第一章
「他に何か質問は」
「はいっ」
咄嗟に手を上げたのはルーティである。
フォックスも、まさかルーティから質問云々が聞けるとは思っていなかったのか、驚いたように瞬きを数回繰り返して。
「えっと……ダークシャドウの一人が言ってたんだ。“マスター様”って。あ、ダークシャドウにもリーダーはいたけど、その、裏で糸を引いているのはその人じゃないのかな……って……」
マスター。
その名を口にした瞬間、場の空気が凍りついた。といっても、言葉を失っているのは一部の人間だけだったのだが。
「……フォックス?」
ルーティに名を呼ばれ、フォックスははっと顔を上げた。そして微笑を浮かべると。
「分かったよ、ルーティ。でも、ここじゃ話しづらいから、エックス邸に向かおう」