五条悟
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五条悟の場合 (学生)
『...傑』
『ん?』
『もしもさ、つか、例えば? 傑が俺の恋人だったら、何をもらったら喜ぶ?』
『...え、悟、私に気があるの?』
『ちっげーよ! 例えばの話だろ!』
『はは、ごめんごめん』
青空の下。
任務が終わって、迎えが来るまで待機している時のこと。
珍しく俺が真剣に相談をしたら、傑に茶化された。
俺は苛立ちを覚えつつも、他に頼るところもないのでそれ以上の文句も言えない。ひとまずベンチから立ち上がり、自販機でサイダーとコーヒーを買った。
振り返りベンチに戻ると、傑の隣にダラリと座る。
『やるよ、だから真剣に考えてくれ』
『わかったよ、ありがとう』
俺から缶コーヒーを受け取り、傑は『そうだなぁ』と思案にふけった。それから口を開いて、彼は幾つかの問いを投げ始める。
『誕生日、とかのプレゼント?』
『ちげぇ』
『何かの記念日?』
『いや、なんもない』
『何も無いけど...、何かあげたいと』
『そう。...愛情表現ってヤツ? やりたくて』
『あ、愛情表現?』
傑が驚いた顔で聞き返してくる。
何がおかしいんだろうと思いながら、俺は頷いた。
『恋人って、アレだろ? 高価なモノあげたり、エスコートしたりして愛情表現すんだろ?』
『...ううん、そう言う方法も勿論あるけど...それだけじゃ無いと言うか』
『は? それ以外に方法あんのかよ』
『そうか...、悟は"そう言う環境"で育ったもんなぁ。引き出しが無いのも当たり前か』
傑はそう言うと、少し唸ってから立ち上がった。
コーヒーを一気に飲み干すと、缶をゴミ箱に投げ捨てる。
『少し歩きながら話そう、行きたい店もあるし』
『は? 結局答えはなんなんだよ』
『話してたら分かるよ、ほら立って』
傑に促されるまま立ち上がり、飲みかけのサイダーを呪力で潰した。それをポイっとゴミ箱に投げて、先を行く傑についていく。
『悟はさ、〇〇に何を貰ったら嬉しいの?』
歩道を歩く傑が、唐突に質問してきた。
俺は数秒だけ考えてから、言葉を並べる。
『〇〇なら、何でも』
『じゃあブランドの財布は?』
『〇〇がくれるなら嬉しい』
『じゃあ百均の鼻メガネは?』
『鼻メガネ?』
『そう。〇〇が頑張って選んだ、百均の鼻メガネ。貰っても嬉しい?』
『そりゃあ...〇〇が選んだんだろ? アイツのことだから、面白そうとかって理由で買ってくる気がするな...絶対毎日持ち歩いて、ことあるごとに身に付けると思う。結論クソ嬉しい』
『じゃあ手紙や、手作りのお菓子は?』
『嬉しいに決まってんだろ。つか、さっきから何だよ? 俺からプレゼントしたいんだって』
回りくどい言い方に、俺は不満が溜まる一方だ。
俺がムカついていることに、傑も気づいているだろう。
けれども彼は、素知らぬ顔で質問を続ける。
『じゃあ見知らぬ女性から、ブランドの財布や鼻メガネ、手紙やお菓子を渡されたら?』
『は?』
『だから、見知らぬ女性に〇〇と同じものをプレゼントされたら?』
『受け取らねぇよ。〇〇だから何でも嬉しいだけで、他のとか要らねぇし』
『なんだ、答えが出てるじゃないか』
傑はそう言って微笑んだ。
足を止めた彼と向かい合って、俺は溜まった思いをぶつける。
『意味がわかんねぇよ、結局答えってなんなんだ』
『悟と同じように、〇〇は君からのプレゼントならなんでも喜ぶよ』
『ハァ!?』
『騙されたと思って、ひとまず手紙、書いてみたら?』
傑はそう続けると、手のひらである店を指した。
視線を追って見てみると、△△書店と書かれた看板が掲げられている。
下町の商店と言う印象の建物で、中ではおばちゃんが1人、店番をやっている。
『たまに来るんだけど、便箋の品揃えはピカイチだと思うよ』
『え。お前...手紙とか書くの? このご時世に?』
『メールと手紙じゃ、伝わり方が変わるからね』
『伝わり方?』
『そう。愛情の伝わり方』
傑は得意げに言いながら、店の中に入って行った。店主と顔馴染みのようで、談笑をしている。
俺はモノ珍しく感じながら、店内に足を踏み入れた。
今では珍しい古書や、傑の言うように種類豊富な便箋が並んでいる。
『...あ。』
小さい花の描かれた、薄い水色の封筒に目が留まった。
『〇〇』
『悟! なんか久しぶりだね!』
『あー...おう。ちょっと忙しくて』
『特級術師だもんね、かっこいい』
『まぁな』
『じゃあ私、報告書を出しに行かなきゃだから。また後で連絡するね!』
『あ、いやちょっと待って』
『?』
立ち去ろうとする〇〇の手を掴み、俺は言葉を探す。
任務上がりなのか、彼女の制服は砂で汚れていた。特に怪我はないようで、ホッと安堵する。
『悟?』
『あ...と、その』
俺がずっと黙っていたせいか、〇〇は首をこてんと傾けた。
じっと俺を見つめて、俺の言葉を待っている。
......可愛い。
じゃ、ない俺。しっかりしろ。
俺は首をブンブンと左右に振り、後頭部をかいた。
アレを渡すだけなのに、この土壇場で自信がなくなる。
普通の女はブランドとか宝石とか欲しがるよな?やっぱりコレじゃダメなんじゃ...。
勇気がなくなって、上手い言い訳を探した。
が、急に語彙力が身につく筈もなく。俺は開き直ってポケットから封筒を出した。
薄い水色の、あの封筒だ。
『お前この色、前に好きって言ってたろ? だから、やる』
ん、と勢いに任せて〇〇に差し出す。
彼女は一瞬驚いた顔をして、それから大事そうにソレを受け取った。
徐々に表情が明るくなり、任務後とは思えない満面の笑みを浮かべる。
「手紙、書いてくれたの?」
『おう、まぁ、うん』
「ありがとう! めっちゃくちゃ嬉しい! 今読んでもいい!?」
『阿呆! ハズいから1人になってから読め! 絶対!』
「えぇぇぇ...絶対?」
『ゼェッタイ!』
「分かった! じゃあ部屋に戻ったら読むね!」
〇〇はそう言うと、便箋を丁寧に内ポケットにしまった。
俺を見上げて何度目かの「ありがとう!」を言うと、急に俺に抱きついてくる。
「私ね、悟の目の色が大好き! だから水色も大好きなの! 覚えててくれて本当にありがとう!」
俺は顔に熱が集まるのを感じて、精一杯〇〇から見えないように顔を逸らした。
けれども抱きついてくれたことが嬉しくて、しっかりと両腕は彼女の腰に回す。
『お、れも、俺もすーーーー』
「読んだらお返事書くね! じゃ!」
『えっ、あ、』
〇〇はパッと俺から離れると、踵を返して走り去っていった。
俺は遠くなる彼女の背をみつめながら、ヘナヘナとその場にしゃがみ込む。
『...あんな喜んでくれるなら、もっと早くやれば良かった』
先ほどの笑顔を思い出すと、自然と顔がにやけた。
きゅんきゅんと鳴る胸を押さえつけ、俺は『また書こう』と心の中で決意する。
『はぁ...マジで大好き』
『...傑』
『ん?』
『もしもさ、つか、例えば? 傑が俺の恋人だったら、何をもらったら喜ぶ?』
『...え、悟、私に気があるの?』
『ちっげーよ! 例えばの話だろ!』
『はは、ごめんごめん』
青空の下。
任務が終わって、迎えが来るまで待機している時のこと。
珍しく俺が真剣に相談をしたら、傑に茶化された。
俺は苛立ちを覚えつつも、他に頼るところもないのでそれ以上の文句も言えない。ひとまずベンチから立ち上がり、自販機でサイダーとコーヒーを買った。
振り返りベンチに戻ると、傑の隣にダラリと座る。
『やるよ、だから真剣に考えてくれ』
『わかったよ、ありがとう』
俺から缶コーヒーを受け取り、傑は『そうだなぁ』と思案にふけった。それから口を開いて、彼は幾つかの問いを投げ始める。
『誕生日、とかのプレゼント?』
『ちげぇ』
『何かの記念日?』
『いや、なんもない』
『何も無いけど...、何かあげたいと』
『そう。...愛情表現ってヤツ? やりたくて』
『あ、愛情表現?』
傑が驚いた顔で聞き返してくる。
何がおかしいんだろうと思いながら、俺は頷いた。
『恋人って、アレだろ? 高価なモノあげたり、エスコートしたりして愛情表現すんだろ?』
『...ううん、そう言う方法も勿論あるけど...それだけじゃ無いと言うか』
『は? それ以外に方法あんのかよ』
『そうか...、悟は"そう言う環境"で育ったもんなぁ。引き出しが無いのも当たり前か』
傑はそう言うと、少し唸ってから立ち上がった。
コーヒーを一気に飲み干すと、缶をゴミ箱に投げ捨てる。
『少し歩きながら話そう、行きたい店もあるし』
『は? 結局答えはなんなんだよ』
『話してたら分かるよ、ほら立って』
傑に促されるまま立ち上がり、飲みかけのサイダーを呪力で潰した。それをポイっとゴミ箱に投げて、先を行く傑についていく。
『悟はさ、〇〇に何を貰ったら嬉しいの?』
歩道を歩く傑が、唐突に質問してきた。
俺は数秒だけ考えてから、言葉を並べる。
『〇〇なら、何でも』
『じゃあブランドの財布は?』
『〇〇がくれるなら嬉しい』
『じゃあ百均の鼻メガネは?』
『鼻メガネ?』
『そう。〇〇が頑張って選んだ、百均の鼻メガネ。貰っても嬉しい?』
『そりゃあ...〇〇が選んだんだろ? アイツのことだから、面白そうとかって理由で買ってくる気がするな...絶対毎日持ち歩いて、ことあるごとに身に付けると思う。結論クソ嬉しい』
『じゃあ手紙や、手作りのお菓子は?』
『嬉しいに決まってんだろ。つか、さっきから何だよ? 俺からプレゼントしたいんだって』
回りくどい言い方に、俺は不満が溜まる一方だ。
俺がムカついていることに、傑も気づいているだろう。
けれども彼は、素知らぬ顔で質問を続ける。
『じゃあ見知らぬ女性から、ブランドの財布や鼻メガネ、手紙やお菓子を渡されたら?』
『は?』
『だから、見知らぬ女性に〇〇と同じものをプレゼントされたら?』
『受け取らねぇよ。〇〇だから何でも嬉しいだけで、他のとか要らねぇし』
『なんだ、答えが出てるじゃないか』
傑はそう言って微笑んだ。
足を止めた彼と向かい合って、俺は溜まった思いをぶつける。
『意味がわかんねぇよ、結局答えってなんなんだ』
『悟と同じように、〇〇は君からのプレゼントならなんでも喜ぶよ』
『ハァ!?』
『騙されたと思って、ひとまず手紙、書いてみたら?』
傑はそう続けると、手のひらである店を指した。
視線を追って見てみると、△△書店と書かれた看板が掲げられている。
下町の商店と言う印象の建物で、中ではおばちゃんが1人、店番をやっている。
『たまに来るんだけど、便箋の品揃えはピカイチだと思うよ』
『え。お前...手紙とか書くの? このご時世に?』
『メールと手紙じゃ、伝わり方が変わるからね』
『伝わり方?』
『そう。愛情の伝わり方』
傑は得意げに言いながら、店の中に入って行った。店主と顔馴染みのようで、談笑をしている。
俺はモノ珍しく感じながら、店内に足を踏み入れた。
今では珍しい古書や、傑の言うように種類豊富な便箋が並んでいる。
『...あ。』
小さい花の描かれた、薄い水色の封筒に目が留まった。
『〇〇』
『悟! なんか久しぶりだね!』
『あー...おう。ちょっと忙しくて』
『特級術師だもんね、かっこいい』
『まぁな』
『じゃあ私、報告書を出しに行かなきゃだから。また後で連絡するね!』
『あ、いやちょっと待って』
『?』
立ち去ろうとする〇〇の手を掴み、俺は言葉を探す。
任務上がりなのか、彼女の制服は砂で汚れていた。特に怪我はないようで、ホッと安堵する。
『悟?』
『あ...と、その』
俺がずっと黙っていたせいか、〇〇は首をこてんと傾けた。
じっと俺を見つめて、俺の言葉を待っている。
......可愛い。
じゃ、ない俺。しっかりしろ。
俺は首をブンブンと左右に振り、後頭部をかいた。
アレを渡すだけなのに、この土壇場で自信がなくなる。
普通の女はブランドとか宝石とか欲しがるよな?やっぱりコレじゃダメなんじゃ...。
勇気がなくなって、上手い言い訳を探した。
が、急に語彙力が身につく筈もなく。俺は開き直ってポケットから封筒を出した。
薄い水色の、あの封筒だ。
『お前この色、前に好きって言ってたろ? だから、やる』
ん、と勢いに任せて〇〇に差し出す。
彼女は一瞬驚いた顔をして、それから大事そうにソレを受け取った。
徐々に表情が明るくなり、任務後とは思えない満面の笑みを浮かべる。
「手紙、書いてくれたの?」
『おう、まぁ、うん』
「ありがとう! めっちゃくちゃ嬉しい! 今読んでもいい!?」
『阿呆! ハズいから1人になってから読め! 絶対!』
「えぇぇぇ...絶対?」
『ゼェッタイ!』
「分かった! じゃあ部屋に戻ったら読むね!」
〇〇はそう言うと、便箋を丁寧に内ポケットにしまった。
俺を見上げて何度目かの「ありがとう!」を言うと、急に俺に抱きついてくる。
「私ね、悟の目の色が大好き! だから水色も大好きなの! 覚えててくれて本当にありがとう!」
俺は顔に熱が集まるのを感じて、精一杯〇〇から見えないように顔を逸らした。
けれども抱きついてくれたことが嬉しくて、しっかりと両腕は彼女の腰に回す。
『お、れも、俺もすーーーー』
「読んだらお返事書くね! じゃ!」
『えっ、あ、』
〇〇はパッと俺から離れると、踵を返して走り去っていった。
俺は遠くなる彼女の背をみつめながら、ヘナヘナとその場にしゃがみ込む。
『...あんな喜んでくれるなら、もっと早くやれば良かった』
先ほどの笑顔を思い出すと、自然と顔がにやけた。
きゅんきゅんと鳴る胸を押さえつけ、俺は『また書こう』と心の中で決意する。
『はぁ...マジで大好き』
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