エピローグ
「……どうも」
その人物とはなんと、クレイジーだった。
迷わずウルフは銃を構え、ルーティは駆け出すと頬目掛けて殴りかかる。――が。
「えっ」
避けられたわけでも、防御されたわけでもなく、クレイジーは素直に殴られていた。
完全に無防備な姿勢であるクレイジーを見て、ルーティは不思議そうに瞬きを数回繰り返しつつ、一旦距離を取る。
「出会い頭に打つんだ。酷いことするね」
やたら棘のある言い方で、クレイジーは拗ねたように殴られた頬を左手で摩りながらぷいと顔を背ける。
どうやら敵意が無いことに気付くと、ルーティとウルフは顔を見合わせ、頷いては共に構えるのをやめて警戒心を解き。
「何しに来たの?」
ルーティが訊ねると、意外にもクレイジーはすんなりと答えた。
「あの時、あんたらがタブーを倒したから、僕と兄さんは放り出されて助かったんだ。だから、その……借りを返しに来た」