていた。
「やーーーっ!突きぃっ!」
「ふんっ!」
力任せに振り下ろされた木刀を青年は身を屈めてかわし、そのまま鋭い突きを見せた。
何とか体をよじって逃れた相手の男に向けて更に木刀を突き出す。踏み込んだ足が大きな音を鳴らした。
「まだまだぁっ、二、三段突きぃーーーーー!」
鋭く響く声と共に、高く乾いた音が響いて一本の木刀が床に落ちる。
「ったく、総司の三段突きにはかなわねぇな」
降参だとばかりに両の手を顔の前でひらひら動かしながら、肉付きの良い大柄な男が言った。
「原田さんはいつも勢いだけなんだから」
カラカラと笑って応える小柄な丸い顔の青年。沖田総司だ。
筋肉質で体の大きな原田左之助と向かい合うと、その体の小ささがよく分かる。
本当に原田の木刀を叩き落したのはこの男かと目を疑うほどの体格差だ。
稽古を見ていた試衛館の面々が、そんな二人のやり取りに、どっと笑い声を上げた。
「全くその通りだな、左之!」
原田と最も仲の良い男、永倉新八が揶揄った。
原田に負けず劣らず背丈のある伊達男だ。
二人はよく筋肉自慢をしあっている。互いに似たようながっしりとした体の持ち主だ。
不意に男達の並びの一番端に座る男が道場の外に顔を向けた。
斎藤一、背丈だけで言えば原田や永倉より高いかもしれない。切れ長の鋭い目をした男だ。
「斎藤さん……」
「あぁ」
同じく何かを感じた沖田が目を合わせた。
斎藤、沖田を先頭に、男達は庭を走り抜けて、屋敷の勝手口に向かった。
辿り着くと一斉に足が止まる。
皆の視線が集まる先、侵入者かと思えば、そこには見知らぬ女が倒れていた。
「誰だ、こいつは」
「女……だが、何というか……」
ざわざわと遠くから様子を窺うが、倒れた女が動く気配はない。
沖田が近付いてそっと首筋に触れた。斎藤も傍に寄って顔色を窺った。
「大丈夫、意識がないだけですね」
「大丈夫……か。見たことのない……」
斎藤が姿形を確認する為、女の体の上で目を動かしていると、原田と永倉も近寄ってきた。
「けったいな格好してやがるぜ」
着物とは全く違う、帯も合わせもない衣服を身に纏っている。
上下繋がった見知らぬ衣、裾は膝までしかなく、袖は肘にも達していない。
白地の衣服には控えめな愛らしい青い小花が全体に描かれていた。
「足も腕も丸見えだぜ。こりゃ異人の服でももっと隠れてるぞ」
「原田さんはそういう所ばかりに目が行くのですね……」
沖田は呆れて言った。
原田が「何を!」と言い返そうとした時、門番に確認を取りに出ていた藤堂平助が戻ってきた。
「誰も通ってないってよ!どうする、近藤さんも土方さんもいないぜ」
「ひとまず座敷に運ぼう。このままでは不味いだろう」
永倉の指示で、幹部が集まる時に使う部屋へ女を運ぶことになった。
座敷に運ぶ為、誰に言われるでもなく歳が最下の斎藤が女を抱える。体が浮くと、女の長い髪がさらりと流れた。
斎藤は歩きながら、童のように軽く華奢な女の血の気のない顔をじっと見つめた。
直接触れる女の膝裏がひんやりと冷たく、季節はずれの暑さに火照った己の腕にはとても心地良かった。
ある屋敷の一角に作られた道場から、威勢のいい声と木刀が激しくぶつかる音が響いていた。
「やーーーっ!突きぃっ!」
「ふんっ!」
力任せに振り下ろされた木刀を青年は身を屈めてかわし、そのまま鋭い突きを見せた。
何とか体をよじって逃れた相手の男に向けて更に木刀を突き出す。踏み込んだ足が大きな音を鳴らした。
「まだまだぁっ、二、三段突きぃーーーーー!」
鋭く響く声と共に、高く乾いた音が響いて一本の木刀が床に落ちる。
「ったく、総司の三段突きにはかなわねぇな」
降参だとばかりに両の手を顔の前でひらひら動かしながら、肉付きの良い大柄な男が言った。
「原田さんはいつも勢いだけなんだから」
カラカラと笑って応える小柄な丸い顔の青年。沖田総司だ。
筋肉質で体の大きな原田左之助と向かい合うと、その体の小ささがよく分かる。
本当に原田の木刀を叩き落したのはこの男かと目を疑うほどの体格差だ。
稽古を見ていた試衛館の面々が、そんな二人のやり取りに、どっと笑い声を上げた。
「全くその通りだな、左之!」
原田と最も仲の良い男、永倉新八が揶揄った。
原田に負けず劣らず背丈のある伊達男だ。
二人はよく筋肉自慢をしあっている。互いに似たようながっしりとした体の持ち主だ。
不意に男達の並びの一番端に座る男が道場の外に顔を向けた。
斎藤一、背丈だけで言えば原田や永倉より高いかもしれない。切れ長の鋭い目をした男だ。
「斎藤さん……」
「あぁ」
同じく何かを感じた沖田が目を合わせた。
斎藤、沖田を先頭に、男達は庭を走り抜けて、屋敷の勝手口に向かった。
辿り着くと一斉に足が止まる。
皆の視線が集まる先、侵入者かと思えば、そこには見知らぬ女が倒れていた。
「誰だ、こいつは」
「女……だが、何というか……」
ざわざわと遠くから様子を窺うが、倒れた女が動く気配はない。
沖田が近付いてそっと首筋に触れた。斎藤も傍に寄って顔色を窺った。
「大丈夫、意識がないだけですね」
「大丈夫……か。見たことのない……」
斎藤が姿形を確認する為、女の体の上で目を動かしていると、原田と永倉も近寄ってきた。
「けったいな格好してやがるぜ」
着物とは全く違う、帯も合わせもない衣服を身に纏っている。
上下繋がった見知らぬ衣、裾は膝までしかなく、袖は肘にも達していない。
白地の衣服には控えめな愛らしい青い小花が全体に描かれていた。
「足も腕も丸見えだぜ。こりゃ異人の服でももっと隠れてるぞ」
「原田さんはそういう所ばかりに目が行くのですね……」
沖田は呆れて言った。
原田が「何を!」と言い返そうとした時、門番に確認を取りに出ていた藤堂平助が戻ってきた。
「誰も通ってないってよ!どうする、近藤さんも土方さんもいないぜ」
「ひとまず座敷に運ぼう。このままでは不味いだろう」
永倉の指示で、幹部が集まる時に使う部屋へ女を運ぶことになった。
座敷に運ぶ為、誰に言われるでもなく歳が最下の斎藤が女を抱える。体が浮くと、女の長い髪がさらりと流れた。
斎藤は歩きながら、童のように軽く華奢な女の血の気のない顔をじっと見つめた。
直接触れる女の膝裏がひんやりと冷たく、季節はずれの暑さに火照った己の腕にはとても心地良かった。
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