小ネタ箱(悟空関係)
でかいヘビによって地球に放り込まれて以来、随分と時が経った。
その年月に比例するかのように、地球(特に西の都、つまるところはブルマ)のお約束である、バカみてえに稚拙な、時節のお祭り騒ぎに知らず知らず馴染みつつある己が気に入らなかった……。
勿論オレが祭を楽しむ事など無い。
しかし、祭の知識は厭でも増えてゆくのだった。
例えば、ハロウィンとかいう変なカボチャ祭り……。
あれは本来、ガキ集団が主役になってアレやコレやするのであって、いい大人がチャラチャラと仮装騒ぎするものでは無いとオレは心得ている。
それを今年は、ブルマに指摘してやったのだ。
なぜならあのアマ、“足を矢で射抜かれ、性的に犯されかけたウサギ娘”とかいう設定の際どい格好をして、「あんたはボウガンを持って、黒い騎士の格好でキメるのよ」とか何とか、例によって訳の分からない企てを押し付けてくるからオレは頭にきて、
「お前今年でいくつになるんだ?いい加減恥を知れ、バカ野郎」
と忠告してやったんだ。
オレとしては、親切をしたつもりだった。
そんな事ではお前、世間に笑われちまうぞ?もっと行動を慎んだらどうだ、という思いやりをこめたつもりだったのにブルマのヤツ、
「もういい!私、ハロウィンパーティーに1人で行くから!夕飯も向こうで食べてくるから!あんたのゴハンは庭にあるから、適当に焼いて食べてれば~!?」
と怒鳴って家を出ていったのだ。
相変わらず訳のわからん女だと思う。
オレとブタだけが残された。
さて、庭を見ると、大小の黄色い固体が滅茶苦茶に散らばっていた。ブタに訊くと、全てが生のカボチャの破片だと言う。さらに調べてみると、巨大なカボチャがひとつだけ、無傷の状態で庭のすみにに転がっていた。
「なあ、ブルマのヤツよう、ひょっとして、お前の為にカボチャの料理作ろうとしてたんじゃないかなあ?」
「……。オイちょっと待て。その“お前”というのは、まさかオレに向けた呼称じゃねえだろうな?」
「……え?いや、あの、……え?」
「お前はそんなにオレを怒らせたいのか。殺されたいのか?常々思うが、お前は一体なんなんだ?そうか究極のマゾブタか」
「……」
オレはブタに命じて散らかったカボチャを一ヵ所に集めさせた。ブタは空腹と疲労で、しまいには泣きだしたがオレは構わず指示を続けた。
「よし、今から焼くからそこを退け」
「ちょっと待ってくれ……足がつっちまって動け……ちょっ!?ちょっちょっやめて止めて!!ぎゃーーお母ちゃーーん!!」
ぼーーーん
爆風によってうまいこと吹っ飛ばされ、ブタは一命をとりとめた。
全く悪運の強いブタである。
カボチャの山はオレの気弾によって、全体的にムラなく熱が通り、どこを食ってもホックホクに仕上がっていた。
熱湯に、大量の砂糖と塩をぶちこんだものをバケツで振りかけると、香ばしい匂いがあたりに満ちた。
カラスが寄ってくるので、それを気弾で撃ち殺しながら、オレはカボチャを食った。
これが、大変な美味だった。
いつのまにかブタが来ていて隣で貪り食っていた。
美味いか、と聞くとブタは「超うめー」と答えた。
当然だと思った。
何故ならオレは調理の天才だからだ。
「このカボチャ、なんかたまにジャリジャリしねえ?」
ブタが戯言を抜かした。
「それは種だろ?噛み砕けよブタみてえに。見境無く」
「いや、なんか……、それだけじゃなく変な味がしねえか?このまるごとのカボチャだけが変だな、シンナーの匂いもするし、クンクン……」
「シンナーだと?ふふん、そりゃあ祭にはもってこいのブツじゃねえか。この際だから、嗅げるだけ嗅いどけ、オレが許す」
「あ、ちょうちょだ~」
「なっ……!?なんだこれは!何故カボチャの中から石が出てくるんだ!畜生ブルマのヤツ!」ガリボリ
その石は、ブルマが嫌がらせで仕込んだに違いない。帰ってきやがったらあのふざけたコスチューム引き裂いて痙攣起こすまでムチャクチャに犯してやろうと思った。
ふと見ると、傍らでブタが倒れて痙攣していた。
…終…
2014-11-2