第二章
そう告げて、ウルフは手を離す。ルーティはぐしゃぐしゃになってしまった己の髪を整えながら、ウルフを見上げて。
「そうだねっ」
ルーティがにこりと笑うと、ウルフは腕を組みながらぷいと顔を背けてしまい。
――と、エックス邸を囲む塀の向こうの木の葉が怪しく蠢いた。咄嗟にウルフは銃を取り出し、その方向へ発砲する。
パァン!
「ぐっ」
小さな呻き声。誰かが見張っていたのだと悟り、ルーティは「ウルフ!」と呼んで。
察したウルフは、塀の前に立って少し背を丸める。ルーティは助走をつけて、ウルフの背を踏み台にして塀を飛び越える。
ショートカットだ。
「あ、待っ……追いかけてくる!」
予想通り、先ほどの人物は木の上から下りると駆け出して。ルーティは大声でウルフに告げると、後を追いかける。