エピローグ
「僕、マスターとクレイジーを取り込んだタブーって奴を倒したんだ。父さんのボルテッカーで! へへ、凄いでしょ!」
不思議と涙は出なかった。
多分、以前の自分なら泣いていたかもしれない。ウルフの胸を借りていたかもしれない……でも、そうじゃないのは。
きっと。
「生きていたら褒めてくれるかな」
ルーティは小さく笑みを溢すと。
「もしかしたら、“そんな無茶をするな!”って怒るのかな。しかもフォックスと一緒に……ふふ、それはちょっと嫌かも」
そう話しかけるルーティの背中を、ウルフは煙草を吸いながらじっと見つめて。
「――あら、あの子」
すると、現れたのはルーティの母親のルピリア。彼女の手には、水の入ったバケツ。
縁にはタオルが掛けられていて。
「来ていたのね」
大方、墓石を磨きに来たのだろう。ルピリアはウルフの隣に並ぶと、傍らにバケツを置いて額に滲んだ汗を手の甲で拭い。