黒尾鉄朗
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「なぜ人は筋トレをするのか」
『急に哲学的ですね? どうしたの』
机に突っ伏したと思った途端、ユウは俺に向かってそう言った。
彼女はふと顔を上げると、俺を指さしてムムムと唸る。
「何で食っても食っても太らないんだ!」
『なに、ユウ太ったの?』
「デリカシー!」
図星を突かれたのか、ユウはムキーッと怒った。
向かい側に座る俺に近づき、ポカポカと頭を殴ってくる。
試験の近いある日の夕方、俺は一つ下のユウの勉強を見にきていた。
...はずなのだが、一向に彼女のペンは進まず。
ずっとお腹周りを気にしているかと思えば、冒頭の発言である。
『...要するに、太ったから筋トレしたいけど、うまく行かないと』
ムッとした顔のまま、ユウは頷いた。
俺は彼女の真横に移動すると、彼氏の特権でぺたぺたと頬や肩、腰回りを一通り触る。
「ちょ、おいヘンタイ!」
『ヘンタイは酷い。俺傷つくよ?』
暴れるユウを片手で押さえつつ、俺は一つの結論に辿り着いた。
『なぁ、ユウ』
「なによ」
『めちゃくちゃ身勝手なこと言っていい?』
「......内容による」
いまだ不機嫌そうな顔をするユウに、俺は笑顔でこう言う。
『俺は今のユウの体型、好き』
「なっ、バッカじゃないの!?」
『お! ツンデレ要素も追加ですかァ? 良いぞもっとやれ!』
面白がって俺がそう揶揄うと、ユウは顔を真っ赤にして俺の腕から逃げていく。
「黒尾くんのばか! 本当に真剣に悩んでるのに!」
ぐす、と鼻を啜る音がして、ユウが俯く。
俺は後ろからそっと抱きしめて、よしよしと彼女の頭を撫でた。
『ごめん、可愛くてつい』
「...反省して」
『してるしてる。けどどんなユウも、俺は本当に大好きだよ』
ユウの耳元にちゅ、とキスをする。
すると彼女はピクリと反応して、わなわなと震え出した。
「またそうやって、私のこと甘やかすんだ...っ」
『イヤなの?』
「...このままプクプク太っちゃったらどうすんのぉ」
ユウが俺を振り返る。
涙目で訴える顔が余りにも可愛くて、俺はまたキスをした。
こんなに可愛い彼女を、甘やかさないヤツがいるだろうか。
『甘やかされたくなかったら、これ以上可愛くなるの辞めて』
俺が真剣に呟くと、ユウは頬を膨らませる。
俺が人差し指をたてて彼女の頬を突くと、ユウはベッと舌を出した。
「絶対に夏までに痩せるもんね! もっと可愛くなるもんね!」
そう言って彼女は、改めて机に向かい始めた。
俺はやれやれと肩をすくめて、ユウの勉強が終わるまで参考書を読むことに決める。
「...あのさ、黒尾くん」
『ん?』
顔を上げることなく、ユウは俺に問いかけた。
「試験もダイエットも頑張るからさ、その、ずっと好きでいてね」
『...』
俺は思わず頭を抱えて項垂れた。
こんなに可愛い生き物に、手を出さずに耐える俺はマジで凄いと自画自賛したい。
クソ可愛いな。どうしようもなく好きなのに、ユウはまだまだ不安なようだ。
「黒尾くん?」
俺が黙ったままだったので、ユウが心配そうに声をかけてくる。
俺は大丈夫と一言だけ言い置いて、破顔した。
『ずっと、ずっと好きでいるから。まずは試験頑張れな』
「うん!」
俺の一言でユウは笑顔になると、再び勉強に戻った。
試験が終わったら絶対ユウを甘やかしまくってやろうと決意して、俺も参考書に視線を戻す。
『...それまで俺の理性が持てば良いけど』
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