五条悟
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『...ちゃんと飯食ってんの?』
「え...うん、食べてるよ」
『じゃあ熱とか?』
「...普通体温、だと思っ...ちょっと何すんの」
〇〇は戸惑いを隠せないと言う顔で、僕を見上げてくる。
僕は彼女の額に手を当てて、自分の額の温度と比べた。〇〇の言うように、特に熱はないらしい。
『うーん、でもなんか今日、変だよね?』
「変?」
『そう、いつもの〇〇じゃない気がする』
おでこから手を離し、僕は〇〇の両肩に手を置く。
するりと肩から腕、肘、手までを撫でながら、首や胸、腰周りを注意深く観察した。
特に怪我もなさそうだけど、違和感は消えない。
腰から手を離し、僕はその場でしゃがみ込んだ。
心配が募って〇〇を見上げながら、再び腰に手をかける。太もも、膝、足先と順に撫でてみる。
「くすぐったい、悟」
『ごめんね、ちょっとだけ我慢して』
部屋着姿で苦笑する彼女に詫びを入れて、僕は足の爪先までしっかり確認した。けれどもやっぱり怪我もない。
首を傾げながら立ち上がると、〇〇は少しほっとしたように息を吐いた。
「本当にどうしたの、悟」
『...なんか僕に隠し事してる?』
「エッ」
連日任務で明け暮れていて、久しぶりに〇〇の部屋に来た僕。
この日をどんなに待ち侘びていたことか。
そんな僕が彼女の些細な変化を、見逃すはずがない。
〇〇は丸くて可愛い瞳を左右に泳がせる。僕から顔を逸らして俯くと、申し訳なさそうに口を開いた。
「実は...その、血が、すごくて」
『....』
僕の違和感は的中した。
不安が現実になって押し寄せ、内心は大荒れだ。
しかし表情には出さず、ポケットからスマホを取り出した。慣れた手つきで伊地知の番号を呼び出して、〇〇を抱き寄せる。
『大丈夫だからね』と優しく伝えながら、伊地知が電話に出るのをまつ。
『はい』
『伊地知、硝子か救急車呼んで』
『緊急ですか』
『〇〇が多量出血で死ぬ、早ーー』
「待って!?」
それまで黙って僕の様子を窺っていた〇〇が、スマホを取り上げて電話を切ってしまった。
僕は慌てて彼女からそれを取り返すと、〇〇の信じられない行動に声を荒げる。
『何で切っちゃうの? 外見に損傷がなちなら内臓系の損傷でしょ!? 急がないと手遅れ...っ』
言葉にしたら現実になりそうで、その先の言葉が出ない。
本当に手遅れになったらどうしようと、僕には珍しく焦りがどんどん膨らんでいく。
そうだ、電話するより自分で連れて行ったほうが早い。
『わかった、〇〇僕に捕まって。絶対安全に迅速に運ぶから』
「ち、ちがうの」
『なにが!? 血がすごいんでしょ! 下手したら...』
「ただの生理です! 落ち着いて!」
叫ぶように〇〇はそう言って、僕を見上げた。
僕が状況が理解できずにいると、彼女は観念したように語りだす。
「悟と久しぶりにあえるし...その、色々準備してたんだけど」
『うん...』
「今日二日目で量が多くて...貧血気味でお腹が痛いの。でも悟も疲れてるから、あんまり気を遣わせたくなくて...黙っててごめんなさい」
しゅん、と項垂れて謝る姿に、俺の心臓が撃ち抜かれる。
まるで怒られた後のチワワのようで、堪らなくなって抱きしめた。
硝子細工に触れるように、〇〇の柔らかい肌に縋り付く。
『病気とかじゃなくてよかった...』
「...心配させてごめんね」
『全然、お腹つらいよね?』
「一応薬は飲んでるから、まだ大丈夫。ありがとう」
『そう...ひとまずベッドで一緒に横になろう。お腹、あたためてあげる』
「うん」
頷く〇〇を抱き上げて、ベッドまで運ぶ。
されるがままに横になった〇〇は、ころりと小さく丸まった。
無防備な彼女の様子に、めちゃくちゃにしたいと感情が渦巻き始める。
『...それはだめだろ、僕』
「?」
『何でもないよ』
僕は自分の頬をベチッと叩くと、そろりとベッドに乗り込んだ。自分の肘を枕にして、背を向け丸まった〇〇を抱き寄せる。
ゆっくりとお腹を撫でてあげると、彼女はんん、と声を上げた。
「やばい...寝ちゃいそう」
『寝れそうなら寝て。ずっと診ててあげるから』
「でも、せっかく悟と一緒にいるのに...目が覚めていなかったら寂しい」
珍しく〇〇が、子供のようにぐずる。
そんな彼女の愛しさに、僕はどうにかなってしまいそうだ。
あらぬ方向に走りだす感情を押し殺し、〇〇に優しく声をかける。
『大丈夫、明日も休みだから。ずっとそばにいるよ』
「ほんと?」
『本当。だから安心して寝な』
すると〇〇は、とろとろと眠りに落ちて行く。
僕は彼女の後頭部に口付け、部屋着からちらりと見えた首筋にも唇を寄せた。
『おやすみ』
その頃。
『五条さん...電話出ないなぁ、怒ってるのかなぁ』
伊地知は何度か電話をかけ直していた。
しかし繋がる気配がなく、また機嫌を損ねてしまったかと不安が募る。
傍でタバコを吹かしていた硝子は、そんな伊地知の肩を叩いた。
『掛け直してこないってことは、放っといていいってことだよ』
『しかし...』
『なんか言われたら"硝子さんに付き合ってました"って言えばいいよ、飲みに行こ』
『硝子さん...』
じぃんと胸があたたまるのを感じ、伊地知は硝子に一生ついていくと心に決めた。
『その代わり、君の奢りね』
『え...』
『ジョーダンだよ』